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第65話「PHASE 8 蘭欧陽 ビギニング②――そしてライジング」


 ボクの加えていた猿轡を中心に、会場の4割を爆炎が包み込み、ボクを捕らえていた男達の腕も消し炭になった。


すぐさま主催者お抱えの消化班が放水し、事態の鎮静化に努めた――が。


「アハッ、アハハハハッ!!!」


無事では済まないはずの爆心地から、消火による蒸気をかき消さん程の笑い声。


「ばっ、馬鹿なっ……!?」


煙が晴れ、その声の主の姿を見た主催者の男が恐怖で震え上がった。

そこにいたのは他でもない……


「裕福なエリート様ァ!!皆み~んな死んじゃえェェ!!アハハハハッ!!」


――あって無いような服以外、傷一つないボクが血走った目で笑っていたんだから。


「ばっ……化物めェ!!!撃て―ッ!!!」


控えていた武装兵達の銃口が一斉に火を吹く。でも怖くはなかった。だって一瞬で理解したんだ、ボクの覚醒した力を。


「ボクと遊んで!し~んでぇぇ!!」


ボクが弾丸を一つ弾いた途端、それはゴムボールのように自在に跳ね、ボクの意志のままに兵士の脳天を貫いた。


「花火がボーンッ!」


同時に――天井の照明、銃、観客のスマートフォンが、一斉に爆発した。


「いやっ――!」


「息子の大司教就――ギャアアアッ――!!」


会場を飛び交う数多の悲鳴、断末魔、火、血、肉――。今のボクにはパレードのように映ったよ……っ!!


 ふと後ろを向くと、主催者が情けなく逃げようとしていた。

で・も~?逃がすわけなんてないよね~。


「キャハハ!どこに行くのエリートさ~ん?」


投げつけた銃を爆破させ、退路を断つ。


「た、助けてくれっ……!」


つい数分前まで商品扱いしていたくせに、すぐ命乞い。

それによく見たら、僕の人生を狂わせた生徒の顔にそっくりじゃん。

けど見た感じ60代。祖父?それとも高齢で結婚したのかな?


「ねえ、おじさん。ボクのこと覚えてるでしょ?」


ボクの鎌かけに、コイツは震えながらも頷いた。

特権階級を醜悪に描いたような人相の悪さ、体型と言い……ボクの目指していたエリートって、こんなものなのか。


「わ、悪かったッ!許してくれぇ!」


「エリート様は何をやってもいいんだね。政治家のくせに人身売買なんてやっちゃって~?」


すると、男が喚き散らす。


「30年前、私はアルトリアに国を売ったんだ……!もうこの世界は、アルトリアに統一されているっ!体裁なんてない!」


何をごちゃごちゃと……ああ、うるさい……!


「もういいからさ~?死ん――」


「待て」


とどめを刺そうとしたその時、無機質な声がそれを制した。


――一部始終を見ていた追葬の大司教様が、ボクを大司教候補生にしてくれたんだ。


「力は無秩序に振るうべきではない、破壊は搾り取った後に行うべき」



 主催者の男は中華公国の情報・資金・黒いパイプを搾取され、娘共々追葬様に轢き殺された。


 4か月後、ボクは道楽の大司教就任試験として、かつての母校である高等学校の破壊を行った。アルトリア帝国としては、特に優秀な数名以外の者は国力低下の為に消えてもらいたいとか。


かつてのクラスメイト、先生、先輩の顔はぶざまだったなぁ~!


「ごめんなさい」


「たすけて」


――み~んな、黙っちゃったけどね。


  ※        ※         ※



<帝暦2031年 4月8日 9時37分 道楽の塔>


蘭の記憶の渦から抜け出し、ルシファーが現実に引き戻される。


「ね、わかったでしょ?ボクの原点……道楽の大司教としての原動力」


蘭が綱の上から叫ぶ。


「だから消えてよっ!エリートのルシファー様!」


彼女が高速回転する独楽を飛ばした。


だが――ボロボロのルシファーはゆっくりと銃口を上げ、こう呟いた。


「“スリーポイント、レーザー”」



その瞬間――

ルシファーのスカートから二機のビットが飛び出し、ビームを放ちながら独楽に突っ込んだ。


「え……」


同時に引き金を引き、二発のビーム弾とビットビームが、蘭の足場を落とした。

思いがけない逆転に体が硬直してしまう。


(そんな……っ!?何が起こったの!?)


けれど、認めざるを得ない。



――この人は、やっぱり本物の、エリートだ――


すぐにハチの巣になる……蘭自身そう思った。





「蘭――ッ!!」






だが痛みはなく、その代わりに――





抱擁による“ぬくもり”が、彼女の身体を包み込んだ。


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