第3話「ソレを悪意と俺は呼ぶ」
今回の話は、以前より文字数多めです。
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「へえ〜、結構洒落乙なロビーじゃん」
シックな外装とは逆に、床には金に縁取られた紅い絨毯が敷かれ、天井には、ロビー全体を柔らかく照らすシャンデリア、漆塗りのカウンター、などなど……。
「こちらにおかけください」
そう言って、ソニアは4つの椅子が置かれたテーブルにお茶を置いた。
「ありがとう……おぉ、紅茶だぁ!」
今までゴボウ茶しか飲んだことがなかったから、ワクワクするぜ……!
俺達が一息ついたところで、ソニアが反対側に腰を下ろした。
「では、お話しましょう。あのような行為をせざるを得ない理由を……」
ソニアが真剣な面持ちで話し始める。やっと本題だな。
「おう、聞かせてくれ――」
そう言ってカップを口に
運ぼうとした――
その時だった。
耳をつんざくような音が、床から鳴り響いた……!
アイが突然、俺のカップをはたき落としたのだ。
「あああっ!!俺の紅茶ぁぁ!!」
せっかくの楽しみが台無しになったことで、俺は情けない声を上げた。
「おい!なんてことしてくれ――」
アイに詰め寄ろうと振り向く。
しかしアイの必死な顔を見て、そんな怒りは無限の彼方に飛んでいった。
……いや、まさか。
「な、なあソニア……。紅茶に何か盛ったりとか、してない……、よな?」
さ、流石にこんな子がただの利用客にそんなこと……?
――しかし、ソニアは答えない。その上、これまで見せたことのない、張り付けたような笑顔を浮かべる。極めつけは目の焦点すら合っていない……!
「ななな何で……バレたののかしらら??」
バグったロボットのような、異常な言動。
疑念が確信に変わった――
「……!! アイ――」
その瞬間、俺達は大きな何かに壁へと叩きつけられた。
「ぐっ……!!」
裏路地で殴られた記憶が湧き上がる。
だが4年前とは違う。俺はもう、弱くなんてない……!
俺は即座に態勢を整え、戦闘態勢に入る。
「やっぱりね……。あなた達が隠してた邪気、ゲートはともかく、私にはお見通しよ」
アイも本気だ……!
「おいソニア!何のつもり――」
その時、俺の脳に衝撃が奔る……!
「おい……!?なんだよ、その姿……?!」
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俺の眼前に映ったのは、かつての眩しさを失ってしまったかのような、痛々しい姿。
顔は蒼白に、目の焦点は全く合っておらず、背中からは邪気を体現したかのような、紫色の触手が4本生えていた。
「嘘だろ……お前は、最初からそのつもりで俺達を……!?」
嘘だ……!
ソニアがこんな姿になっていいはずがない……!
しかし、悠長にことを構えていることはできなかった。ソニアの触手が、襲いかかる……!
「くっ!」
黒薔薇の剣を引き抜こうとする。だが、ソニアが脳裏にちらついちまう……!
「クソッ……!!」
俺は自分の迷いに当たるように、剣の鞘で触手を叩きつけた。
「ちょっとゲート?!なんで剣を抜かないの?!」
アイが声を張り上げる。
「〜〜! 分かってるッ……!!」
バカ野郎……覚悟を決めただろうが!
なのに… …始まってすらないのに、それが揺らぐ……!!
気の迷い……それは戦場では命取りだ。
次の瞬間、右の視界が赤く染まった……。
「っ……がああああッッ!」
俺は苦痛でとんでもない悲鳴をあげる。
痛い……痛い痛い痛い……!
だが、気合で残る左の視界で状況を確認する。
じゃなきゃ死ぬ……!
そして俺の目に映ったものに、俺は驚愕した――!
「……ヨ、ヨハン……?!」
ヨハンもまた、背中に触手を生やしたバケモノと成り果てていた。
しかし次の瞬間、氷の針がヨハンをぶち抜く!ヨハンの腕から、赤い鮮血が飛び散る!
「何やってるの?!」
アイが怒鳴る。
「4年前の覚悟を思い出して!」
だが、ヨハンの触手がアイの足を貫く。
その上、アイの生命力を触手が奪っていく音が鳴り響いた…。
「クッッ………!」
アイが苦悶の表情を浮かべる。
「私はいつでも…そばにいるから…!!」
それでもなお、俺に思いを伝えようとする。
―うれしいよ…。でも…!
「……それとこれとは、話が違う!」
「ソニアとヨハンは…客引きありきの出会いだったけど、王都で初めて知り合った仲だ!お前も何かの縁って言ってただろ……!?」
冷たく恐ろしい間が、辺りを覆う。
――やがてアイが口を開く。
「……あれは美辞麗句よ」
……何だよそれ。
何言ってんだよ……お前!?
「あのとき邪気を感じたから、…ぐっ、何かあると思って話に乗った…だけなのよ!」
ヨハンと戦いながら、アイが告白する。
「――!」
言葉を失った俺はソニアの触手に脇腹を貫かれる―!
「ぐあああああ!!」
俺は無ずすべもなく、反対側の壁まで吹き飛ばされる。
――出会ったそばからコレかよ……。アイとの約束、ソニアたちとの束の間の交流が頭をよぎる……。
クソッ、どっちも捨てられねえよ……!でもこのままじゃアイがどうなるか分からない……!
――悩んだ末に、俺はなんとか立ち上がる。
「ごめんな……ソニア」
剣を握る手が、一瞬震える。
「俺は……ここで――!」
相打ちに持ち込もうとした――その時。
俺は足を止めた。俺の目に映るソニアの姿に……。
俺の呼吸が止まる――。
「たす……けて……おにい……ちゃん……!」
か細い声で、ソニアが呟く――。
「――!!!」
時間が止まったかのような感覚……!
「ハアアアッーー!」
次の刹那、俺は触手のみを斬り刻む!!
数秒後、毒々しい色の血が飛び散った!
人間とは思えない色……。
「一瞬の違和感――見間違い……
いいや、違う!やっとつながった!」
「ゲート!?何がつながったの!?」
離れたところから、アイが困惑しながら聞き返す。
俺は真っ直ぐソニアを見つめながら答える。
「……抗っていたんだ、ソニアは」
ソニアの涙を流したその顔をみて、俺は断言する。
「見てみろアイ!触手部分だけ、血の色が違う!」
実際、ヨハンの腕から流れた血と、触手の血は全く別の色だった。
「――!!」
アイは声は出さなかった。だが、俺の言ってることを理解したということはなんとなく察することができた。
「寄生して無理やり行動を強制させる、
理不尽な支配……!」
俺は怒りを込め、腹から糾弾する!
「ソレは……、悪意だっっ!!」




