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総合非格闘技AMMA~マウスウォッシュ・ファイトクラブ!~  作者: スギセン


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4/6

準々決勝4回戦 聞くは一時の恥、出すは一生の恥

準々決勝の最終試合となる、四回戦――。

 この試合を持って、準決勝進出者四名が出揃う。

 駒を進めるのは、果たしてどちらか――。


「はぁいどーもー!PON助☆でっす! えぇー今日はですね、なんと……なんとっ……!! AMMAの対戦生中継をお送りしたいとぉ~……思いまーーーす! よいしょっ!!」


 討議場に響いたのは、耳障りな声――。

 スマホ片手に場内をぐるりと周るのは、自称一流動画配信者にして登録者三十五人(その内十人は本人の別アカ)の底辺マイチューバ―のPON助☆だ。


 頭の真ん中から金色と赤色に分かれた髪や自己紹介時に見せる変顔など、彼が底辺たる所以が随所に垣間見え、見ているだけで不快感を覚える。


「はぁい、こんちはで~す。 えっとねー今日は、なんかAMMA……?の戦いをお送りしたいと思いま~す」


 一方、バッチリメイクを決め込んだ色白細身の女性が、自撮り棒のスマホに向かって挨拶をする。

 フォロワー数七千のインフルエンサー、輝欄欄きららだ。

 彼女の生中継には、既に五万を超える投げ銭が飛び交っている。


『さぁ、始まりました準々決勝四回戦ッ!! まさかまさかの、配信者同士の対決だぁッ! 観客の皆さま、できることならその熱い視線はスマホではなく、実物の二人に向けて欲しい所ッ!!』


 目の前に実物がいるというのに、観客たちはスマホの生配信画面に夢中――。

 ここに、配信者同士の異色の対決が始まった。


「それでは早速やっていこうと思うんだけど……やっぱりみんな、女の子が悪口言われて泣くとこみたんじゃないのぉ~!?」

  

 先手は、PON助☆のゲスい煽りだ。

 コメントは荒れに荒れ、同接数はグングン伸びていく――その数、三万。


 これほどまでに注目を浴びるのはPON助の人生において初のことであり、間違いなく彼の人生のピークであった。

 だが、対戦相手も負けてはいない。


「えぇ~ん、どうしよう、私泣かされちゃうみたいで~す。 フォロワっさん、助けてぇ~」


 一方の輝欄欄、()()()()()()()()()()()――自身の武器を理解し、惜しげもなく使う姿はまさに女の鑑だ。

 彼女の生配信は猛烈な追い上げを見せ、彼女の同接数は五万人に達した。


 お互いの同接数は何者かによって常にコメント欄に書き込まれ、双方が相手の数を確認できる状況となっている。

 暇な人間というのはいるものだ。


 しかしそれが――それこそが、今回の戦いのカギ。

 配信者二人の戦いは、いかにして同接数を得るかが争点となった。


「ぐっ……おいおい、視聴者さん、だ~まされちゃだめだよ? よく見てよアレ、どっからどう見たって整形だろ? みんなは、作り物を称賛するような薄っぺらい人間じゃないよね?」


 PON助☆、同接数――五万。

 確かに彼女は整った顔をしている。

 鼻筋はスラリと通り、その細い顎に触れようものなら、うっかり手に刺さりかねない。


 事実、彼女は整形している。

 輝欄欄の配信内でも度々話題に上がっていたが、彼女は一貫して黙秘を貫いていた。


「……そりゃあ、整形ぐらいしてますよ? 今の時代、コンプレックスの解消とか、もっと綺麗になりたいとか……普通のことじゃないですかぁ? どうせ見てもらうなら、可愛い私のほうがいいですよねっ?」


 唐突な、開き直りである。

 確かに彼女の言っていることも一理ある。

 プチ整形という言葉があるように、我々の生活の身近なところに整形というものはある――が、しかし。


「……ちっ」

『おぉっと!? 輝欄欄選手の同時接続数が激減していくッ!?』


 輝欄欄、同接数――四万。

 彼女の主張は、一般主婦層及び四十代以上の層に響かなかった。


 さらに悪いことに……元より彼女をよく思っていない一般の女性陣は、ネガキャンの一環としてPON助☆の生配信を視聴しだしたのだ。

 女の敵は、女。


 このままPON助☆の勝利が決まるかと思われたその時――輝欄欄、勝負に出る。


「……ふぅー。 それにしても、なんか暑くな~い? こんなに暑いんじゃあ、勝負なんてできないよ~」

『――!? おぉっとこれは――脱いだッ!? 輝欄欄選手、脱ぎだしたッ!?』


 彼女はゆっくりと一枚ずつ、服を脱ぎだしたのだ。

 放送が危ぶまれたが、これはあくまでも、水着――と、本人が言っていた。

 布面積の小ささに比例して、彼女の同接数はグングン伸び続け――


 その数、五十三万。

 画面の向こうの紳士たちは、歓喜の歌を口ずさんでいたことだろう。

 

 PON助、同接数――百二。

 PON助側を見ていた女性陣も、この戦いに飽きたようだ。

 もとより彼に興味のある者は、あまりにも少ない。


「――ぐはっ!! つ、強い……!」

「……フフッ。女はねぇ、いくつも武器を隠し持っているものよ」


 PON助☆、膝をつく。

 絶体絶命の大ピンチ――彼の脳裏には”棄権”の文字が色濃く浮かぶ。


 ――だが、諦めなかった。

 配信者としてのプライド――小さな小さな矜持が、彼を動かした。


「おっ、俺だって……!!」

『おぉっと――えっ? ぽ、PON助☆選手……?』


 ぬぎぬぎっ。

 PON助☆、漢を見せたパンツ一丁姿。

 同接数――――――――ゼロ。


 対抗すべきは、そこではなかった。


「ぐっ……それならっ――」


 ボロンッ――


「うわっ――」

「ギャアッ――」


~ただいま、映像が乱れております。 チャンネルはそのままでお待ちください~


『――――えぇ、ただいまの勝負……輝欄欄選手の勝利ィッッッ!!!』


 電光掲示板に輝欄欄の名前とSNSアカウントがデカデカと表示された。

 討議場の端では、生まれたままの姿で審判団に引きずられていくPON助☆の姿があった。


 以降、PON助☆を見たものはいない。

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