第13話
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お茶を飲み終え、本題に戻る。
「では、再開しましょうか」
「はい」
ミレーヌは次の話を待ち構える。
が、再開しようと言って立ち上がったヴォルスが、チョークを手に取ったところで動きを止めた。ミレーヌの方を見て、何やら考えているそぶり。
「何でしょうか?」
「ああ、いえ、何でもありません。ところで、再開の前に、一つ、ミレーヌ殿にお願いしたいことがあるのですが」
「はい」
お願いとは何だろうか。条件の修正か、あるいは交渉役の追加か変更か……とミレーヌが身構えていると。
「私のことは、ヴォルスとお呼びください」
「え?」
我ながら間抜けな声しか出てこない。
「私の方からミレーヌ殿とお呼びさせていただいてますので、私のことも、名前でお呼びいただきますよう、お願いいたします」
「あ……はい。承知致しました、か……ヴォルス様」
「ありがとうございます。では、改めまして。ギルドからの預かり金の処理の続きでしたね。現在の残りが七百二十万ゴルド。これをどう相殺するかですが、次の手は、平たく言いますと、
“お金以外のものと引き換えに、預り金をまけてもらう”
です」
黒板に向き直り、「上納金」の下に、「便宜供与」と書く。
国 |ギルド
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預り金 900|預け金 900
上納金 -180|上納金 -180
便宜供与 |便宜供与
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1 活動の性質
2 独立性
3 公的機能
「国がギルドに対して便宜を図り、その対価に相当する額を預かり金から支払ったことにする。これが相殺の第二手となります。具体的には、国専用の施設の冒険者に対する開放、未使用状態になっている施設や土地の譲渡、特定業務の独占的な斡旋権付与、王領における活動権の拡大、などが挙げられます」
内容は分かった。が、それでどのくらいの金額になるものだろうか。とミレーヌが考えていると。
「とは言え、率直に言って、この程度ではまだまだ足りません」
ヴォルスの方から補足が入る。
「これらの便宜、例えば未使用施設の譲渡や王領の活動権などには、適切な相場感といったものが存在しないことがあります。その場合、極端に言えば国とギルドが合意しさえすればいくらでも高い金額を設定することができます。が、それを加味しても、総額で百万ゴルド、十年割として年間十万ゴルドくらいがいいところでしょう。もちろん、無いよりはいいですが、残りの金額を考えますと、上乗せできるのなら、限界まで上乗せしたいというのが本音です」
言いつつ、二つの「便宜供与」の横に「-100」と記入。
国 |ギルド
------|------
預り金 900|預け金 900
上納金 -180|上納金 -180
便宜供与-100|便宜供与-100
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1活動の性質
2独立性
3公的機能
そこまで聞いたところで、ミレーヌの頭にとある場所が浮かんだ。
「ヴォルス様」
「はい」
「魔王城は今、どのような扱いになっているのでしょうか」
魔王城は、魔王の登場と時を同じくして、国の北方の荒地に突如現れた、人工のものとも自然の造形ともつかない巨大な建築物である。
「ほう」
ヴォルスの目が細められる。
「現在、魔王城は、形としては王領の一部ということになっています。残存する魔物がいるため、軍の一部を除いて立ち入りは禁止されていますが」
「魔王と戦った時に少し見ただけなのですが、魔王城の中には、見たこともない宝石や鉱石が沢山あった気がします」
道中で少し紫水晶にも似た、珍しい色の立派な宝石を見つけて、ガルドが持って帰りたそうにしていたのを覚えている。行きと帰りで経路が違っていて、体力も気力もほとんど尽きていた状態で、魔物の残党と戦いながら戻ってきたので、とても取りに行く余裕は無かったが。
「ありますね。まだ調査を始めたばかりですが、こちらでもそのような報告が上がってきています」
「先ほど、便宜の供与として王領における活動権のお話がありましたが、たとえば、魔王城の宝石や鉱石の採掘権を冒険者ギルドに与えるというのも、便宜のうちに入るのでないでしょうか」
「入ります。実はその件につきましては、まさに冒険者ギルドに採掘と収集を委託しようとしていたところです」
「そうなんですか」
あっさりとヴォルスが応じる。
自分が思いつく程度のことは、既に考え尽くしている、ということだろう。
「とは言え、宝石や鉱石だけではそこまで大きな金額にはなりません。宝石の方は嗜好品なので、状況次第で驚くほどの値がついたりもしますが、国の財政でそれを当てにするわけにもいきませんし」
「なるほど」
これもまあ「無いよりはマシ」ということか。
と思ったところで、ヴォルスが言った。
「ただ、実は魔王城にはもう一つ、非常に高く売れるものがあります」
「え?」
「魔王城そのものです」




