第76話「PHASE 19 Re ; boot – 復活」
「しまっ――切り離され、るっ!」
レクエリアムにノイズがはしり、千鳥足になった。
「ハァッ!ハァッ!よ、し……っ!」
メビウスが口角を上げた。
だが、レクエリアムはその状態ですら、彼に襲い掛かったのだ。
「メビウスゥ……!こんな大事な時じゃなければ、褒めてあげたのにぃぃ!!」
「っ!!」
全霊をかけたメビウスは、反動で動けなかった。
「メビウスッ!!」
私じゃ届かない……!
その時、爆発と9つのビームがレクエリアムに直撃する!
「遅くなったわ、ソウジは!?」
「ごめんなさい陛下っ……!」
レクエリアムの余裕の消えた顔の先にいたのは、ルシファーと蘭だった。
「~~!!裏切者たちが、いい加減にしなさい
ッ……!!」
【死になさ――】
再び事象改変を行おうとする。
だが、それは乱れた。
「あ……ああッ!!あ、あふれ出るッ……!!!」
※ ※ ※
<黒薔薇終末之神衣 深層世界>
「――これが、レクエリアム・ザン・アルトリアの真実だ。頼――ヴッ!!」
「お、おい……ッ!もうしゃべるな……!」
茨に縛られ、崩壊していく体に鞭打ちながらも、ブレイドは俺に全てを伝えた。
話し終えるまでに、何人もの黒薔薇の悪魔……いや、反逆者たちが消えていった。
――あなたが悪魔になる必要なんて、あってはならなかったのに――
――だが、君は俺たちとは違う。そうだろ?――
俺は朽ちてしまった指を見て、上を見上げた。
何が正義なのか――俺は悪意と、どう向き合うべきなんだ――?
「ソウジ……?」
粒子化してしまっているマナが、心配そうに声をかけた。
「俺は……」
「そうだ……今まで、俺は反逆者として生きてきた」
頭を上げたまま、俺は口を開いた。
「何度もくじけそうになった。でも、その壁を乗り越えても、ただ心に影を落とすだけだった……!」
俺たちを縛る茨に、僅かなノイズがはしる。
「――でもッ!!」
俺は頭を下ろし、ブレイドの赤い目を本気で見る。
「気づいたんだ……!俺の反逆は破壊なんかじゃない、優しさで救うことなんだって!!」
「12代目……」
「ソウジ……」
その時、一筋の光が、暗い牢獄に差した。
身近で見てきた、すべてを断ち切る、白き光。
俺は思い切り茨を引っ張り、そこに手を伸ばす。
「だから救ってやる……レクエリアムも、アンタも!………ああああああ!!!」
光を掴んだ瞬間、俺たちを縛る茨が消え、空間が崩壊する。
周囲は決意を反映したかのような、澄み切った青空と化していた。
「……!メビウスの、光……いや、これはそれだけではない……!」
困惑するブレイドの前に俺はマナの魂と共に、光を背にしてこう轟かす。
「俺はゲート!敵も味方も全部救う、傲慢な反逆者だ!!!」
それを聞いたブレイドは、一瞬固まったが、頬を緩めて小さく笑った。
「……君はやってしまうんだろうな。一人だった俺たちとは違う、君にならば……」
その瞬間、ソウジ――ゲートは戦場に舞い戻った。
※ ※ ※
<帝暦2031年 4月8日 12:00 アルトリア宮殿 玉座の広間>
レクエリアムの身体から舞い降りた者を……者たちを、私たちは見た。
朽ちて瀕死の皇帝の騎士。
悪意に翻弄され、死んでしまったはずの、天使の魂。
そして――
「反逆者ゲート、これより最後の反逆を、開始するッ!!!」
3“人”は私たちのところに着地した。
「ありがと、みんな。あと……ただいま」
「ゲートォ……!!」
私は彼の潰れた左目を気にしつつも、再会に涙した。
「フッ、遅いよ相棒!」
気の抜けた顔で涙を拭うメビウス。
「ああソウジ……その目を早く治してあげるわ」
治癒しようとするルシファー。
だが、ゲートはそれを制した。
「ありがとう。でも悪い、ルシファー。俺じゃなくて、この人を治してやってほしい」
その人とは、ブレイドの事であった。
「えっ……?でもそのケガ……!」
困惑するルシファーに、ゲートは続ける。
「頼む!この人には、反逆の結末を、見届けてもらわなきゃならないんだ!」
彼の必死な姿勢に、ルシファーは頬を染めながら、渋々了承した。
「すまないな……ゲート」
「気にすんな、ブレイド。さて……」
ゲートが振り返ると、そこには乱れた黒薔薇のドレスを荒々しく靡かせた、レクエリアムの姿があった。
「ハァ、ハァ……ッ!完全体がっ、世界改変の進行がっ、解けてしまったじゃないの……!!それにブレイド……あなたまで裏切るのっ……!?」
「いや、違うな。間違っているぞ、レクエリアム」
返事をしたのは、ゲートだった。
「なんですって……!?なぜ言い切れるのよ……!?」
レクエリアムの問いに対して、ゲートは毅然と答える。
「言い切れるさ!その答え合わせを……」
彼はそう言うと、私の手を掴み、引き寄せた。
「アイと一緒に、これからしよう!!」
「ゲート……アンタ、でもその目じゃ――」
「いいや、ここにある。だから――」
するとゲートは、私の手を取ったまま、膝をついた。
「君の目を、俺に貸してくれ!!」
黄金に輝く<女神の慧眼>。それを貸すって……どうすれば。
「と、取り出せないわよ!」
「え……?いや、そうじゃなくって……」
調子が外れたゲートが、口ごもる。
「そうじゃなくて……俺の目をアイが補って、一緒に戦ってくれってことだ!」
……ああ、そういうこと!
固まってしまった私だったが、クスッと笑い、彼の手を握り返した。
「ええ、もちろんよ。あなたと私の答え合わせも、一緒にね……!」
――ゲートとアイが、皇帝レクエリアムと対峙する。
「終わりにしましょう……アイナローズの偽物と、反逆者ゲートッ!!」
レクエリアムの禍々しいオーラが、赤黒い稲妻と共に戦場を侵食していく。
アイは周囲を凍てつかせながら、金色の瞳で静かに見据える。
「ええ……終わりにしましょう。レクエリアム」
ゲートは静かに黒薔薇の剣を抜く。
「マナ……そして反逆者たちの魂を受けて……」
その時、剣の鍔である黒薔薇の意匠が、花びらに様々な色に染まってゆく――。
「俺は、この世界に反逆する!!」
真の最終決戦を、固唾を飲んで見届けよ。




