File 2-8
終はフレジャラビのホテルの現場に、チンチラビのホテルで知り合った吟遊詩人のセーヌ、狩人のザシュル、それにチンチラビ警察のアルゴ、そして現場に元からいたリースを集めた。もちろんその場には調査にやってきたフレジャラビ警察の面々も集まっていた。
「さてさて皆々様。お集まりいただきありがとう。今日集まってもらったのは他でもない。今から私は、昨日と今日で立て続けに起こった二つの事件の真相を解き明かそうと思う。どうか最後まで付き合ってくれると嬉しい。それでは・・・スキル探偵。発動」
終の掛け声とともに、終を中心としてうすら暗い色を持ったなんらかの空間が広がっていき体を通過したのを感じた。それは以前感じたことのある感覚で不思議と安心して身を預けれた。
「では今より私の愚考をお披露目いたします。まずは先ほどこの現場で見つかった情報から開示することとしましょう。リムくん。説明頼むよ。先に行っておくがリムは一級魔道士の資格を得ている。彼の鑑定は公式資料として認められることとなる」
終の掛け声でポンと髪から出てきたリムは、終の要求に応じ喋り始めた。
「あいよ、姉御。では説明いたしますぜ。皆様方。この現場からはうっすらと魔法反応が感知された。反応は新しくはなかったからおそらく昨日かもう少し前のものだと考えられる。そしてその魔法系統は黄色。そしてその魔法は・・・掃除。つーか洗浄魔法だな。それも魔法道具を用いた」
「掃除?」
「ああ。掃除だ。道連れさんよ。昨日この現場では、掃除が行われたんだ」
僕はリムが何を言いたいのかさっぱりわからなかった。
「掃除だったら普通にホテルの管理人さんがしたんじゃないの?」
僕は素直に自分の意見を口にしたが、それは的外れだったようで。
「まぁ聞けや。道連れさんよ。ホテルの管理人にしては変な掃除の仕方なんだよ。一部分だけが念入りに掃除されてる。それに間抜けなことに、その魔法反応はとある場所へと続いている。魔法道具による掃除、魔法箒の掃除は魔力が洗剤みたいな役割をするんだ。そしてそれは使い方をしっかりと学んでいない者が使えば、液漏れの原因になる」
「はぁ、液漏れ?」
僕はまだ何を言いたいのか掴めない。
「そうだ。液漏れだ。つまりここを念入りに掃除した奴はある場所に向かう途中、洗剤をポトポトと落としていったんだよ」
「そのある場所っていうのは・・・?」
僕たちは揃って息を飲んでリムの言葉を伺った。
「あそこ。」
リムが尻尾で指したのは、道にポツンと佇んでいるマンホールだった。
「へ?」
「要領を得ないようだね。私が説明しよう。ふふ」
終は嬉しそうにそういった。その笑顔はおもちゃを自慢したい子供のようだった。
「全てを説明するにはまだ証拠が足りない。今から証拠を一つ。見つけに行くこととしようか」
終はそう言うとホテルの裏口へと向かった。あっけにとられた僕らが動けないでいると。
「何をしているんだ〜!みんな!早く来たまえよ!!」
元気にそう言うと、終は裏口からホテルに入り、またつかつかと歩き出した。行き先は二階。向かったのは僕らが止まっていた部屋・・・でもなく。フーコが止まっていた部屋・・・でもなく。リースが泊まっていた部屋だった。
「ここに一体何が・・・!?」
僕は期待を込めて終に続いて部屋に入った・・・が、そこにはなんてことない普通の部屋があるだけだった。
「何もありませんけど?」
僕も他のみんなも、リムさえも終の考えを読めていなかった。だが終だけは真相に向かってただただ邁進していた。
「確かに何もないように見える・・・な。だが、ここはこのホテルの裏口の真上に位置している。ここの壁をこうしたらどうだろうな!」
そう言うと終はリースの泊まっていた部屋の壁を思いっきり蹴った。
「なんてことを!」
僕は思わずホテルの側になってその行為を咎めたが、すぐにその行動が無意味だったことを知ることになった。
終が蹴った壁はいともたやすく破壊され、向こう側には見たことのない機械のようなものが置かれていた。
「へ?何だ?これ」
僕は思わず近づいてよくみてみると、何やら外側に青白い石がはめられていて、機械自体は6穴のカラーボックスぐらいの大きさだった。
「これは何だね?説明してくれないか?リースくん?」
終はその場を行ったり来たりして動きながらリースにそう尋ねた。
「知らない!俺はなにも知らないぞ!こんな機械!初めて見た!」
リースは取り乱してそう言った。
「ふむ。白を切るのもいいだろう。二つの事件、まとめて解き明かすだけだ。凶器についての謎も、死体が消えた謎も、とある事象について説明するだけで片がつく」
終は得意げに、また獲物をじわじわと追い詰めて行くかのようにリースの顔を直視した。
「な、何ですか?そ、その事象っていうのは。僕は今回の事件には関係ない!」
リースはあくまで自分は関係ないという主張を変えないようだった。
「今回の事件には、か。確かにそうだろうよ。なぜならこの二つの事件には二人の犯人がいるのだから」
それは当たり前のことのようで、僕たちが見逃してしまいそうになっていたことだった。二つの事件には二人の犯人。僕たちはすっかり、似た手口だから同じ犯人だというふうに考えてしまっていたフシがあった。
「この事件をややこしくしているのは、この機械だ。リムくん。これが何だか説明してあげなさい」
終に命じられリムは渋々と行った感じで尻尾でその機械に触れた。すると優しい光がその機械を包み込んだ。
「・・・こりゃあ・・・姉御。転移魔法装置だ」
「転移魔法!?」
僕は驚いて声をあげた。確かセーヌさんの話では転移魔法はとても魔力がいるもので、高位の魔道士でさえ少ししか移動できないと聞いていたのだが。
「驚くのも無理はないね。まぁ今私も初めてみるのだが。この青白い石。これは魔石だ。長年蓄積された魔力がこの石には詰まっている。この装置はこの石の力を吸い上げて転移魔法を発動させていたんだよ」
終はそう言いながらその転移魔法装置を指差すと、すぐに再び言葉を発した。
「それではリム!その装置を発動させてくれ!」
「あいよ。姉御!」
リムが魔石に触れると魔石から光が溢れ出し、床に魔法陣が描かれた。
「これでこの装置は発動したようだね。では、確かめに行くとしよう。あ。フレジャラビ警察の皆さんは正門から出てこの機械の押収に備えてください」
終はそう言うとリース以外のフレジャラビ警官を残し、僕たちを連れて裏口から再び外へと出た。
しかしそこは、なんてことはないただのホテルの裏だった。
「さぁリム。また頼むよ」
終の依頼で再び魔法感知を行うリム。
「姉御・・・ここでは新しめの魔法反応が出たぞ魔法はついさっき使われたみたいだ・・・それもさっきと同じ反応だ!そしてその反応は・・・あのマンホールに続いてやがる!!」
リムのその言葉を聞いて終の気味の悪い笑顔は加速した。
「そうかそうか。それでは、そろそろ答え合わせと行こうか。2回にわたる殺人事件。一体何が起こったのか。なぜ死体は消えたのか。なぜ凶器は見つからないのか。隅から隅までお話ししましょう。そしてその推理、私の愚考が明かされた時、犯人たちは拘束されることとなります。リム。犯人たちが拘束されたらすぐに犯人を守るように結界をはれ。わかったな」
「あいよ。姉御」
最後の言葉の意味はわからなかったが、終はとうとう事件を解き明かす気らしい。それも隅から隅まで。なぜならそれがスキルが成功する条件だから。
終の答え合わせが始まった。




