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第19話「推理ロジック / 悪夢は終わらない」


 「ねえソウジ、どうして私に辿り着けたのかしら?」


 2基の小型兵装から発射されるビームで攻撃を仕掛けながら、ルシファーは余裕の表情で問いかけた。


「避けながらそんな……ッ、無茶振りが過ぎるな!」

俺は黒薔薇の剣でビームを弾きつつ、被弾を抑える。


「ソウジならいけるでしょ?……あの約束をしたんですもの」


確かに、耐久戦に向けたテクニックは4年間でモノにした。ホテルでの戦闘、大司教イグトラ戦で命のやり取りは掴んだが……!


ルシファーの声のトーンが、一段低くなった。

「…できないとか言ったら、許さないから」

その顔は、今まで見てきた彼女の表情ではない、怒りを含んだものだった。


マズいな……


それを見て、俺はいなしながら口も同時に動かす。


 「……まず不審に思ったのは、浄化の儀開始直後に起きた殺人だ。被害を受けた2人はいずれも何かで急所を撃ち抜かれてた……グッ……!」

足に焼けるような痛みが奔る。太腿を掠っただけで爛れてしまう程の威力、当たらなければどうと……なんて余裕は無い!

「は……ッ、初めは銃だと思った。だが、死体から火薬の匂いではなく、肉の焼けたような匂いがしていた。だからビーム攻撃なんじゃないかって推察した!」


その説明にルシファーは表情を緩め、攻撃の手を止める。

「へえ……想像力と五感が優秀ね。じゃあ、オールレンジ攻撃って分かった理由は?」

俺は呼吸を整えながら、壁にもたれてゆっくり答える。

「そこは8割くらいの想像と、2割の情報で出した答えだ。まずミハイルの証言から、どうやって同時に多方向からビームで殺害できたのかを考えた。俺が悲鳴の後すぐに駆けつけたのに、子供部屋には重火器どころか、何者かに侵入された形跡すら無かった」


 俺は一瞬、視線を横にした。攻撃の手を止めている間も、ルシファーの子機は俺に照準を合わせている。

まるで脅し付きの尋問だぜ……。

「だから犯行は、ほぼ確実にマギアによるものだって判断した」

俺はルシファーを見る。取り敢えず、向き合わなければならないと思ったからだ。

 「最初はお前に協力する裏切り者の存在も考えた。だが、それだと俺達以外……ナイトメア家の人間では不可能だ。なぜならルシファー、お前がこの一族の特異点と家族が言っていたのを知っていたからだ」



「確かにそうね。でも、今までの説明だとソウジのお仲間さん……特にメビウスくんが怪しいと言ってるように聞こえるけど?」


説明の途中、ルシファーが口を挟む。


「メビウスの能力……光の力なら確かにあり得る。だが、ミハイルが聞いた銃撃音の証言。家族を愛していた、そして誰よりもルナを愛していた、アイツの言葉なら信用できる。わざわざミハイルだけ殺さなかったのも、手がかりを残すためだってことなんだろ?」


俺は毅然として反論する。


「だから、メビウスを容疑者にすることはできない」


俺は一息ついて、話を戻す。

「なぜオールレンジ攻撃だと気づいたか、だったな……。決定的な答えは、あのメビウスの証言だ」


その言葉に、ルシファーは眉間にしわを寄せた。


 俺は続ける。

 「メビウス達Cチームも襲撃にあった。攻撃方法は……やはりビームだったが、どうしてもそれを射っている人影が見えなかったそうだ。おかしいと思わないか?」


自分でも驚くくらい、スラスラと言葉が出てくる。

心地良いくらいに。



「ルシファー、お前は俺に見つけてほしいと言っている。だから完全犯罪じみたことをする事は無い。メビウスの話を聞いたとき、俺は予想した。」

俺は人差し指を立てる。

「透明化……見つけさせる気が無い。なら、人よりも小さいナニカで撃っているとしたら?小さなナニカ、遠隔射撃、ビーム兵器……」


ルシファーが、恍惚とした表情を浮かべた。


俺は立てた人差し指をルシファーにゆっくりと向け、こう締める。

「ビット兵器……オールレンジ攻撃の可能性が高すぎるってわけさ……!」


俺の推理ロジックに、ルシファーは相槌を打つ。


「うん!それそれで?何で私がルナに成りすましているって看破したの?」

アイみたいな喋り方で、ルシファーは急かす。


一瞬、目の前にいる彼女がアイと姿が重なるような感覚に、俺は根拠のない恐怖を覚えた。


 拳を握りしめ、自分を鼓舞するように口を開く。


 「その答えは……アイが託してくれた、お前の二枚目の手紙にある。――ルシファー・レイス・ナイトメア ” は ” この屋敷にいない。だが、お前は俺との約束を果たしたい。だから存在しないわけがないんだ、この屋敷に。そして” は ”の文字が血でマーキングされてたことで、アイの考えていたことを理解した」


「それで俺はルシファーが誰かにすり替わって、屋敷に潜んでいると考えた。後はブザーで皆を呼び出して、炙り出せばいいだけの事」


ルシファーの緑色の瞳が、俺を吸い込むように見つめる……。


俺は気を保ちつつ、話を続ける。


「……皆が本物だって、本音をぶち撒けてみて分かった。ルシファーは自分を見つけてほしい。だから犯人は既に死んでいる筈のオズマとルナに絞られる。そこで俺は、ルシファーの家族に関する質問をナイトメア家の人達にした」


火傷した太腿を剣の腹で冷やしながら、話を展開していく。

「まず、殺された執事のオズマについて聞いた。理由は単純だ。俺の知らない人間だったからだ。ジェームズさん曰く、オズマが入ったのは2年前。前任の執事は、3年前に死亡したらしいな」


ルシファーは無表情になった。どうやらオズマに関する話は、彼女にとってつまらないようだ。


俺はやはりと思い、語りを熱くした。


「そこで俺は、手紙にあった6年前から順にナイトメア家に起こった出来事を聞いた。そして3年前の話の途中で、皆が頭を抱えだした。”何か忘れているような……”ってな」


俺はルシファーに指を指す!


「人を言葉で支配することのできるお前なら、記憶改ざんも朝飯前。改ざんのタイミングが3年前なら、オズマは時期的に能力の対象外!そして、ここからは推測だが……死んでしまった妹を、生きていることにすれば成り代わりも容易い」

俺は息を整える。


「これが……お前の欲しかった回答か?ルシファー!」


そして全てを纏めるように、俺は屋敷に響くような大声で結論を告げる!


「全部繋がった……!3年前の記憶欠落……これがお前がルナに成り代わっていた事を看破した推理ロジックだッ!!ルシファー!!」


その強い言葉に、ルシファーは恍惚の表情を浮かべる。

「流石だわ、ソウジ……」

ルシファーの表情が、急に暗くなる。


「………それで」


俺は彼女のオーラに、何故か震えが止まらなくなる。


ルシファーはゆっくりと、俺に近づいてくる……。


「マズい……ッ、身体が……動かない……!?」


俺に触れるか触れないかの距離で、ルシファーは上目遣いで静かに問い詰めた。

「約束の方は、どうなの……!?」


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