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第67話「PHASE 10 仮面の裏側」


 ダークフェイトは火花を散らしながら猛スピードで加速する!


あまりにも急な巻き返し。


――大地の女神。突然現れた、あのレースクイーンの事か?


「本当に謎が多すぎる……!追葬の大司教は!」


僕はアクセルをベタ踏みし、再度ショートカットを実行しようとハンドルを切った!


「いっけえええ!!」


そのままダークフェイトの横へ着地しようとした、その時。


「甘いなメビウス!同じ手が通用すると思うなぁ!」


奴の黒い車体から銃口が飛び出し、火を吹いた。

その弾丸は、シュバリエータの白き翼を無残にも撃ち抜いた。


「なっ!あんなところから……!」


「きゃっ!」


マズい、バランスが……!

このままじゃ着地に失敗してしまう……!


「うおおおおおっ!!」


ハンドルを操作し、アンカーを射出する。

狙いはダークフェイト……!


だが、その一撃は車体の角を掠めるだけだった。


直後、お返しと言わんばかりに銃撃を食らってしまう。

シュバリエータは黒い煙に包まれながらサーキットに直撃するのだった。


「ううっ……!」


僕らは衝撃で気を失ってしまった。

多分、ほんの数秒間だったと思うけど、それが永遠に感じられた。


「……っ!ごほっ、ごほっ!」


熱い煙で僕はレースに引き戻された。

フロントガラスは割れているが、合体しているシュバリエッタはまだ消えてはいない。


「けど、そろそろルシファーのインターバルを挟む時間だ……!」


一刻も早く、追葬に追いつかないと。


エンジンや駆動系に異常はなさそうだ、よし。


「行くよ、姉様!」


と、振り返った時。


僕は絶句する。


なぜなら、彼女は頭から血を流していたのだから……。


「姉様!」


なんてことだ……!ヘルメットをしていたのに。

完全に取り乱してしまった。


だが、それを諫めるように、僕の頭を震えた手が優しく撫でた。


「心配してくれて、ありがとね。でも……あなたはただ、走りなさい。わたしは……」


姉様は血を拭い、ヘアゴムを静かに外す。


「わたしは、あなたのレースクイーンになってあげる。メビウス・ディ・アルトリア!」


  ※        ※         ※



 その頃、追葬の大司教チェインズは、勝利を確信しながらもファイナルラップに突入していた。


(そうだ、これでいい。私にはヨルズがいる)


そんな想いを乗せ、レースを独走する黒いフォーミュラカー。


それとは裏腹に、レースクイーンのヨルズは複雑な面持ちだった。


「あなたがその仮面を被ってからかしら……笑顔になれなくなったのは」


そう呟く彼女の脳裏に浮かんだのは、幼き日の思い出――。


――フランスのサーキット場で共に感動した、姉妹の顔。


レースで世界を変えたいと、風に乗って駆け抜けたいと決意した、快活なあの子。


「でも、あなたはその志を醜く叶えてしまっているのよ。私はこれ以上、あなたを増長させたくない……!」


純粋な心ほど……悪意に触発されやすいって、なんでもっと早くに気づけなかったのよ……!。


――やがてヨルズは、静かに祈りの手を組んだ。


「お願いっ……!あの子を、妹を止めて……っ!!」



彼女は願った。この世界に。今、命を賭けてレースに挑んでいる反逆者達に。




一瞬、追葬の特徴的な駆動音が風でかき消された。




ヨルズの前を、再びチェインズが通り過ぎたとき――



歌が聞こえた。


いや、歌のような詠唱だ。


「……?ヨルズ、いやこの声は……!」


チェインズが声の主を認識した瞬間、ありえない速度でコースを駆け抜ける白いフォーミュラカーが接近していた……!!


「僕はまだ走れる!姉様が、こっちにも勝利の女神がいるから!」


メビウスの迷いのない声が、ファイナルラップの始まりを告げた。

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