第38話「13限目 : 姉弟氷上決戦――エモーショナル・カンデライト〈真相〉」
溢れた涙が地面に落ち、波紋を描く。それを中心に、空間が再び塗り替わってゆく――。
次に視界に入ったものは、少し幼げなブリッツが玉座の間で青髪の女性に謁見しているところだった。
(アイツは……!)
その女性は、僕がこの世で最も嫌悪する存在……!
「ブリッツ・レオニウス」
絶対的な美貌と、恐ろしいほどのカリスマ性を秘めた美声。
反抗する心すら砕かれ、自ずと頭を垂れてしまうような圧倒的な支配感に、全てが凍りつくような感覚を襲われた。
(やはりブリッツは以前からつながっていたのか……!?)
僕はブリッツに近づこうとする。
しかし……
「ぐっ……!な、なんだこれは……!」
見えない壁が、僕の干渉を妨害した……!
「……まさか」
僕は続けて大声で叫ぶ!
「答えろ皇帝!僕だっ!メビウスだ!お前の息子だぁ!!」
しかし、彼女から帰ってくる音は無かった……。
僕は確信する。
(これは別人の記憶……!)
誰の記憶なのかは、この際どうでもいい。
やることは一つ、姉様の真実を知ることだ。
僕が静かに凝視していると、皇帝がドス黒い球体を取り出した。
輝きもしない、虚ろな球。しかし、破壊しなければと僕の身体が警告する。
「エルシアにこれを埋め込みなさい。出来損ないのメビウスに代わって、あなたが弟となるのよ」
皇帝の心に染み渡るような悍ましい声が、響き渡る。
……僕の肺が凍りつくようなプレッシャーと共に。
「クックッ……仰せのままに、陛下」
ブリッツが意地の悪い笑みを浮かべ、頭を垂れた。
あのような顔を浮かべる人間を、僕は彼以外に見たことがない。
再び、空間がゆがみだした。
「……ッ!まさか……!」
――今だから言える。僕はこれから起こる事を、知るべきではなかったと。




