表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結の黒薔薇―世界を塗り替えよ、氷の少女と共に―  作者: 香辛凌
第3章『ホーリーナイトメア』
28/48

第23話「デイブレイク」



――ああ、やっと断ち切ることができたんだ……。

(あれ……?視界が……白く……?)

ルシファーの笑顔を見て緊張が緩んでしまったのか、

俺は彼女にもたれかかるように倒れた――。


   ※       ※       ※


…ここはどこだろう?


海…?俺、沈んでるのか…暗い海の底へ…。

どす黒い腕が、俺をさらに沈めようと掴みかかる―。


これが、”死”ってやつなのか…?


(約束…また破っちまう…。またルシファーの顔を、曇らせちまう…!)


俺は腕に引きずり込まれながら、必死に抵抗する。

だが…


力が…抜けていく――。

(抗わない…と…。また…みんなに…あ…わ――)

身体が冷たくなっていく――。


その時


『―ソウジ!』

海面から声が届く。

優しい声。

そして…『ゲート…!』

『ゲート君!』『お兄ちゃん!』

『兄様!』『ソウジくん!』


色んな声…ああ…!

「皆ぁ…!」

俺は振り絞るように右手を上に掲げる。

それに呼応するかのように…赤黒い茨が右手に巻き付く。

茨は黒い腕をはじき飛ばしながら、俺をそのまま引き上げる。海面に顔を出すと…。

8…9人?くらいの人影がいた…。

そのうちの一人の手には、黒薔薇の剣が握られていた…。


「抗え少年…我々は見ているぞ――」


※※


〈午前6時30分 ナイトメア邸 庭園にて―〉


「――ジ、ソウジ!」


「ハッ!!」


目が覚めると、俺はルシファーの顔を見上げていた。

「よかったぁ…!また約束を破るんじゃないかって心配したんだから…!」

ルシファーは大きなため息をついた。

腰を上げると、庭園にはソニア、ミハイル、ツバサさん、ジェームズさん、メビウス…レイス夫人、そして…


「バカっ!!」


冷たいビンタをかますアイの姿。

その顔は…怒っているようで、泣いていた。

「ゲート…」

アイが震えるように声を出す。

その声は怒りだけではなく、心配も籠もっていた。

彼女が飛びかかった…!


「ちょっ…!」

俺が目を瞑る―。

しかし、感じたのは痛みではなく、温もりだった。


「アンタはまだ…!死んじゃダメよ…!」


――アイの抱擁が、俺の緊張を溶かした。

皆に迷惑かけちまったな…。


「皆、ごめんな。」

俺は皆に謝る。

すると、ルシファーが立ち上がった。

「…皆様、この度は誠に申し訳ございませんでした。」

「愛に執着した醜さ。もはや、ナイトメア家の門をくぐることすら許されないでしょう。」

ルシファーは、深々と謝罪する。

「いや、それは俺のせい――」

俺の言葉を、ジェームズさんが遮る。


「顔を上げなさい、ルーシー。」

ジェームズさんの声は穏やかだ。

「ルーシー…。」

レイス夫人がルシファーの手を取る。

「確かに…あなたのやった事は重いけれど、どんな事があってもあなたは私達の愛する娘よ。」


ルシファーから涙が流れる…。


「お父様…お母様…私…っ!」

俺は自分を捨てた両親の事を考えながら、そんな親子の絆を眺めていた。


「…これが、家族愛ってやつか。」

メビウスは隣に来る。

「彼女の罪、君も背負うだろ?もう恋慕が暴走することもないはずだ。ちゃんとしなよ、相棒?」


昇り始めた太陽が、悪夢からの解放を祝福しているようだった…。


  ※        ※        ※


その後――


俺とルシファーが主体となって、ナイトメア邸の再建、執事オズマの葬儀などを行った。

この出来事は”ホーリーナイトメア”として、世間に公表される…筈だった。


「……やっぱりこの世界は歪んでいるわね。」

アイが呆れる。

「一族の過ちってことで明るみには出ない…か。まあ身内で起こった出来事、犠牲者一人、首謀者がカテナ教会の大司教…公表したらやぶ蛇かもな。」

俺達はこの悪夢を経て、新たなステージに進み始めた。


〈2日後――午前9時16分 ナイトメア邸 正門にて〉


「お元気で!」

俺達は別れの挨拶をする。


「また、会えるといいわね。」

見送りに来てくれたのは、レイス夫人だけだった。

まあ…他の皆は、色々と忙しそうだったからな。


「私もあなた達に協力します。」


俺達が屋敷を去り、歩いている最中、ルシファーが口を開く。


「私とソウジが最後まで傍にいると約束した以上、私の罪を償うためにも…!」


彼女はそう言って皆を見つめる。

「ルシファー…。」

そこへ、アイが口を挟む。

「…でもあなたって、大司教でしょ?反逆に加担するとでも言うのかしら?」


確かに…

「どうなんだ、ルシファー?」

俺の問いに、彼女は眉一つ動かさず答える。

「私にとって…ソウジとの約束は何よりも最優先。だから、あなた達が知りたいことも、包み隠さず教えるわ。」

「確かに…。大司教が仲間になれば、僕たちの反逆は大きく進むね。」

メビウスが同意する。


「……そうね。」

アイも渋々頷いた。

そして、ルシファーの手を取り微笑む。

「よろしくね、ルシファーちゃん!」


…ん? 目が笑ってないぞ…。

「…言っとくけど、ゲートの相棒はこの私だから。」


…おいおい、早々喧嘩とか止めてくれよ…?!


「相棒は僕だけど?」

「メビウスーー!口を挟むな〜〜!!」


そんな何処か間の抜けた雰囲気の中、ソニアはたった一人険しい顔をしていた……。

「あの…ルナちゃんのこと、誰も触れていませんでしたが…。」

その問いに、ルシファーの表情が強張る。

「…ソウジ、あなたの推理に

一つだけ付け加えておきましょう。」


「……何だよ?」


「ルナ・レイス・ナイトメアは、死んでなどいない。」


その言葉は、あらたな悪夢の始まりを意味していた――。


   ※      ※       ※


〈同時刻 王都ワルキュリー 会議室にて―〉


まるで学校の校長室のような落ち着いた雰囲気の部屋に、片眼鏡を掛けた中年の男が手紙を見て笑う。掴みどころのないその姿は、まるでピエロのようだ。


「了解しましたよ、恋慕の大司教殿…犬4匹と共に、あなたの入学を許可しよう。クククク…!」


次回より、青春という名の地獄が、幕を開ける――!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ