キャンプ④
夜のおしゃべりが終わり、もう寝ることになったのだが、1つ問題が発生した。
「そういえば、誰がどこで寝るか決めていませんでしたね?」
そう、今回のテントの数は2つ。つまり誰かと誰かが一緒に寝る必要がある。
「体のサイズ的にはノア様とどちらかですね。」
「うん、そうしよう。ノアはどっちとがいい?」
「……」
迷っているようだ。まあ、それもそうだろう。この2人となるとどちらもかなり微妙だから。
「ノア様、セシル様なら子守唄を歌ってくれますよ。あと、私は寝相が悪いのと、いびきをかきます。一緒に寝ると苦労します。」
「は?歌わないわよ子守唄なんて。てかあなた1人で寝たいのね。」
「そのとおり。こんな子供と一緒に寝るなんて嫌ですよ。煩わしい。」
「ご主人様に対してひどい言いようね。」
「ノア、私のところにする?」
「うん。」
結局ノアは私のテントで寝ることになった。
テントの中はそこまで広くない。2人が寝たら背中がくっつくぐらいだった。
私は何か寝かしつけを、とか思っていたが…
朝早くおきて疲れたせいかすぐに眠ってしまった。
隣ではセシルが寝ていた。とても疲れていたのだろう。夢でも見ているのだろう。寝言を言っている。
「師匠、テオ。待って。置いてかないで…」
何か夢を見ているらしい。どうやらあまりいい夢ではなさそうだ。それにしてもテオとは誰なのだろう。もしかして、あの人では。ノアの頭にはさっきのセシルの話が浮かんできた。
この人にも好きな人がいたんだな…なんだかとても驚きだった。
ノアはこっそりテントを出る。そして湖の前に立った。1つ確かめたいことがあったから。湖の中で星たちが煌めいていた。そしてこの静寂な空気。
やはり自分はここに来たことがある。
朝、目を覚ますと隣でノアが寝ていた。一瞬なんで?と思ったが。今はキャンプ中だということをすぐに思い出した。
ノアはすやすやと寝ている。私は彼の頭を撫でてやった。ノアの髪は銀色でとてもサラサラしている。撫でていてとても楽しい。しばらくさわって満足したあと、私は外に出た。
外は明るく心地の良い風が吹いていた。湖も昨日の昼のように戻っていたのだが、1つだけ違うことがある。空にはたくさんの雲がふわふわと浮かんでいた。これは夕方には雨が降る気がする。
そのあと、そう心配しつつも3人は呑気に朝食をいただき、片付けをした。誰も雨を心配する人はいなかった。
湖を出るときには私は悲しさでいっぱいだった。もうキャンプはほとんど終わってしまった。とても寂しい。きっと明日からはまた普通の生活に戻るのだろう。切実に昨日のこのときに戻りたい。私は昨日に呑気に楽しんでいた自分を恨んだ。過去に戻る魔法があったら良かったのに。
ぽつん、ぽつん。私たちが家に帰るまでの道のりを歩いていると突然雨が降ってきた。最初は小雨だったのにいつの間にかザーザーと勢いよく降っている。3人は雨に濡れることは気にせず、とりあえず走る。私も全力で走った。走ること7,8分。やっと家が見えてきた。
「もうすぐだ!あと少し。頑張れ。」
「てか、セシル様はほうきに乗ればいいのではないですか?」
「え、確かに。先に言ってよ、それ。」
「いや、気づいていて何か理由があってのってないのだと思っていたのです。例えば濡れたら木がくさるとか。」
「ほうきは特殊なコーティングがされているから濡れても大丈夫よ。…乗ってもいいけれど、もうすぐ着くし走って帰ることにする。」
家に着く頃には3人ともびちゃびちゃになっていた。みんな髪が顔にはりついている。なんだかとても滑稽な光景だった。私は急いでタオルを持ってきて玄関に立っているままの2人の頭を包んでわしゃわしゃとした。2人ともおとなしくされるがままになっている。こうして体を乾かしたあと、熱々の風呂に入りご飯を食べて眠りについた。誰か風邪をひかないといいが。
結局、次の日にジアッドが風邪をひいた。私とノアは無事だった。
「ごほっ、ごほっ。はあ、まさかこんなことになるなんて。今日は帰る予定だったのですが…」
「しょうがないですよ。昨日あんなに濡れたんですから。」
「はい、これコーンスープです。私とノアで作ったんですよ。」
「ノア様が料理ですか…まったく、変わりましたね。てかあなた、いつもよりぜんぜん優しいではないですか。」
「病人には優しくするというのが私の中での決まりなのです。」
「そうですか…ならこれからはずっと病人のふりをしようかな…」
「だめです。私はこれでも一応治療師なのですから。すぐに気づきますよ。それより病人は安静でおいてください。」
風邪をひいたのなら魔法で治せないのかと思うだろう。そう、それは可能なのだが…
私の専門は外傷であって内部の病気ではなかった。そのため風邪などは治せない。魔法は意外と範囲が狭く、使えるものは限られている。
翌日には彼はひょこっと回復し帰っていった。こうしてまたノアと2人きりの生活が始まった。




