第46話「21限目 : コクハク、そして体育祭へ」
二人の周りを、絶妙な空気が満たしてゆく。
「ゲ、ゲート君も……?奇遇だね~……」
「あ、ああ。そうみたいだな……」
俺はゲート。マナとの関係に白黒つけようとしている、男子高校生だ。
「マ、マナ……。ここは人目につくし、庭園の方に行こう」
そう言って、俺は冷や汗を流しながら旅館の奥を指差した。
少々思ってた展開と違うが、進めるしかない。
「う、うん!行こ行こ!」
こうして、俺とマナはカクつきつつ庭園へ向かうのだった。
※ ※ ※
<シノクレ温泉 庭園にて――>
ダリアが一面に咲き続く、広大な花風景。人はそれなりにいるが、広いおかげで気にならなかった。
「この辺でいいか。」
俺達は色鮮やかな丘の上で歩みを止めた。
「……なんか、緊張するな」
マナと正面で向き合うのを、なんとなくためらってしまう。
「……」
マナは答えない。彼女も同じ気持ちなのだろうか。
「じゃ、じゃあ俺から――」
「ゲート君」
気まずい雰囲気をかき消そうとしたが、向こうが切りだしてきた。
「私ね……最初は君の事、好奇心で接してたの。」
「でも、アイさんから聞いたテロ事件の真相……弱いところを隠してカッコつけてるところ……人のために怒れるゲート君と過ごすうちに、自分の気持ちが分からなくなっちゃった」
マナが静かに、自分の胸を掴む。
(マナ……)
俺は言葉をグッと飲み込みながら、彼女の話を聞いていた。
「でもね、やっとわかったの。この気持ちが。」
そう言うと、彼女が顔上げた。
「出会ってたったの一か月だったけど……君のことが――!」
風が、急に止んだ気がした。
そして、俺はその意味を理解する……。
目に映ったマナ・ランドフェイトの、今まで見たことのない満面の笑みを――。
「好き……!!」
――その言葉と同時に、花びらが2人の間に舞った。
俺も、やっと分かった……。
「……好きって言ってくれてありがとう、マナ」
――胸のあたりが、熱くなる。
「俺は……」
呼吸を整え、口を開く。
「……ソウジ。」
「ツグモ・ソウジ、俺の本名だ。」
これが俺の返事……少し違う気もするが。
花びらが一枚、地面に落ちる。
「ソウジ……」
マナが一歩、前に進む。
「うおっ!?」
その瞬間、俺はダリアの絨毯に押し倒された。
「ソウジっ……!ありがとね、ソウジっ……!!」
反逆の道を進み始めてから、幼馴染以外に呼ばれるはずのなかった名前。
それをマナが、こんなにも嬉しそうに呼ぶ。
……あと、これもちゃんと彼女には伝えなきゃな。
「お付き合いさせてください、マナ。」
これは俺が、そしてマナが初めて抱いた淡い恋心。
「うん!よろしくね、ソウジ……!」
月が昇り、電車に乗る頃には、最初のぎこちなさなんて嘘みたいに消えていた。
疲れて眠る、マナの頭を肩に乗せながら、山吹色のWデートは終わりを迎えるのだった――。
※ ※ ※
<帝暦2030年 10月4日 5時30分 王都総合学園 下宿先にて―― >
「この人たらし……!!」
寝起きの体に、オールレンジ攻撃が襲い掛かる!
「ちょっと待ってくれー!ルシファー!」
早朝の戦闘訓練。毎日の日課なのだが、昨日の件が原因で、今日はちょっと面倒なことになっている。
「私の傍にいるんじゃなかったのですか?よくもまあ彼女なんか……」
ヤバイッ、目が笑ってない……!
「わかった!言い訳しないから、このビームの雨を止めて!」
そんな光景を面白そうに眺める、メビウスとソニア。
「最年少大司教の天才に、あそこまで対応するとは。」
「人を大切にするというところは、お兄ちゃんのいいところで、ダメなところなんですね……」
その後、その二人の助けもあり、事態はなんとか収まった。
これに関しては身から出た錆だな……トホホ。
「話が変わるけど、最近の訓練から、あなたの戦闘スタイルが分かったの。」
ヘトヘトの俺に、思いがけない話が飛んできた。
「戦闘スタイル……?特に強みなんかないだろ、俺。」
しかし、ルシファーは首を横に振る。
「強みはあるわ。何も特化していないって強みが。」
そして顔を近づけ、クスッと笑う。
「明日のの体育祭でそれを自覚するでしょう。」
……なんか複雑だな。
<同時刻 カテナ教会 御堂にて――>
「明日行われる、王都総合学園・体育祭……。見に行くのか、“追葬”?」
大男が訝し気に聞く。
追葬と呼ばれた人物は、黒い仮面越しに笑う。
「ついでだ。相棒の試し乗り、そのついでに。」
その背後には、黒と銀のフォーミュラカーが反応するように排気音を轟かせていた――。




