第6話 操作
「では、自分で自分の体に魔力を流してみるのじゃ」
ドールの説明によれば、体に魔力を流す訓練を積むことで、魔力の扱いが上手くなるそうだ。これが出来るかできないかで、魔法の発動の滑らかさが段違いらしい。
現代で言うと、バスケのドリブルトレーニングのようなものらしい。
うん、どんな効果があるのかはわかった。
めちゃくちゃ分かった。
けど、どうやって体に魔力を流せばいいんだ?
僕の困った視線に気がついたのだろう、ドールはニヤニヤと笑った。
「いやー説明なしにやるのは流石に無理か。ではやり方を少し説明するぞ」
この爺さん、俺が赤子だからって揶揄いすぎだろ。無茶振りがすぎる。
こんな教え方、前世で教師なら首にされてるぞ。
「まずは目を閉じる。そして、心臓から魔力を放出する。それを体の線に沿ってその魔力を流す」
ふむ。どうやって魔力を放出するんだ?
「ここで難しいのは魔力を放出することだな。この感覚が言語化することが難しい。強いて言うなら、心の臓から糸を出して、それを全身に纏わせるような感覚じゃ」
なるほど、全然わからん。
「とは言っても、これは一朝一夕で出来るようになるものではない。何度も感覚を覚えさせて、それで出来るようになるものじゃ」
そうなのか。
じゃあ、一旦やってみよう。
ドールからの説明を一通り聞いた俺は、試してみることにした。
「まあやってみて無理じゃったら言ってごらん。しばらくの間は、魔力を流して感覚を身につけさせてあげるから」
俺は黙って目を閉じた。
自分の心臓に集中する。
お、こうか?
心臓から光が出るような気がする。
く、苦しい。全然光が広げられない。
「なんか苦しいです。上手く光が広げられなくて、広げようとすると全身から抵抗されるような感覚があります」
僕は地面を見つめてドールに対してポツリと語った。
どうやら俺は才能がないらしい。
ドールが目をかっぴらいた。
「いや、お主。まさか魔力を体に広げる感覚を掴んでいるのか?」
「え、全然できていませんけど?」
「いや、最初はそもそも魔術回路が体にできていないし、魔術を扱う筋力もないから、何もできないのが普通じゃ。そもそも、魔力を出そうとしても、できないはずなのに」
ドールはそう告げて、こちらをじっと見つめてきた。
「本当に才能があるかもしれん」
むふっ。
嘘でも褒めらると嬉しい。
「いいか、まずはその感覚を大事にするのじゃ。それがまずは最初じゃ。そしてそこから頑張って魔力を体に這わせる。これは、やっていけば必ず出来る。最初は難しいが。満足に体に魔力を循環することが出来るようになれば、必ず魔力を上手に扱えるようになる」
「なる、ほど」
「あとは努力じゃな。わしも若い頃同じトレーニングをずっとしていた。魔力量も増えたし、魔術の精度や発動速度が上がった」
なるほど、このトレーニングに、そんな可能性があるのか。
途端にやる気がみなぎってきた。
「来年もこの村に来よう。その時に魔力循環ができるようになっていたら、師匠を探してあげよう」
「ええ、師匠を。ありがとうございます」
僕は思わず両手を上げて、飛び上がった。
「ドール様、お気遣いありがとうございます。大変申し訳ないのですが、我が家には家庭教師を雇えるだけの蓄えはなく、ご紹介いただいた方を雇わせていただくのは難しいかと」
レインは少しだけ小さな声で、つぶやくように話した。
「大丈夫じゃ。もしこの子が本当に来年、魔力循環をできるようになっていたら、わしが家庭教師のお金を代わりに払ってやろう。魔術師として就職できた時に返すので大丈夫じゃ」
「そんな、ありがたいのですが、本当に良いのでしょうか?」
「うむ。魔術師に二言はない」
かっこいい。なんだこのおじいちゃん。最高。
「ここまで才能がある子を埋もれさせるのはワシとしても不本意なのでな」
絶対に、来年までに魔力循環できるようになってやる。
僕はそう決意した。




