第24話「夏休み : 突然の連続――怒りのメビウス」
〈帝暦2030年 8月27日 アルトリア帝国 辺境の村にて――〉
俺はゲート。反逆の旅をしつつ鍛錬に励んでいる――まあ、中二病反逆者だ。
あの”ホーリーナイトメア”事件――もとい騒動から1カ月半の月日が経った。俺達は現在、ルシファーの実家ナイトメア家の息のかかった村に、身を寄せている。ルシファーの指導の下、鍛錬をして何故か中学校の内容をアイと仲良く勉強した。
「ルシファーって教えるの上手いな。流石だな!」
すると、ルシファーが距離を詰めてくる。
「ええ!ソウジが知りたいこと、何だって分かりやすく教えてあげるから♡何が聞きたい……?」
「ここの因数分解ってどうするの?」
「それはね……」
彼女はアイにも丁寧に教えていたが、喧嘩しそうな空気になったり……
「ちょっと……!何処行くのよ、ゲート?」
「逃さないわよ……ソウジ」
……逃げようとすると、険悪なムードが嘘かのようなコンビネーションで取り押さえられたりする。
(怖い……怖すぎる!!)
ただ、ルシファーは恋慕の大司教。俺達反逆チームに加わってくれたのは大きな変化だ。おかげで、いくつか明らかになったことがある。
※ ※ ※
〈回想〉
「――ルシファー、カテナ教会ってそもそもどんな組織なんだ?今のところ、皇帝に近づくために戦ってるだけだから、何かフワッとしてて……」
俺の質問に、ルシファーは此処ぞとばかりに答える。
「カテナ教会は、アルトリア帝国の国教で『縛られる事が幸せに繋がる』を理念としている組織。その幹部の大司教は、支配した世界中の地域から実力主義の原則に則って候補者を選別して、さらにその中から特に優れた人を改造して生まれる皇帝の武器の役目を果たすの」
(何だ、特殊プレイか……?)
「「変なこと考えてるわね?」」
俺の思考を読んだかのような鋭い視線。アイ、ルシファー……2人とも怖いよ。
「ですが……『束縛』は『不自由』ってことですよね?それが幸せな事だとは、あんまり思えませんけど……」
ソニアが不安そうな顔をする。
「ソニアちゃん、僕はカテナ教会のやっている事を納得なんて断じてしないけれど……理念そのものは、ある程度理解できる」
メビウスが補足する。
「突然、遊ぶ、仕事を休む、犯罪……何をやってもいいですよって言われたら、皆の自由がぶつかって弱い人達が淘汰される地獄絵図になるかもしれない。だから、社会には法律というものがあるみたいに、ある程度ルールに沿わせることで幸せを保つ……。極端に言えば、こんな感じかな。その部分に惹かれる人が多いわけだ」
険しい顔をしながら、メビウスが溜息をついた。
「なるほど……」
ソニアは彼の説明に、ある程度納得したようだった。
「でも、真の目的は別でしょ、ルシファー?」
アイが冷たい視線で問いかけた。まだ完全に信用し切っていない目だ。
「ええ、そうよ。真の目的は……」
―――ルシファーから表情が消える。
「”皇帝の支配する世界の維持”よ」
アイは「やっぱりね……」とため息をついた。
「全部、皇帝の駒に過ぎないってか……?」
俺は怒りが込み上げる。分かってはいた。あんな非道なことをする連中だ。でも――!
「……大司教は、皇帝に直接謁見とかできるのか?」
俺はルシファーに震える声で質問する。
「いいえ、基本的に直接は不可能よ。代わりに伝達係が出向くといったところね。ただ、大司教は全員同列の扱いだけれど、追葬の大司教や博識の大司教はそうでもないって事くらい。私は6年だからまだそこまでは……」
皆が落胆している中、メビウスだけは様子が違った。
まるで、長年探し求めていた答えを見つけたかのように、目を見開いていた……。
「いや……嘘だ……ッ!思い込みだ……!」
「おい、メビウス!?」
明らかに異常だ。彼は震えながら、か細く呟く。
「ルシファー……、まさか、その伝達係って……!?」
ルシファーは、ゆっくりと頷く。
「……!!!嘘だ……嘘だ……嘘だァァァ!!」
それを見たメビウスは、今まで見せたことのないような動揺と共に、自分の部屋に飛び込んでいった……。
重苦しい空気の中、ルシファーが切り出した。
「……今日はお開きにしましょう。私はメビウスのところへ行ってくるわ」
そう言って、彼女は居間を飛び出していった――。
「彼には、先に伝えておくことがあるから……」
※ ※ ※
〈現在―― 8月27日 11時12分 〉
「皆さんに、お話があります」
昼頃、ルシファーは俺達を居間に集めた。メビウスはあのとき以来、何かに取り憑かれたかのように剣技を磨いていた。それと関係があるのだろうか?
「まず、結論から言います」
ルシファーが話し始めると、皆が静かになる。
「私達5人は9月より、『王都総合学園』に入学します!」
困惑と驚きで、空気が凍りつく。
「へあ?」
「うそ」 「……」 「学校……」
「「「学校だって〜〜?!!」」」
い、いきなり突拍子も無いことを……いや、待てよ?
「中学の勉強はこの為にやったのか!」
メビウスは、あらかじめ知っていたようだ。表情を変えない。
ルシファーは続ける。
「理由は簡単、皇帝の出身校だからです。校長や教頭など、あらゆる教員が大司教に次ぐ権力の持ち主。私が言いたいこと、分かるわよねソウジ……?」
……試すような視線だ。
「そこで優秀な生徒になれば、皇帝と接触できるかもしれないしな!」
「流石ねソウジ、私の妹もそこにいる。そして、メビウスにとってはもっと大事なことがあるの」
そう言って、ルシファーは彼の方を見る。
その途端、周囲の空気が一変する――!
「現在の学園の生徒会長は、僕の姉だ……ッ!」




