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猫伝染性腹膜炎【FIP】を発症したうちの猫のこと  作者: なちも


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異変 その5…快眠

無断転載・AI学習禁止

 最近、夜中に目を覚さないし、朝も1人で目が覚める。

 いつもなら、たまに夜に寝に来ない時でも、朝には隣で寝ているのに。

 腕や足が痺れて痛くて…ということもない…。


(まあ、そのうち気が向いたら寝に来るかな)(明日も仕事で早いし、私はもう寝なきゃ…)


 そう思いながら昨夜は寝たが、思い起こせば、その前も、その前の夜もそうだったかもしれない。

 

 そういえば、寝入り端に限ってバタバタと走りだすのがいつものことだったが、ここのところ、「もういっしょに寝ようよ〜…」とネコに泣きを入れただろうか…。


 食欲も戻らない。

 そういえば、あれからどれほど経っただろうか―――。考えて、ゾッとした。


 おかしい。これは、おかしいことが起こっているのではないだろうか。

 もしかすると、この猫はこのまま死んでしまうのではないだろうか。そんな考えがヒソリと囁いてきて、心臓が灰色に冷えていくような感覚がした。

 

『血液検査の結果が出ました』

 そう電話がきて、ドキドキしながら動物病院を訪れたばかりだった。

 絶対に良くない結果が出ているに違いないという心づもりで尋ねたが、結果は、「白血病・猫エイズ共に陰性」。

 少し脱水気味ではあるが、癌などはなく大きな問題はなさそうだと言われ、取り越し苦労だったかと胸を撫で下ろしたばかりだった。


(やっぱり便秘で食べれないの?)

 なんとなく、なんだかお腹が苦しそうだという感じがして、腹を撫でる。

 が、医師曰く、やっぱり腹は張っていない(らしい)。

 毛艶も悪くないという気がするし、食べていないのに、痩せた気もしない。

 心配しすぎているだろうか。

 だけど、最近、ネコの喉が鳴るのを聞いてもいない。いつもは、うるさいほど喉を鳴らしているのに。

 ニャーニャーうるさくて近所迷惑じゃないか心配していたのに、最近鳴き声の心配もしていない。

 玩具を揺らしても飛びついてこなくなったのは、いつからだっただろう。


(気温のせい、季節のせいって思ってたけど…)


 ……―――このままじゃ、私が仕事に行っている間に死んでしまうんじゃないだろうか…。


「食事をウェットフードに変えたら少しだけ食べるのですが、やっぱりうんちも出ないし、どうも様子がおかしい気がして…」

 いても経ってもいられず、仕事の合間に病院に泣きの電話をかけた。

 まだ、前に行ってから2、3日しか経っていないが、「心配なら連れてきてもらって…」とのこと。

 診療終了間際なら、ギリギリ間に合う。迷わず予約を入れた。

 電話を切って、ふと自分の手がすがるようにスマホを握っていたと気づいた。


「病気の子供の薬もらいに来たお母さんいるじゃないですか。…私、苦手なんですよねー。縋るような目されるから」


 昔、薄笑いに苦い表情を浮かべてそう言った、年若い同僚の言葉がふと脳裏をよぎった。


 きっと私は今、その彼女が苦手な目をしてネコを病院に連れて行ってるんだろうな。

 自嘲する余裕もない。

 ただ、自分がひどくちっぽけになった気がして、怖くなった。

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