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ジアッドの訪問

 ある日の朝、私が洗濯物を干していると、見覚えのある人がやってきた。その人は前回と同様、顔に胡散臭そうな笑みを浮かべている。本当にこの人、性格が悪そうなんだから。

「お久しぶりぶりです、セシル様。ノア様のご様子はどうですか?」 

「あなたは、従者の人ですね。名前はなんというのでしたっけ?」 

「名前を覚えてくださらないなんて。ひどいですね。私の名前はジアッドといいます。」 

「ジアッドさん、あなた、本当にイライラしますね。いったい何しに来たんですか。追い返しますよ。」 

「せっかくこんな遠くまで足を運んだというのに。追い返されるだなんて私はなんてかわいそうなのでしょう。私はノア様の様子を見に来たのです。」 


もうこの人については諦めるしかない。きっと私の言うことは全く聞かないだろう。  

「はあ、」 

 

 その後、結局ジアッドさんを家の中に入れた。まあいい。元気になったノアを見せてやろう。  


ノアを見た彼は驚いていた。 

「ノ、ノア様。ずいぶん元気になったのですね。良かった…」 

この人も本当はご主人思いなんだな、と私は微妙な気持ちで見ていた。 

「セシル様、本当にありがとうございます。」 

「いや、私はあまり何もしてないですし…」 

「あの、実はノアは病気ではなくて…体調が悪いのは生活習慣が原因かと。」  

「え?」 

「は?」 

2人が一斉にこっちを見た。 

「いや、だからその通りで。ある程度食生活を改善してあと運動をすれば体調は良くなりますよ。私は治療師としての仕事は一切していません。ただ、健康的な生活の仕方を教えているだけです。」  


突然ジアッドさんがパチパチと手を叩き始めた。 

「さすがはセシル様。やはりお気づきになられましたか。」  

「は?も、もしかして私をためしていたというの?」

「その通りです。少し事情がありましてね。いつからこのことに気づいていたのですか?」 

「ええっと、ノアが来た次の日くらいには…」 

「それはすごい。私もそんなにすぐバレるとは思っていませんでした。いやあ、まいったなあ。」  

「何のためにそんなことを、」   

「まあ、とりあえず治療師としての腕を試すことですね。」  

「うん?とりあえず、とは何のことでしょうか。まさか次があるとはいいま…」 

「言うに決まっているではないですか。もちろん次にやってもらいたいことはあります。ただ今ではないので。またそのときがきたら言うことにしましょう。」   

「はあ…そうですか。」 

全く、本当になんなんだこの人は。ノアはこんな人が従者で嫌ではないのだろうか。かわいそうに。

「そういえばノアのことはどうすれば良いですか?」  

「それは、王宮にいても邪魔なんでここにしばらく置いときます。体調は適当に治しておいてください。もちろんいいですよね?」  

「邪魔とはひどい。あと治療ならあなたたちでもできるでしょうに。」 

「いや、それがそう簡単にはいかないのですよ。あの方、食事もまともにしないでしょう?確かに症状としては軽いですけど、精神的な面でも治療が必要なのです。あなたはそれに向いているみたいだ。だから頼みますよ。これからも。」  

「それくらいはやりますよ。私も治療師としての矜持がありますから。ところで用が済んだならさっさと帰ってください。」 

「ええ、ひどい。せっかくここまで来たんだからもう少しいてもいいではないですか。」 

「しょうがない。そんなにここにいたいなら仕事を手伝ってください。」 

「ええ、なら帰ろうか…」 

「ダメです。私、ノアの食費とかも自分で負担しているのです。その分のお金を今、労働で払ってください。いいですね?」 

「分かりましたよ。」 

私は彼に畑仕事を与えた。別に自分でやっても良いが、やはり肉体労働はやりたくない。はっはあ、ざまあみろ。私にさんざん嫌味を言っておいてただで帰すわけないじゃない。 

  


 1時間後くらいに彼は帰ってきた。額にはたくさんの汗が浮かんでいる。 

「はあ、もうここには2度と来ないことにします。こんなことをやらされるのはごめんですよ。」 

「いやいや、いつでも来てください。いくらでも仕事を用意していますから。私はこう見えて多忙なのです。あ、あとこれどうぞ。うちの自家製レモネードです。」 

「え?」

一瞬彼は戸惑ったようだがしぶしぶ受け取った。 

「急にどうしたんですか?私がせっかくあげたというのに。」 

「いや、あなたはとてもずるい人ですね。」

「いやずるいって何が?」 

「いや、気分を一気に下げた後に、急に優しくすることです。男はこういうところにキュンっとするんですよ。」 

「へえー。そうなんですね。」  

「あなた絶対話を聞いてないでしょう、自分で聞いておいて。」



結局彼はレモネードを飲んですぐ帰って行った。きっともう来ることはないだろう。 

そう思っていたが、その2週間後、 

「ノア様、元気にしておられますか〜?」 

とひょこっと姿を現した。  

結局その日も仕事をしてうちでご飯を食べて帰って行った。私としては仕事がなくなるので嬉しいのだが彼の本物の仕事が終わるのか心配になる。もう最近では1週間に1回くらい来るようになっていた。  


この従者、ジアッドの正体を私はまだ知らない。いったい何者なのだろうか?








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