第7話 目標
僕の名前はアレン。
まだ二歳にして、当面の目標が決まった、将来設計バッチリな子供である。
当面の目標は、魔力循環をできるようにすること。
なぜなら次にドール様に会うまでに、魔力循環ができるようになれば、ドール様にお師匠様をつけてもらえるのだ。
そうすれば魔法を本格的に学ぶことができる。
ドールの話ぶりからすると、魔術師っていうのは、かなり儲かるらしい。
魔術師って素晴らしい。
くくく、僕の異世界エリート街道はここから始まるんだ。
「ねえ、遊ぼ」
そんな風に未来についてあれこれ妄想していると、うるさいガキが俺に話しかけてきた。
このガキ、リリアという名前の村長の娘である。
俺と同い年の彼女。つまりまだ赤子である。
そんなリリアは、金髪でくりっとした目で、僕のことを見つめてきた。
なぜ僕がリリアといるのかというと、ドール歓迎の宴会のため、村長宅に行ったところ、子供は一緒に遊んでいなさいと、一緒にされたのだ。
ちなみに、村長はただの平民じゃなく貴族である。レインが教えてくれた。
貴族。かっこいい響きだ。
しかし貴族といっても、家の様子を見る限り、暮らしは俺たちとあまり変わらないようである。
「ねえ、ねえ」
リリアが話しかけてくる。
「うるさい、遊ぶ暇ない」
手のひらでしっしと追い払う仕草をする。
僕には一刻も早く修行が必要なのだ。しょんべん臭いガキに構っている暇はない。
「うえええええええええんん。なんでええええええええええ。」
大声で泣き出す。なんだこの生物。意味わからん。
「うええええん」
泣き止まない。どうしよう。
あたふたしていると、大人たちがこちらを振り向く。
「こらっ。アレン、リリア様を泣かせたらダメじゃないか」
レインが俺を叱りつける。
なぜ俺が怒られるのだ。解せぬ。
「リリア様、すみません。どうか泣き止んでください。このアレンに、おままごとさせますので」
「おままごと、できる?」
リリア様は涙の勢いを弱め、こちらを横目で見てきた。
可愛い。思わずほっこりする
いや、違う。僕にはトレーニングの時間が必要なんだ。
遊んでいる暇など一ミリもない。父がなんと言おうとな!
答えはもちろんこうだ。
「できる。リリア様。一緒に遊ぼ」
向こうでマダム達の中で般若の形相をしている母親を見つけてしまったら、答えは一つだ。
背中に汗をかいている俺を見ながら、鼻を啜りつつリリアは答えた。
「遊びたいなら、遊んであげるけど」
このガキいいいいい。
下手に出ればいい気になりやがって。
俺は表情がピキピキと音を出しそうなのを必死に堪える。
「ア〜レ〜ン?遊びたいわよね。ならしっかりそう言いなさい」
セレナがニコニコしながら僕に宣告する。
前世で受けた圧迫面接を思い出す。
くっ。
「リリア様、僕、一緒に遊びたいな」
「本当に?」
「...」
「ア〜レ〜ン?」
「うん、ほんと!リリア様、可愛いし!一緒に遊ぼ!」
すると、目の前の女の子は涙を止めてニンマリして、自慢げにこちらを見た。
「ふーん、可愛いんだ。じゃあ、遊んで、あげる」
こうして僕の修行は後回しになり、リリアと一緒におままごとすることになった。
東大卒エリートの俺だが、おままごとは意外と楽しかった。




