第15話「浄化の儀/彼女を探せ」
「浄化の儀…皆殺しだと…?!」
ルシファー…!
「ルーシー…一体何故こんなことを…?!」
ジェームズさんは困惑している。ルーシーというのはルシファーの愛称だ。
「ほぼ間違いなく、ソウジくん絡みのことでしょうけど…。だ、大丈夫よソウジくん…!私達はあなたを責めたりなんかしないわ。」
金髪縦カールの若々しい夫人が俺を気遣ってくれた。彼女はレイス・ヴァン・ナイトメア。ジェームズさんの奥さんで、ルシファーの母親だ。
「お気遣いありがとうございます、おばさま。」
俺は何時になく礼儀正しく感謝を述べる。
ここの一族は高貴だからだ。
とは言え…
チラリと時計を見ると、既に19時を回っていた…。
(どうする…?!浄化の儀まで後2時間を切った…!できるだけ早く対処しないといけないのに…どこにアイツがいるのか…アイツとの約束が思い出せねぇ…!!)
俺は焦っていた。頬から冷や汗が流れ落ちる…。
思考が停止していく―。
その時だった。
「まず、この屋敷にいる人をこの居間に呼んでください。」
重苦しい空気を和らげたのは、メビウスの一言だった。
「…?!あなたはまさか…メビウス殿下…?!」
困惑していて今まで気づかなかったのだろう。恐怖が驚きに変わった。
メビウスは続ける。
「その後、浄化の儀の開始時刻までに、いくつかの捜索チームを編成するのはどうでしょう?何せこの悪夢を生き残るには、ナイトメア家の皆様と我々の、お互いを知る必要がありますので。」
メビウスがテキパキと皆を纏めてくれた。
それを聞いたジェームズさんの顔色が、いくらかマシになった。
「あ、ああそうですな…!早速、皆を呼び出します…!」
そう言って、コールボタンを押しに行った。
メビウスは俺を見てウィンクする。
「どうだい、相棒?」
いつから相棒になったんだ…?
でもまあ…
「助かったぜ、ありがとう。」
俺はお礼を言った。コイツは本当に頼りになる。
「何よ…相棒なんて、前からいるじゃないの…!」
気づかなかったが、アイは、少し厶ッとしていた…。
――――――――――――――――――――――――
〈19時45分、ナイトメア邸の居間にて―〉
3人のメンバーが居間に姿を現した。大人1人と、恐らくソニアよりも年下の兄妹が2人。
「只今お連れしました。皆、自己紹介をしなさい。」
ジェームズさんが促すと、大柄なスーツを着た、キズだらけの男が前に出る。「私は、ナイトメア家の執事をしております、オズマと申します。」
…こんな奴、いた覚えがない。俺が知らない間に新しく入ってきたのか…?
俺の違和感をよそに、兄妹が揃って前に出る。
「僕はミハイル。10歳です。…ルシファー姉様が…帰って来たのですか…?」
ミハイルは昔から礼儀正しかった。俺が礼儀を学んだきっかけも、彼の存在が大きい。
その後、ルシファーを幼くした様な女の子が、口籠りながら話し始める。
「ル、ルナ…。ろ…6さいです…。お姉ちゃん…!はやくあいたいよぉ…!」
彼女はルナ。昔は小さくてあまり関わりがなかったけど、家族から愛されている末っ子だ。
俺達も自己紹介した。
「よろしくね!ミハイルくん、ルナちゃん!」
アイは小さい子が大好きだ。
「大丈夫ですよ、2人とも私が守りますから!」
ソニアがお姉ちゃん然とした態度で励ます。
「「…さて。」」
気を引き締め直すように、俺とメビウスが声を上げる。
…同時に。
――――――――――――――――――――――――
〈20時57分、ナイトメア邸の居間にて―〉
儀式開始まで、あと3分―。
話し合いの結果、俺とツバサさんのAチーム、アイとレイス夫人のBチーム、メビウスとソニア、そしてジェームズさんのCチームが探索班となった。
執事のオズマさん、ミハイルとルナは子供部屋で待機。流石に、小さい子を動き回らせるのは無謀すぎる。
「皆、説明したと思うけど、ルシファーの目的は俺だ。だから、万が一ルシファーと遭遇したら…」俺は防犯ブザーを取り出す。ナイトメア邸にあったものを貸してもらった。
「このブザーを使ってくれ。速攻で駆けつける…!」
俺の話を聞いて、何人かが頷いてくれた。しかし、レイスさんが質問する。
「も、もしもよ…?もしも…ルーシーが遭遇した私達に襲いかかってきたら…?」
彼女の手は、震えていた。
「大丈夫です。そのために戦闘力の高い面子を、そうでない人たちと組ませてるんですから。」
俺はできる限り安心できるように答えた。
フォローするように、アイがレイスさんの手を取る。
「心配ありません。私が絶対に守り抜きますよ。」
それを聞いて、レイスさんは少し落ち着いたようだった。
残り20秒―
「皆…生き残るぞ…!」
俺が声を上げる。
皆、各々の位置に待機している。
残り10秒―
「ルーシー…お前の考えを知りたい…。」
ジェームズさんが、呟く…。
残り3…2…1…!
0…!
〈浄化の儀、開始―〉
「ウアアァァァ〜〜!!!」
開始とほぼ同時に…
子供部屋の方から、悲鳴が聞こえた…。




