表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結の黒薔薇―世界を塗り替えよ、氷の少女と共に―  作者: 香辛凌
第3章『ホーリーナイトメア』
27/48

第22話「贖罪」


〈午前2時10分 ナイトメア邸2階 子供部屋にて―〉


 「俺は…さ、最後の最後まで自分で思い出すことができなかった…!」

俺は血を吐きながら本音をぶつける。

それを聞いたルシファーの手が、首をさらに強く絞める。

「これ以上私を弄ぶというの…?!」

そして俺を思い切り投げ飛ばす。

「グハッ……!ゴホッ、ゴホッ…!」

満身創痍の俺の姿は、とても美しいとは言えなかった。

正に彼女の心を弄んだ、俺の悪意の化身…とでも言うべきだろうか。

「醜い姿ね…。私が愛したソウジは…もういない。」

ルシファーは諦めたかのように、ビット兵器を飛ばす。

ビームを撃たれながら…血を流しながら…俺は理解した。

世界の悪意だけじゃない…。人は無意識の悪意を撒き散らしているのだと。


だったら尚更…俺は抗わなきゃならない…!!


「…ル…シ…ファァァァ!!」


 俺はルシファーのところへ…つまりビームの雨の向こう側に、剣で払うこともなく、避ける事もせず、一歩…もう一歩と進んでいく。

焼けるような痛みで意識が保てる。


出血なんて…どうでもいい――!!


「お前は…俺が憎いよな…?」

俺はルシファーに問いかける。

彼女の瞳が、僅かに揺れる。

「憎いわよ…!それが…」


「遺言かしら!?」


彼女の叫びと共に、シュバリエッタが襲いかかる。

鋭い槍が突き刺さる…筈だった。


 シュバリエッタが動きを止めた――。

俺が右腕で奴の槍を掴み、力を込めていたからだ。

やがて右腕に赤黒く、刺々しいオーラが絡みつく…。


「失せろ…!」


それと同時、奴の槍が粉々に砕けた――!

「信じられない…!あの身体で…?!」

ルシファーは驚愕する。

この力は…覚悟…?それとも火事場の馬鹿力ってやつなのか…?

「何でもいい…。」

そうだ…そんなことはどうでもいい!!

「俺は…歪んだ世界の悪意に反逆した。だが…今抗い、断ち切るべき悪意は、俺の中にあった…。」

俺はゆっくりと、しかし確実にルシファーに近づいていく…。

その姿に、ルシファーは動揺していく…。

「…何の…話をしているの…?!もう……終わりでいいでしょ…?!」


「…ゴフッ…!いいや…終わらせねェ…!」

俺は遂にルシファーの目の前に辿り着く。


そして……


「…えっ――?」


 俺は…ルシファーを抱き締めた。

彼女の服が、血で汚れる。

「ソウジ…!?は、離しなさい…!!」

ルシファーは血塗れの腕を振りほどこうとする…。

しかし、何故かそれを振りほどくことができない。

「ルシファー…。」

俺は彼女の頭を、胸に抱き寄せる。

彼女は困惑する。何故急にこんなことを始めたのだろうと。

「ルシファー…。俺は4年前、世界の悪意で両親を失った…らしい。でも俺自身の悪意で……大切な人を失いたくない…!」


「おこがましいのは承知の上だ。俺のことを愛してくれた人の心を…ゴホッ…憎しみに染めてしまった。お前は約束を守ろうとしたのに…。だから憎んで当然だ…。」 


「今更…嫌よ…嫌!」


そんなルシファーの言葉とは裏腹に、彼女の腕は、振りほどく素振りを見せなかった――。


 俺の血が止まってゆく…。まるで、流す血が枯渇してしまったかのように…。

それでも、話すのを止めない。


「だから…殺してくれても構わない。それで憎しみが晴れるなら…。」


「ゴフッ…お前が大人になって……!家族ができて……!年を取って…息を引き取るときも…俺は隣に居続ける…!」


「お願い…ルシファー。もう一度だけ、約束を聞いてほしい…!」


そして…最後の力を振り絞り、ルシファーに伝える―。



「もし憎しみ以外の感情が残っているのなら…これからずっと…お前の傍に、いさせてください……!」


 ルシファーは何も答えなかった。ただ、俺の胸に涙をこぼし続けた。


それは血のように赤くない、透き通るような涙だった。


 ――やがて、ルシファーが震えながら、口を開く。


「ズルいよ…。」


 彼女が顔を上げた。

そしてその顔は…闇が晴れたかのように美しかった。

「もう次はないからね…?」


涙が、彼女を照らす――。


「――約束だよ…ソウジ…!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ