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第44話「19限目 : こころ 彩りし 日に」


<帝暦2030年 10月3日 9時55分 アルトリア電鉄 電車内にて――>


「マナちゃん、その服すっごく似合ってるよー!!ねえねえ、どこで買ったの?」


エルシア会長がマナのコートを見て目を輝かせる。


「ReAで買ったんです。コーラルカラーに惹かれちゃいまして……!会長のコーデも、大人っぽい雰囲気が出てて見惚れちゃいます!!」


ブルーのフレアシャツワンピースにホワイトのブルゾン。流石会長といったところか。


「フフフ、ありがとう。」


……女子の会話を隣で聞きながら、男達はお互い窓を見てボーッとしている。


王都を離れ、青空をバックにそびえる山吹と唐紅の山々が、心を紛らわしてくれた。


「ゲート君。僕たちもお互いの服を……」


「語ることねーだろ!!てか、どうしたらこんな完全一致が起こるんだよ?!」


「偶然って怖いね。」

メビウスが凛々しい顔で横を向く。


……え、何その顔。マジで偶然なの?!


ク〜ッ!やっぱ俺達二人に、ファッションを語るなんてことはできなかったか……!


「みんな、もうすぐ着くよ~」

幸い、変な空気は会長の一言で空の彼方に吹き飛んだ。


『……次は~シノクレ山~シノクレ山~』


アナウンスとともに、多くの乗客が腰を上げる。

窓越しに映るクレハマ駅は、いかにも観光地といった雰囲気だ。


「すごい……。」


車両が止まり、扉が開いた瞬間……


「ほらゲート君、行こっ!」


――マナが俺の手を引いて改札まで連れて行った。


「へ?!」


思わず情けない音が漏れる。


「どうしたのゲート君、豆鉄砲でも食らっちゃった?」


彼女がニヤニヤしながらスキップを始める。


俺もつられてリズムをとる。


「マナさん、ゲート君ー!こっちこっちー!」


「置いていっちゃうよ~?!」


改札の向こう側で、メビウスと会長がニヤニヤしながら手を振っている。


「デートスタートだよ、ゲート君!」


  ※        ※        ※



<11時58分 シノクレ山 山頂にて――>


「おお!スッゲー!!」


麓の駅から2時間弱。そんな辛さも、自然の壮大さに比べれば小さなものだ。


シノクレ山。ここは、10月になると紅葉のトンネルを作ることで有名な場所だ。


「500年前に、東国から貰った苗木が起源らしいね。」

いつの間にか持っていたパンフレットを片手にメビウスが上を向く。


「へえー……。」

唐紅と山吹色の天井に、空色の模様が描かれているかのような絶景。


「きれいね~。」


「ですよね~。みんなで来れてよかったです!」

会長もマナもすっかり魅入っている。


「折角だし、記念写真撮ろうよ!」

マナがはしゃぎながらスマホを取り出す。


「ふふっ、弟くんと記念撮影なんて久しぶり!」

「記念にはもってこいだもんね、この場所は!」


マナが撮影をお願いした、通りすがりのハイカーが笑顔で呼びかける。


「3,2,1!」


パシャリ


もう一枚……


「ありがとうございました!」


礼を言い、四人で写真を覗き込む。


「げっ……」

俺は写真写りの悪さに驚愕する。


なんて覇気のない顔だ……。他が輝くような笑顔の分、余計際立つ。


「ま、まあ面白い思い出になるし、いいんじゃない?」 


メビウスが肩をポンと叩く。


「やめろ!慰めは時に凶器になるんだよ!」

ったく……。


「練習、しようかな……。」


昼下がり、俺はポツリと呟いた――


その時だ。


「ねえ、ゲート君。」

マナが突然、俺の体を引き寄せた。


「練習しよっ。ほら、もっと寄って!」



へ、練習?!いきなりどうした……?!


「うお?!ちょ……マ――」


ま、まだ心の準備が……!!


パシャリ


「――!!」 


は、初めてのツーショット……!

いやこれは初ーショット……!?


「どれどれ……?」

硬直している俺をよそに、マナが確認する。だがその直後、彼女の顔が真っ赤になった。


「~~~!!!」


あまりの慌てように、流石の俺も戦慄する。


「どうしたんだ?まさかまた……!?」

近づいて画面を覗き込もうとする。


「だ、だめっ!!」

だがマナはスマホを隠し、そそくさと離れていった。


……涼しい風が、木の葉を運ぶ。


「……やっぱり、変だよ私。」


そっぽを向きながら、そう小声で小さく呟く。


それに呼応するように、隠したスマホの画面が開く。


そこに映っていたのは――



――紅葉に負けないくらい顔を赤くした、青春の一枚だった。


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