異変 その3…食欲不振の進行
半分くらいしか食べていないな。
過ごしにくい日が続いているな。
そう思っていたころ、ふと気づくと、いつの間にか毎日半分くらい――あるいは半分以上、カリカリをゴミ箱に捨てていることに気付いた。
味が合わなかっただろうか?
ほんの数週間前に味を変えたのを思い出す。
最初の数回はそれなりに食べているようだったのですっかり安心していたのだが…。
そういえば、最近うんちの出も悪い。
(やっぱりウェットフードか)
一時期、ウェットフードにしていたが、食欲が戻ってきたので、またカリカリに戻していた。
でも、ドライフードも高かったのにな…。夏本番になって、ウェットフードがなくなると困る。
なんだかネコがわがままを言っているような気がしてイラッとしたが、数日放っておいたがやはり食べてくれないのだから、戻すより他仕方がない。
ウェットフードとカリカリを半分ずつにして与えてみると、また少し食欲が戻ったとみえて、モソモソと食べ始めた。
夜、仕事から戻ってくると、8割方食べたようだった。
まったく…仕方のない猫だ。
「わがままな猫め」
ムッとしてネコを見ると、丸い目と目が合う。
うちの猫の目は不思議な色をしている。普通にしているときにはわからないのだが、光の差し込み具合で水晶体がなんとも言えない宝石のような輝きをみせるのだ。
電気に照らされて玉虫色に輝く猫目を見ると苛立ちがすっと萎む。
猫と暮らすのはネコが初めてだ。
猫はみんなこんな色の目をしているのだろうか?それとも、この猫の個性だろうか?
「ネコの目はエメラルドグリーンみたいな色で綺麗だね」
ネコの喉を撫でた。
ガーグルガーグルとネコの喉が鳴る。
目を細める猫の顔は心なしか痩せたようだ。
(でも、毛艶は悪くないんだよね…)
体調が悪いと毛がパサつくという。
夏毛に生え変わってきているせいか少し毛が硬い気はするが、パサついている感じはしない――気がする。
もうちょっと様子を見ようかな…。
(お金もないし…)
なんだか後ろめたいような気持ちになりながら、ネコを見る。
「なんだか肉球にも元気がないねぇ…。ごはん食べようよ。心配になるじゃん…」
ネコがそっと目を閉じる。
「早く気温が落ち着いてくるといいけどねぇ…」
弾力がなくフニャ…とした肉球をそっと撫でると、ネコの指がゆっくりパーに開く。
「大丈夫?」
あぐらの上で目を閉じているネコの横顔に思わず尋ねると、ネコがうるさそうに薄目を開けた。
やっぱり病院に行くべき?でも――
踏ん切りがつかない。
胸の奥がザワザワとしていた。




