第18話「紡いだ氷/これで決まりだ」
〈22時14分、ナイトメア邸・庭園にて―〉
庭園を歩いていた俺の頬を、突如轟音と共に冷たい何かが掠めた。そしてそれは俺の後ろの岩に突き刺さった…。
「…っ!?」
俺はすぐさま振り向く。
ミハイルとツバサさんもこっちに来た。
そこに刺さっていたのは、手紙が閉じ込められた氷の塊だった。よく見ると、血が凍りついて付着している。
「―アイ…?!」
俺は血の気が失せた。
他の二人も、青ざめた顔をする。
「今すぐ助けに行かなきゃ…!」
俺は飛び出そうとした…が、
氷塊で覆われた手紙の文字が、それを止めさせた。
「この文字…姉様のものです!」
ミハイルがそれを覗き込んで驚愕する。
(ということは…これはルシファーが与えたヒントで、それを俺に伝えるために…!?)
俺は手紙を読み上げる。
「『…この私、ルシファー・レイス・ナイトメアは、この屋敷にはいません。』…何だと?!」
そんなもん、探しようがねえぞ…!
しかし、その諦めはすぐに吹き飛んだ。
「…?! なあツバサさん、これってまさか…!」
俺の指差した一文字に、恐らくアイの血でマークされたような跡があった。
『…この私、ルシファー・レイス・ナイトメア” は ”、この屋敷にはいません。』
「ええ、確かにそう見えますね…。」
ツバサさんが答える。
俺は思考をフル稼働させる…!
「ルシファーの目的からして、そもそも俺に見つけてもらわなきゃ話にならない…だから奴はこの屋敷に潜んでいる!」
「そして、この血に染まった” は ”の指す意味って言うのは…」
俺の言葉に、ミハイルはハッとする!
「兄様…まさか…!」
俺はある結論に辿り着く…!
「ああ…奴はルシファーとしてではなく、別の何かに変身して紛れ込んでいる…。そして…その姿は絶対に見つけられるもの…!」
「それは…この屋敷にいる人間だ!」
アイ…命を賭けてこれを伝えてくれたんだ。
無駄にはしねえ…!
「ですが…その肝心の誰なのかがわからないと…。」ミハイルが難しい顔をする。
「…それを今から解き明かすんだよ。」
俺はブザーを鳴らす。
(残る謎は…
①何故子供部屋でミハイルだけ殺害されなかったのか
②誰なのか
③俺とルシファーの約束…。)
俺の鼓動が、加速する―!
「待ってろルシファー…ここからがハイライトだ…!」
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〈22時56分、ナイトメア邸・庭園にて―〉
俺は残っている他のチームを呼び寄せた。
俺はこれまでの経緯を話した。
「…アイさん達を助ける人員の確保、そしてルシファーが誰のフリをしているかを突き止めたい…。そういう事だな、相棒?」
流石メビウス、話が早くて助かる。
「ソ、ソウジくん…まさか、私達を疑っているわけじゃないだろうね…?!」
ジェームズさんは混乱状態だ。実の娘に末っ子と妻(正確には生死不明)を殺られたことによる精神的ダメージは、限界に達していた。
「アイお姉ちゃん…!もう…嫌だよ…!!」
ソニアも憔悴してしまっている。
「…だからこそだ。今、確かめたいことがいくつかある!
この悪夢を終わらせる、確認事項だ。」
俺は頭を下げる。
「俺とルシファーのいざこざに巻きこんで、本当にごめん!
俺のせいで、関係ない皆が苦しむ姿を見たくない…!でも一人じゃ解決できない…!情けない事を言ってるのは…承知の上で頼む!力を貸してくれ…!!」
恐ろしいほどの沈黙のあと、穏やかな声が俺の耳に届いた。
「…顔を上げなさい、ソウジくん。」
顔を上げた先にいたのは、涙をジェームズさんだった。
「私も皆も、誰も君を責めたりなんかしないさ。むしろ、君を希望だと思っているんだよ。」
その言葉に、他の皆が頷く。
「ルーシーを止められるのは、君しかいない。彼女の”騎士”なら、当然の事だ。」
ジェームズさんは続ける。
「私達は君に協力するよ、ソウジくん。…頼む!ルーシーを…家族を愛する優しい娘を取り戻してくれ…!!」
「私からも頼みます!メイドとしてではなく、ツバサとして!」ツバサさんがジェームズさんの想いを繋ぐ。
「ルナが憧れた姉様を…お願いします!」
「アイさん達のことは、」
「私達に任せて!」
そしてミハイル、メビウス、ソニアと繋がる。
俺は熱いものが込み上がっていく感覚を噛み締めながら、皆の目を見て想いのバトンを受け取った。
「任せてくれ…!」
そして…
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〈23時38分、ナイトメア邸2階・子供部屋にて―〉
冷たくなった2人分の遺体しかない血塗れの部屋に、黒薔薇の剣を持った俺が足を踏み入れる。
「よう…。」
俺は遺体に剣を向ける。
「密室で複数の銃撃…儀式の開始直後からの死亡…全く、お陰で気づくのが遅れたぜ。」
俺は続ける。
「犯人は2人。それも片方は人間じゃない…。」
「何よりルナ…お前は3年前、すでに死んでいる…。」
俺はルナの遺体を睨見つける。
「お待たせ…」
「”ルナ”…いや、”ルシファー”!!」
死んだ筈のルナの口角が、大きく上がった…。
「ソウジ…どうして分かったのかしらぁ…?」
ルナの姿をした身体が浮き上がり、みるみる大きくなっていく…。
数秒後、ルシファーと共に純白の天使の様な物体が出現する!
そして物体の翼から、2つの何かが分離し、ビームを放つ!
「やっぱり、オールレンジ攻撃だったわけか…!」
俺はギリギリで躱す。
その様子を見ながら、ルシファーは恍惚の表情を浮かべながら語りかける。
「さあ、ソウジ…命懸けのお話をしましょ…♡」




