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異世界探偵『上終終』の愚考録  作者: あまた せい
File 2「偽りの弾丸」

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File 2-7

 僕の甘い希望は、一瞬にして打ち砕かれることになる。それは前の人生で十分に理解していたはずだった。


 でも、人は何回同じことを繰り返そうが学習しないこともある。僕のはまさにその例で、僕自身の性質というものをもっと理解しなくてはならない。


 そう、僕は巻き込まれ。道連れというスキルを生まれ持ってしまったのだ。それはきっと一度死ぬ前からの話で、僕はそれが性質だなんて思っていなかった。不幸な偶然が続くだけだと、本気でそう思い込もうとしていたのだ。


 朝方、僕はパァン!という昨日と同じ物騒な音を聞いて目が覚めた。終の方も同じタイミングで目を覚ましたらしい。


「くそ!また防げなかったのか!」


 僕は思わず自分の非力さを嘆いたが、終に尻を叩かれる。


「そんなことを言っている暇はないぞ!行くぞ道連れ!!」


 終に続いて急いで準備をして再び音の聞こえた下の階へ向かうため、昨日と同じく二階に止まった僕らは階段を駆け下りた。音がしたのは裏口方面からだった。昨日と同じくホテルの裏口へと向かい勝手に裏口を開けた。


 するとそこには、昨日と同じ光景が広がっていた。いや、倒れている人物が異なっていた。そこにはフーコが仰向けで倒れていた。そして胸からはおびただしいほどの量の血。おそらく昨日と同じく弾丸で撃ち抜かれたものと思われた。


「これは・・・ひどいな」


 そう言う終の顔は隠しているが少しにやけている。僕はさすがに怒りを覚えたが、そんなことにいちいち目くじらを立てている場合でないことも理解できた。


「そんな・・・フーコさん・・・?」


 後ろから追いついてきたリースはフーコの遺体に駆け寄ると、抱きかかえようとした。


「触るな!」


 終の静止がなければ。その静止によってリースは今の状況を冷静に見ることができたらしい。


「そうですよね・・・確かにそうだ・・・。警察を呼ばなくちゃ・・・」


「それなら心配はない。私が電話を持ってきているからな。私がフレジャラビ警察に連絡しよう」 


 昨日の失敗を踏まえてか、終はこの場に電話を持ってきていたようだった。


「そ、それなら良かったです。お願いします」


 リースは青ざめた顔で返事をした。よっぽどフーコの死がショッキングだったのだろう。


 その時。物騒なパァン!という破裂音がホテルの中から響いてきた。


「何だ!?」


 僕は思わず大声を出してしまった。もしや第三の殺人が起こったのかと心配になったのだ。終とリースもその音に反応し、いち早く3人はホテルの内部へと戻っていった。


 しかし、そもそもホテルの内部には僕ら以外人がいなかった。どうやら終がホテルを貸切状態にしていたらしい。ホテルの管理人はじきに出勤してくるらしかったので、本当にホテルには人っ子一人いなかった。


「あれ?さっきの音は結局なんだったんですかね?終さん?」


「さぁねぇ」


 なんだか気の抜けた返事をした終に対し、汗をかいて音のなったところを探そうとするリース。なんでこんなに気をぬいていられるのだろう。もしかしたらまた死体が消えるかもしれないのに。とそこまで考えて僕らの行動がどれだけ迂闊だったのかを思い知った。


「まずい!!現場に戻りましょう!!」


「そうだね・・・」とやる気のない終と「へ??はい!!」と事情がわからないものの元気よく返事をしたリース。とても対照的だった。


 急いで現場に戻った僕らは、そこで二度目の驚愕にさらされることになった。


 

 そう。死体が、消えたのである。



 僕とリースはとても焦っていたが、終はなんだか落ち着いていた。いや、落ち着いていたと言うよりかは、ニヤついていた。そして彼女は笑った。あのけたたましい笑い声で。


「ははははははははははは!!!やはりか!!!」


「やはりって終さん!消えることに気づいていたんですか!?」


「いや、もしやと思っただけだよ。道連れ。いやぁ、それにしても道連れのスキルは、本物だ!!やはり私は幸運だ!!!」


 終と僕の会話の意味がわからずぽかんと口を開けているリースをほったらかして終は言葉を続けた。


「それではリム!!出てきておいで!!」


 意味がわからないのは僕も同じ。僕とリースはあっけにとられたまま、終はリムを呼んだ。


「呼びましたかい。姉御」


「ああ!リム!出番だよ!さぁ!魔法感知を頼む!!」


「了解。姉御。アナリシス。魔法感知」


 リムが尻尾をふると不思議な光があたりを包み込み、そしてその光はしばらくするとリムに収束していった。


「・・・解析完了。これは・・・!姉御!」


 リムは終の耳元にプカプカと移動していくと小声で何かを告げた。


「なんと!・・・なるほど?なるほど?これで事件の全体像が見えてきたぞ・・・」


 勝手に何かをわかっている終。僕にも説明してもらいたいものだが。


「へ・・・上終さん?何かわかったのですか?」


 リースは不安そうに終にそう聞いた。


「いや、ちょっとね。ふふ」


 終の表情は、完全に捕食者のそれだった。何も知らない人にこの人が犯人だよといったら信じてしまいそうなぐらいだった。その人形みたいに白い肌と青い目がかえって不気味さを強調していた。


 それから僕たちはフレジャラビ警察が現場に来るのを待った。フーコの死体も何もなくなった現場で。


 しかしなんだかここの床、少し違和感を感じる。何かがおかしいような・・・そんな気がした。 


 しばらくしてフレジャラビ警察は現場に到着し、リースが状況を説明したが。チンチラビ警察と同じく対応は冷たいものだった。なんせフレジャラビ警察の警官自体が殺され、その死体がなくなったなどと言われたら、本当かと思ってしまうのは仕方ないことではあるのかもしれない。


「さて。解決編だ」


 終は急に一言、そう言った。


「え?」


 僕が聞き直すと、自信満々な顔で彼女は再び言い直した。


「だから解決編だと言ったんだ。道連れ。私の愚考、お披露目と行こうじゃないか」


 白いローブと白い長髪をはためかせながらそう言うと、彼女は笑った。


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