第14話「彼女との約束/ナイトメア家」
〈帝暦2030年 7月6日 06時23分 アルトリア帝国辺境にて――〉
俺はゲート。ルシファーと豹変した市民から、命からがら逃げおおせた反逆者だ。
あの襲撃のとき、アイの氷壁が市民達の魔の手から守ってくれた。その間に、俺はアイ、ソニア、そして――ついこの間加入したメビウスを先導して、目的地であるナイトメア家に向かっていた。
〈11時56分――〉
ショッピングモールから離れた場所で、ご飯を買おうとしたところ、近くにいた市民と従業員に襲われた。メビウスがチョップで気絶させながら険しい顔をする。
「この感じだと王都の市民のほとんどが、”恋慕”ルシファーの言葉に心を奪われているんだろうね……」
認めざるを得ないな……化け物みたいな目で見られたのは4年ぶりだ。
「そういえばゲート、アンタは何でナイトメア家を知ってるのよ?」アイが訝しげに聞く。
そういや、話してなかったな……。
「ナイトメア家っていうのは、王都の辺境にある有力地主の一族で、ルシファーの実家だからだよ」
その言葉に、全員が驚いた顔をする。
「お兄ちゃんって、ルシファーとどういう関係だったのですか?」
ソニアが目を丸くして急かす。
「まあまあ……順を追って話すから」
俺は、皆を案内しながら説明する。
「……俺とルシファーは、家が近いこともあって幼馴染だった。で、勉強の為に実家を離れるってなった時に俺、ルシファーと何か約束をしたんだ……。でも、その約束を果たせず、内容も忘れちまった……」
俺は歯ぎしりした。
「もしかしたら……その”約束”を果たすために、僕たちを彼女の実家に向かわせた、ということかな」
俺の心を読んだかのように、メビウスが推察した。
すごいな、コイツ……いや、その結論に達するのは至極当然か。
「とにかく、そこに着いたら真相がわかるわよ、きっと。だからゲート、日が暮れる前に急ぎましょ★」
「ああ、でもまだ半分くらいしか進んでないぞ?」
王都は本当に広い。電車なんか使えないし――
「僕の剣の能力なら、高速で移動できるよ」
メビウスが今更のように……
「おい!それを早く言えよ!」
というわけで……メビウスを先頭にし、俺達はそれぞれの肩を持つ、貨物列車スタイルで王都を突っ切るのだった。
※ ※ ※
〈18時02分 ナイトメア家正門前にて――〉
メビウスのおかげで、日が暮れる前に着くことができた俺達は備え付けの鐘を鳴らす。
(緊張するな……)
心臓がバクバクと音を鳴らす。
誰か質問でもしてくれよ……。
静寂の後、正門の向こうから何者かが姿を見せた。
「お待たせしま――ソ、ソウジくん……!?待ってたよ、久しぶりだね!」
メイドのツバサさんだった。黒い髪のボブヘアーに茶色い瞳。昔からよく遊んでくれた人だ。
ただ、”待ってた”……か。俺達が来ることは、ナイトメア家もすでに知っていたのか?
その時。一瞬、ツバサさんの目つきが変わったような気がした……。
「コホン、そちらにいるのはお友達ですね。どうぞ、お上がり下さいませ」
急にメイド口調になったツバサさんは俺達を居間へ案内した。
「お邪魔します。お久しぶりです、皆さん」
居間に入ると、懐かしい人達の姿が。しかし、皆の様子は何処か不安そうだ。
「おお……ソウジくん、久しぶりだね。大きくなったなぁ」
メガネを掛けた優しそうなイケオジが挨拶する。
「ご友人の皆さん、私はナイトメア家78代当主、ジェームズ・リン・ナイトメアです」
ジェームズさんはルシファーの父親だ。ルシファーが大司教になったことで、一族は更に力をつけたとか……。
「実は……今日の朝に届いた手紙で、君達の来訪は分かっていた」
そして、俺達に上質な紙に書かれた手紙を見せた。
その内容に、俺達は絶句する。
「な、何だよ……これ!?」
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―親愛なるナイトメア家の皆様、そして本日来訪されるであろうソウジ御一行様へ―
本日21時より、この屋敷にて”浄化の儀”を行います。逃げることはできません。翌日6時までに私を見つけ、儀式を止めてください。もし誰も止めることができなかった場合、時間切れと同時に、この屋敷にいる者全ての命を頂きます。
追記
ソウジ……あの時の約束を果たすまで、逃がしませんからね?
ご健闘をお祈りします。
―――カテナ教会"恋慕”の大司教ルシファー・レイス・ナイトメア
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どうやら俺達は……とんでもない悪夢に囚われちまったみたいだ。
そして……そんな俺達の様子を窓から眺めている人影がいることに、誰も気づくことはなかった。
「ソウジ……責任、取ってもらいますからね♡」
「フフッ♡」
〈〈浄化の儀開始まで 残り178分――〉〉




