第64話「PHASE 7 蘭欧陽 ビギニング①」
〈9時29分 カテナ教会 道楽の塔――〉
ステンドグラスは割れ、炎が広がった御堂。そこにはボロボロになった修道服の大司教と、恍惚とした表情で彼女を見下ろす神楽服の大司教が。
充満する煙で息することすら厳しい中、修道服を着た大司教――ルシファーが何かを言いかけた。
だが、それを遮るように神楽服の――蘭が声をあげる。
「な〜んでそんなにエリートに固執するのかって言いたいんでしょ?」
蘭は貼り付けたような笑みを浮かべ、続ける。
「裏切り者のルシファーさまに話すのも尺ですけど……元後輩のよしみで教えてあげま〜す♪」
直後、ルシファーの頭に蘭の記憶が流れ込んだ――。
※ ※ ※
〈帝暦2027年 6月 中華公国 特進高校――〉
ボクは平凡な家庭に生まれた。名は蘭欧陽。
昔から孤立しがちだったボクは両親にエリートを目指せと言われてきた。
実際、周りの優秀な人間は皆から褒められて、チヤホヤされていて……ボクにとっては希望の光。
中華公国随一の特進高校に上がって、大国アルトリア帝国――恋慕の大司教候補に選ばれた。
皆からチヤホヤされて、両親や先生からも褒められる日々。
これが希望の光だと、
そう思っていた。
※ ※ ※
「あなたにはがっかりしました……蘭」
……体育の時間、ボクはとある生徒と偶々ぶつかり、お互いケガを負った。
幸い軽症で、お互いの不注意で……済むはずだった。
よりにもよって……その生徒が中華公国の議長の息子で、ヤツはそれを口実にボクを糾弾した。
ボクはどうしたら良かったのか。
「大罪人」
「蘭、お前は大司教候補生から外す。推薦した私の身にも……!この社会のゴミが……!」
「いずれやると思ってたよ」
「友達ごっこも終わりにできてよかったよ」
「出ていけッ!この親不孝者!」
……たった一回のミスで、ボクはすべてを失った。
いや、元からボクの味方なんていなかったのかも。
「ボクは……なにをやっていたんだろ……」
そして、スラム街でゴミを漁る日々。
ある時はクスリを打たれてオークションに出されたっけ。
「もう……嫌だよ……ッ!」
猿轡をはめた口じゃあ、何も発音できなかったけれど。
「どいつもこいつも……!エリートってなんだよ……!!」
複数の男がボクに手を伸ばした。
「特権階級……媚びへつらう奴ら……ッ!!」
ボクを弄り始め、猿轡を砕かん程に歯を食いしばる。
『……死ねッッ!!!』
ボクの憎悪……悪意が頂点に達した、その時。
くわえていた猿轡が、大爆発を起こした。




