第28話「3限目 : クラス分け――孤立の反逆者、ゲート」
冷たい夜風が、頬を突き刺す。
「ゲート……アンタが今聞きたいのは、黒薔薇の剣の特殊能力とそこに潜む”彼ら”のこと、そして私が何でその剣を持っていたのか……で良いかしら?」
アイが落ち着いたトーンで話し始めた。
流石と言うべきか、不気味と言うべきか……。心の中を見透かされたことに、少々動揺してしまった。
「お、おう。話が早くて助かるよ」
「礼には及ばないわ。まず、黒薔薇の剣の特殊能力についてだけれど、それは”花言葉”よ」
大層なものが出るかと思いきや、予想外の回答。
「は、花言葉?なんか、すげーメルヘンだな」
アイが俺の肘を強〜〜くつねる。
「いいから聞きなさい。黒薔薇の花言葉には、憎しみ・恨み……復讐っていうのがあるの。それらにまつわる力が扱えるそうよ」
「イタタタタタ!ごめんごめん!」
冷静になって、アイの言葉を反芻する。
「憎しみ……か」
背筋がゾクッとした。
「で、その引き出し方はどうするんだ?まさか、”彼ら”に聞けとか言うんじゃないだろうな……?」
恐る恐る聞く。今知りたいんだよ、肝心なところは。
「――そのまさかよ」
フラグ回収……。
だがそんな俺の心の声は届くことも無く、アイは話を続けた。
「剣に宿る”彼ら”は、恐らく先代の使い手達の意識のようなものよ。”魂”と言った方が、分かりやすいかしら?」
一瞬、俺の頭が混乱する。何せ、とんでもない話が出てきたことに驚いてしまったからだ。
「けど、面白いな。こういう展開を待ってたんだ、俺は……!!」
未だ燻り続ける中二病が、アツくなってきた……!
調子を良くした俺は、アイの答えを嬉々として待っていた。
「それは良かったわね。残る疑問は何で持ってたのかだけど……」
すると、クールフェイスだったアイが目を逸らして、バツの悪そうな顔をした……!
(おい、なんか怪しいぞ……?)
なんか罰当たりなことでもしたんだろうと思っていたが、アイの口から出たのはその斜め上を行くものだった……!
「お、王宮から盗んで来たのよ……」
へ……?は……!?
「お、王宮……?!もう、スケールがデカ過ぎて言葉が……」
俺はちょっと呆れたような声を出してしまった。
アイは相変わらずバツの悪さで顔を赤くしている。
(恥ずかしいなら、ごまかせよ……)
……本当の事を言えば、アイは皇帝と繋がりがあるんじゃないかって聞こうと思ったけど。今口に出すことじゃない。
「……教えてくれて、ありがとな」
何気なくお礼を言った途端、アイは何故かトイレに駆け込んでいった……。
凄くカンが良いなと思ったら、子供じみた挙動をするし……
(……やっぱ掴めねェな、アイツのこと)
まあ、少しずつ彼女のことを知っていけばいい……
と、時計を見たとき。
時計は夜の1時を回っていた。
「なっ、もうこんな時間!?」
早く寝なければ!
朝からクラス発表があるんだよ!
「アイ〜〜!早く寝るぞ!寝坊したら知らないからな!!」
俺はアイに呼びかける。
「そ、そんなこと分かってるわよ……!ほっといてよ!!」
アイが大声でトイレから返事をする。なんかキレてる。
「お、おう……じゃあ、おやすみ」
そっとしておこう……と踵を返した時、アイがボソッと呟いた――。
「……気遣ってくれて、ありがと」
※ ※ ※
〈帝暦2030年 9月2日 9時00分 王都総合学園 広間にて〉
「おいおい……嘘だろ?」
広間に掲示されたクラス表。Aクラスから慎重に見ていく。
――そして、俺の名前を見つけた時、思わず声を上げてしまった。
「アイ達が、全員別クラスだと……!?」
俺はB クラス。ルシファーはCクラス、そして、アイとメビウスがAクラスに配属された。ソニアは他学年……そう、俺はぼっちとなってしまったのだ……!
「ド、ドンマイね……。まあ……お昼休みにでも会いましょ」
アイが肩をポンと叩いた。
その気遣いが、傷を更に抉っていることも知らないで。
ブリッツですらA クラス。本当に知らない人間ばかり。誰しも最初は緊張、不安で一杯になることもあるだろう。
……だが、今回は別だ。
〈王都総合学園 高等部1―B教室にて――〉
新学期とは思えないような重いざわめきが、教室を覆い尽くす。
「おい、あの首輪してる奴って確か……」
「反逆者ゲート……国家転覆を狙った極悪人だろ……?なんでこのクラスに……!?」
「顔は悪くないかも……」
「バカっ!やめときなさい!」
「関わっちゃ、怖い……」
「ルシファー様が更生させたっていうけど、ホントかな?」
(こいつらは何も知らないんだ……)
せっかくのホームルームも憂鬱。自己紹介しても拍手は無いだろうと思っていた。
――その時までは。
たった一人だけ、拍手してくれた人がいた。
「ゲートくんって言うんだ、よろしくね!!」
快活な声が、俺の名前を呼んだ。
俺の隣の席に座る、ピンク髪の少女。
――前に言った、2つの出会い。1つはブリッツ、2つ目は彼女。




