第39話「14限目 : 姉弟氷上決戦――エモーショナル・カンデライト〈絶望〉」
――場面が変わり、今度はぬいぐるみが沢山置いてある部屋になった。
心から感じる懐かしさ……
(ここは……姉様の部屋か)
僕が認識した、その瞬間。
姉様の悲痛な声が、部屋中に響き渡った……!
「ちょっと……!?やめてっ――キャッ!」
布が破かれる音とともに、黒い球体を持ち馬乗りになっている男が、月夜に照らされる……!
「テメェは俺のお姉ちゃんになるんだよ……大人しくして、ろっ!」
意地汚い声。ブリッツはこんなことを……!?
「やめろ…やめろブリッツ!!!」
僕は姉様から引き離そうとブリッツに殴りかかる!
しかしその拳は、僕の無力さを表すかのように、空を切った。
「クソォォォッ!!」
姉様の身体に、黒い球体が埋め込まれていく……!
「い”っ……いやぁぁぁ!!誰かっ、誰か
……!メビウスッ……助けてっっ!!」
僕は歯を食いしばる……。恐怖に支配されたような声を、僕はただ聞くことしかできないのだから……!
「お願いっ……!メビウス……!」
――その時……姉様の瞳が、僕を見た。
いや、これはただの記憶……偶然だ。
でも……!
「姉様ァァッ!!」
僕は必死に、必死に抗おうともがく。
「クソッ!なんで……なんで……ッ!!」
でも、どうしてもこの障壁を破ることができないっ……!!
「ごめん……ごめんなさい、姉様っ……!」
歯痒さと罪悪感がこの言葉を吐き出させた。
こんなに近くにいるのに……!!
――やがて、姉様の悲鳴が消えた。そして、いつもの姉様の調子で口を開いた。
「……あれ、どうしたのブリッツ?お姉ちゃん、寝言でも言ってた?」
さっきまでの事が嘘かのように、姉様とブリッツが仲睦まじくベッドに横たわる。
そして……2人の唇が近づいていく……!
「……止めろ!止めてくれ……!」
僕は目を逸らそうとする。
しかし、
無数の黒い手がその行為を押さえつける。
「嫌だっ!見たくないっ!!お願いだ、止めてくれ!!!あ、あ……!!姉様あああッッ!!!」
僕は初めて、こんなにも情けない懇願をした。
でも……誰も聞いてはくれなかった……。
※ ※ ※
目の前で起こったこと。
それは僕の膝の力を奪い、その場に蹲らせた。
「人の悪意……姉様の顔。もう、見たくない……こんなこと……ッ!もう……どうでもい――」
そう言って諦めた時――
「ぐはッ――!?」
僕は何者かに蹴り飛ばされてしまった――。




