第70話「PHASE 13 終末 宣言」
<帝暦2031年 4月8日 10時40分 閉ざされた空間にて>
「クローン……!? 答え合わせ……!?」
「そう。反逆者となったキミが私に持った疑問、そして私のこと。その答え合わせ……って、アンタ驚きすぎでしょっ! あはは!」
けど、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で固まっているゲートを見ると……昔と変わっていないところもあると感じて、なんだか心が軽くなる。
「だっ、だってよ! 皇族じゃなくてそのクローンなんて言われたら……いいや、ごめん。話を続けてくれ」
彼は壁に手を触れながら、ひとまず落ち着いてくれた。
「でも、アイナローズだからアイちゃんか。でも、馴染みがあるアイで呼ぶよ」
「か、かまわないわ」
……こんな時に、何意識してるのよ。バカ。
「こ、こほん。じゃあ、まずはその剣ね」
私は鞘に収まった黒薔薇の剣を指差す。
「あ、ああこれか。王宮からパクったとか言ってたな」
「え、ええ……そうよ。言い方はアレだけど。ブレイドがキミを12人目と言ったように、その剣の持ち主は以前にも11人いたの」
「まあ、それは夢で見たし大体想像できたけどさ。別名“反逆の剣”が、王宮にあったのが釈然としない……」
ゲートは相変わらず壁に触れながら険しい顔をする。
「そこよ。黒薔薇の剣は……」
「人々の抗う意志が、マギアの力を通じて具現化したものなの。だから色々な意志が混ざり合って黒く染まってるワケ」
私は一呼吸置き、話を続けた。
「――ここからは長くなるから、頑張って聞いてちょうだい。97年前。初代黒薔薇の悪魔――ブレイドが、レクエリアム統治下のアルトリアに蜂起したらしいんだけど、彼は剣を放棄して、また別の持ち主が黒薔薇の悪魔となって……でもレクエリアムは、世界を塗り替える力を計画に利用することを思い付いた。黒薔薇の悪魔を回収して、世界を自分の好きなように改変する計画」
「私のモデルは、レクエリアムの唯一の肉親だった妹、アイナローズ。彼女は幼いころに亡くなって……黒薔薇の力で復活させようにも、上手くいかずクローンの私を作った」
「けど……レクエリアムは、私を出来損ないと蔑んだ。何せ、妹としての記憶なんてこれっぽっちも無かったんだから。彼女は大司教達に、私の体を弄くり回すよう命じた」
「皇帝は今という世界を壊そうとしている。でも私は、この世界で生きる意味を見つけたかった。壊させない。それで逃げ出そうと思ったけど、黒薔薇の改変能力が相手じゃ歯が立たない……。だから、新しい黒薔薇の悪魔を生み出して味方につけようと思ったの」
「それで俺に力を与えたってことか……」
「ええ……キミを騙すような真似をして、申し訳ないわ」
ゲートは深く考え事をしていた。当然だ、こんな大事なことを今まで黙っていたのだから。
「……君も、大変だったんだな」
「何で今になって教えてくれたのか分かんないけど、俺は感謝してるぜ? アイ」
彼はなんと……にこやかに感謝を述べたのだ。
「ゲート……!!」
私の目が、急激に潤みだした。
「もう半分は、後でするってことだな。ちょうどいい!!」
彼がそう言った途端、私達を閉じ込めていた空間が崩壊した!
「なるほど……アンタが壁を触っていた理由が分かったわ」
彼にサムズアップを送る。
「そういうこと! さあ、行くぞ! アイ!」
彼の手が私を外へ引いていく。
そうよ、言うのよ。
皇帝の目の前で、ゲート……アンタに!
※ ※ ※
「――なに、これ」
私は目の前の光景が信じられなかった。
「ここは、市街地か……改変で飛ばされて……おい、やめろ。やめろ皆ァァ!!!!」
何が見えていたかですって……?
市民が子供に暴力を振るい、喧嘩で殺し合いをし、
市民が怪物になっていく様。
呆然としている私とゲート。
その時、すべての人間に聞かせるように、アナウンスが始まった。
「何も知らずに生きている全世界の住民と、反逆者の皆さん。ごきげんよう。私はアルトリア帝国・現皇帝、レクエリアム・ザン・アルトリア」
「皇帝レクエリアム……!」
ゲートが歯ぎしりする。
レクエリアムは、こう続けた。
「塔が全て破壊される前に、悪意で満ちた醜い世界を、自らの悪意で浄化する……」
「リアライズ・レジェンドを、始めましょう」




