第63話「PHASE 6 道楽の愉悦」
〈帝暦2031年 4月8日 9時22分 カテナ教会・道楽の塔にて――〉
「すばしっこいわね……!」
所々打撲で変色したルシファーが、汗を垂らす。
「キャハハッ!シュバリエッタを使わずにボクに挑むなんて、舐めすぎでしょ!」
周囲に張り巡らされた綱の上で独楽を回し、道楽の大司教・蘭が高笑いする。
シュバエリッタ無しの戦い……それは想定していた。
”ランペイジフォーミュラ”そのものを調達できなかった故の代案。
それを補う為に、彼女はデュアルバレットを……!
直後、再び独楽が下に襲いかかった!
「くっ……!」
ルシファーは上に跳び、蘭に銃口を向ける――が。
「ざぁぁんねんでしたぁぁ!」
蘭はそれよりも早く、和傘を振り被っていた!
(距離が近すぎる……!)
瞬時に傘を銃のフレームで受ける!
同時に、材質的にあり得ないはずの重厚な衝突音が、塔全体を震わせた。
「……っ、なんて重い攻撃なの……!」
空中で拮抗する2人。だが、蘭は余裕の笑みで、何処からともなく手毬を取り出した。
「弾けちゃお!エリート風情のルシファー様♡」
彼女がそう言って蹴り上げた直後……
手毬が凄まじい爆風と共に、空中で弾け飛んだ。
「〜〜〜!!」
自爆に等しい至近距離での爆破で、ルシファーは炎と共に地に叩き落とされた。
(ッ……!何を考えているの……!?お互いタダでは済まないのに……!)
大司教の肉体ですら、大きくダメージを負う攻撃。
帝国の要が、そう簡単に殉職できるはずはない。
だが、その答えは正しいことがすぐに分かった。
「無様だね〜〜。エリートさ、ま!」
蘭の足が、ルシファーの腹に突き刺さった。
「ぐはっ……!」
何度も何度も踏みつけられる。おまけにその相手は全くの無傷。
ルシファーの顔に、初めて悲恋とは違う絶望が浮かび上がった。
「あああ……!そうっ!ボク、その顔が見たかったんだぁぁ……!」
蘭がツインテールを揺らしながら、愛おしいものに触れるように体を震わせた。
「周りにチヤホヤされてるエリート……!」
まるで赤ん坊のような笑顔で、ルシファーを踏む。
「挫折も知らない癖に……!」
傘で殴りつけられ、ルシファーから鼻血が垂れる。
「エリートも!」
「それに群がるハエも、み〜んな!」
激情と共に、独楽の紐をムチにしてルシファーを滅多打ちにする。
「こんな哀れな顔をすればいいんだっ!」
再び取り出した手毬を強引に押し付けられ……
ルシファーは一方的に、爆炎に飲まれるのだった。
雨のように振り注ぐ、ステンドグラスの欠片と共に――。




