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引っ越し先で

 道中の宿屋で一悶着あったが2人はなんとかして家にたどりつくことができた。その家とはセシルが所有しているものだ。いわゆる別荘というやつだ。私は若いが金のたくわえはそれなりにある。なぜなら診療所はものすごく稼げるから。ただでさえ医療機関は稼げる。そして魔法のものとなると治す時に痛みがないし治るのが早いから普通のところよりも取れる金はぜんぜん多かった。この世界で魔法を使える人はあまりいない。そしてその中で治療師の特性を持っている人となるとごくわずかしかいなかった。そのため魔法診療所はとても貴重だった。あと、副業の香水作りも結構金になっているしね。

 


 家について安心していられたのも束の間。

なんと着いた次の日になんとノアが熱を出してしまった。長時間寒い中を飛んでいたからだろうか?ちなみに私は無事だった。なんでだろう。私の方が外側にいたから寒かったはずなのに。ましてかして私はそうとう強い体なのかもしれない。

私は朝から看病でとても忙しかった。食べ物や薬を買ってきたり、掃除をしたり… 引越したばかりだから家中ほこりだらけで掃除がもうそれは死ぬかと思うくらいに大変だった。もう、ノアにも手伝わせるつもりだったのに。そして看病も同時にした。私は本当に猫の手も借りたい気分だった。

やっと夕飯が終わり、あとはノアを寝かしつけるだけ、となった時。私は本当に死にそうだった。冗談ではない。もう何もやる気力が残っていなくて自分のほうが倒れそうなくらいに。子供が熱を出したときの母親ってこんな感じなんだ。こんなに大変だったとは思っていなかったな。 

私は子供の頃にたくさん風邪をひいていたから、その時に看病してくれた母親に今更感謝した。  

 


「ラララー 、」

私はノアに向かって歌を歌っていた。これはこの前の宿屋で歌っていたものとはまた違うものだ。なんか昨日、この歌が夢に出てきた気がするんだよね。これは自分の師匠がよく口ずさんでいたもので聞いているうちに好きになっていたものだった。そのため今でもときどき歌っている。ただ、これを人に聞かせるのは初めてだった。 

この歌を聴いているととても優しい気持ちになる。何かに包まれているような、守られている感じがする。ノアも気に入ってくれるといいんだけど。

しばらく歌っているとノアはいつの間にかすやすやと眠っていた。それを確認した私は自分も安心して眠りについた。 

 


 ノアは前からセシルについては自分の母親と共通する部分があると思っていた。なぜだろう。性格や雰囲気は似ていないがなんとなく行動が似ている。最初の頃にいれてもらったハーブティーや魔法の使い方は母を連想させた。そして昨日、ノアはセシルと母親がなんらかのつながりがあるということを確信した。その大きな原因になったのは子守唄。熱を出していたため詳しくは覚えていないが、昨日セシルが歌っていた歌は母がいつも歌っていたものだった。ノアは毎晩あれを聞いて眠りについていたから…いやになるほど聞いてきた歌だった。母は確か自分で作った歌だと言っていた気がする。つまりあの歌を知っている人は身内などごく僅かしかいないはずだった。 

その他にも治療師である点などが同じだ。もしかしてセシルは自分と同じく母の娘だったりするのかもしれない。だとしたら自分の姉になるのか。彼女の生い立ちについては聞いたことがないが、十分にありえる話だと思う。 

 


ノアはその日からセシルについてこっそり調べ始めた。もともと彼女についての情報がなさすぎたこともある。なぜ自分が今まで調べようとしなかったのか、後悔していた。 

ノアは自分でも体調が良くなってきていることがとても分かる。きっとこの生活ももうすぐ終わるだろう。ノアは勉強をたくさんしないといけないから。こんなに呑気に過ごせなくなるのだろう。 



 

 この街はだいぶ暖かいほうだが、それでもセシルにとっては普通に寒かった。毎日のように薪ストーブをつけてなんとか寒さを乗り越えている。 

パチパチ、と火のはぜる音がする。セシルはソファに座って頭からすっぽり毛布をかぶっていた。顔だけが出ているから冷たい。 

火を見ているととてもリラックスできた。このまま寝てしまいそう。 

足をソファで伸ばすと反対側にいたノアにぶつかった。なぜか彼は恥ずかしいのか絶対に私の近くには座らない。

ノアは本を読んでいた。前まで一切読んでいなかったのにどういう心境の変化だろうか。最近本をよく読んでいる。読んでいる本は特に歴史が多かった。さては歴史が好きなんだな。私も好きだったからその気持ちはよく分かるよ。うん、地理よりぜんぜん好きだ。 

私は勝手に共感したつもりになっていた。   


私はこの時はまだ知らなかった。この生活がそう長く続かないことを。


 


 






  






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