1話 指紋使いと謎の刺客
「指宿先輩、来てくれ!お願いだ…!」
「おい、今授業中だぞ!?俺は2年からちゃんと授業を受けると…」
昼食後の5時間目。唐突に開け放たれた扉の向こう側には普段とはかけ離れた姿の俺の後輩、塩塚。目を真っ赤にして泣き腫らしていたのだ。こちらに向かってまだ喋っていたが嗚咽混じりで何を言っているか聞き取るのは不可能だった。
「おい、どうしたんだ?何かあったのか?」
周囲から「なんだろう」とか「よく指宿といっしょにいるやつだ、彼女じゃねーのか?」とかそんな言葉が飛び交う。
「とりあえず泣きやめよ…先生、ちょっと行ってきていいか!?何があったのかはわからねーが…」
「指宿くん…いや、まあいいでしょう。授業の進行の妨げになります。お行きなさい、僕が許可します」
「先生…今まで堅物で頑固な婚期逃したおじさんだと思ってたけど…意外といいやつだったんだな…」
「お待ちなさいな!今までそんなことを思っていたのですか!?」
「私も行きますが…構いませんね?」
「なんで足京くんも行くのですか!?僕の歴史の授業はそんなにつまらないですか!?」
『………』
「誰か否定してくださいよ!」
「とりあえず、来てくれ…」
そう言って連れてこられたのは学食のスペースだった。
「ここがどうしかたのですか、塩塚さん?」
足京がいつも通りの口調で問いかける。俺の友人の足京は、一見糸目で裏切りそうだがいいやつだ。とは思うが何かしらのきっかけで裏切る感が半端ない。
「ここで……うどん食ってた私の友人が……ぶっ倒れた…体中のあちこちからトゲみたいなのが吹き出して、半透明になって……救急車で運ばれた!」
その反応だと普通の毒とも考えにくい…しかもその反応には俺も経験がある…
「能力か!?指紋を操る能力の俺。足を手に変える能力の足京。この学園に俺ら以外に能力者が!?」
「わからない。なあ、先輩…ちょっとでいいから友人を助けんの協力してくんねえかな…」
塩塚はそういうと今まで堪えていたのかじわじわと目尻が濡れていく。友人のそんな様子を見て黙っていられるわけがない。
「指宿先輩は『友人のそんな様子を見て黙っていられるわけがない。』とか思って絶対に協力してくれるとして…足京先輩!協力してくれねえか?」
おい、なんかちょっと今いらっときたぞ。
「当たり前ですよ、塩塚さん。私も友人のそんな様子を見て黙っていられるわけがないので…」
「足京先輩…」
なあ、おかしくないか?なんで俺は最初からやる扱いになってるんだ?やるけど。
「足京先輩!? 足京先輩!!」
「おい、どうした?……ハッ!」
ドサッ。
足京がその場に崩れ落ちていた。頭には何かで殴られたような跡がある!しかし凶器も無いし素手で殴ったような陥没具合ではない。これは…
「足京を音も無く!?能力者だ!やられる瞬間が見えなかった!圧倒的格上!」
「先輩、なにが起こったんだ!?」
「わからない!とにかく敵は格上!俺達もああならないうちに逃げるぞ!足京は俺が担ぐ…」
塩塚は口をぽかんと開けて恐怖の目でこっちを見ている。
「はくへて!せんあい!あいあいう!あえあいう!」
「どうした?早く行くぞ!」
何を喋っているか聞き取れない。早く逃げないといけないのに…
「うふりが!くふりが!こなが!こなぎゃ!」
「おい何を言っているんだ!?」
塩塚が白色に発光しだす。
「なんだ!何が起こったんだ!?」
段々その光は弱まり、半透明になって倒れている塩塚の口からはなぞの粉薬が溢れだしていた。毛穴という毛穴から虹色の煙が吹き出しており、体毛が逆だってトゲと化していく。
「まずい!恐らく塩塚にも謎の薬を…いや、俺が大丈夫だったんだ。大丈夫だろ?いや、そんな、まさか…」
「息、してねえ…そんな、馬鹿な…」
(誰なんだ!?透明化の能力だとしたら、塩塚が逃げないよう掴んでいた時に指紋がつくはず。ただ俺の目で見ても、知らない人物の指紋は残ってない……)
「逃げるってのはもうなしだ!どっかにいるてめえをぶち殺す!絶対に居場所を突き止めて。俺の能力の真髄の真髄までてめえに叩き込んでやる!」
◆ヤバい「薬」がIN!
続く




