第13話「生命編-完 / ルシファー再び」
「聞きたいことがあります……!」
ソニアちゃんが張り詰めた顔でイグドラに問いかける。
対するイグトラは意地悪く笑う。
「あぁ、”L-57”……。やはり悪意が消えたのは貴様らの仕業だったようじゃな、反逆者共……!!」
コイツ、やっぱりソニアちゃんを実験動物としか見ていない……!
しかし、そのような呼ばれ方をされても、ソニアちゃんは動じない。いや、握られた拳は微かに震えていたのかもしれない。
「何故、私達親子に信仰の案内を届けたのですか……!?」
その問いに、イグドラは嘲るように答えた。
「何故かじゃと……?それは全てL-57、貴様をワシの娘にするためじゃ!!」
…ろ何よそれ。予想の斜め下を行く回答に吐き気がする…!
「えっ……?な、何を言って――」
動揺するのも無理はない。しかし、そんなソニアちゃんを無視して奴は話を続けた。
「4年前……貴様の母親を事故に見せかけ、殺害したときは脳汁が溢れんとした気分じゃった……!これで貴様と"L-56"の生活が困窮し、ワシらカテナ教会を頼らざるを得なくなるゥゥ!」
「テメェ……!」
ゲートが黒薔薇の剣に力を込める。しかし、メビウスが手で制した。
「ワシが貴様ら親子に”祝福の種”を植え付けた時、貴様の方の侵食を抑えるのには苦労したわい……!父親の方は使い捨てとして、貴様と別れさせる手筈じゃった……!」
胸を抉るような数々の告白に、ソニアちゃんは涙を流してしまう。
「そん……な……!?」
「最終的には脳を弄くってワシの娘として迎え入れる……筈じゃったが、そこの反逆者共に台無しにされたッ!!じゃがなぁ……」
そう言って、イグドラは美しいものを見るように、目を煌めかせてソニアを見つめる…。
「今からでもワシの娘として教会に……皇帝陛下に仕えるのじゃ〜〜!!L-57ァァァ〜〜〜〜!!!」
イグドラは食い入るようにソニアに顔を近づけようともがく……。
「もういい。」
ゲートが行動を起こす前に、私がゆっくりと口を開く……。
「さっきから聞いていれば……!」
私の身体から超低温の冷気が溢れ出していた――。
「ソニアちゃんを奪うために両親の命を弄んで……」
一歩ずつイグトラに近づく。
その度に足元に霜が降りる。
「ソニアちゃんを娘として迎え入れると言っておきながら、一度もこの子の名前を呼ばずに……!」
ゲートとメビウスが、ソニアちゃんを連れて私から距離を取る。
ええそうよ、離れてちょうだい。でないと、巻き込んじゃうから……。
「どこまで悪辣な事をすれば気が済むの……!?アンタは!!」
もう容赦はしない……
私はイグドラの首から下を凍結させる。
そして、そのまま――
「そんなアンタの命は!」
奴の右足を思い切り砕く。砕けた氷が、周囲に飛び散る。
「ギャァァァッッ!!?」
奴が激痛で悲鳴をあげる。
「この私が!」
構わず左足、右腕を叩き割る。
「弄んであげるッッ!!!」
怒りのままに、残った左腕を吹き飛ばした。
「クッ……」
その時、外野から見ていたゲートがそこから目を背けようとした。目の端で確認した私にも分かる、何か思うところはあるのかもしれない彼の想いが……。
「アイ……た、頼む…!助けてくれぇ……!!」
イグドラの情けない命乞いが、周囲に響く。
「……」
一瞬の沈黙。
「あはっ★」
私は敢えて無邪気に笑う。
こんな奴に言う事なんて、決まってる。
「だ〜〜めっ!!」
私は侮蔑を込めた顔に戻し、拳を振り上げた。
「死になさい……!」
私はイグドラの顔を氷漬けし、拳が砕けんほどのパンチで奴の肉体を破壊した。
次の瞬間、凍りついた奴の肉体の欠片が、黒い霧となって消えた……。
「悪魔に相応しい最期だった……ね」
メビウスが淡々と言う。
「アイ……」
ゲートは私を心配するような顔をしている。
私はまだ少し痛む拳を握りしめながら、ゲート達の方へと戻る。ソニアちゃんの目は光を失っているように見えた……。
「…もう終わったよ」
私はソニアちゃんに優しく言う。
でも、これだけじゃダメよね……。
私は彼女をギュッと抱きしめる。
「大丈夫……!私達は絶対にあなたから離れたりしないわ……!家族なんて言うのは、おこがましいかもしれないけど……私達はあなたを愛してる!!」
私の想いを後押しするかのように、ゲートが私達の手を握った。
「ああそうだ!もう苦しまなくていいんだ、ソニア……!」
ゲートも精一杯の励ましを送った。だいぶぎこちないけど……気持ちは本物だった。
「ほらメビウス、お前もだよ!」
そう言って、ゲートは手を差し出す。
メビウスは一瞬、たじろぎながらもその手を握り、輪に入った。
「…これからもよろしくね、ゲート…ソニアさん…アイさん…!」
すると……少しずつ、ソニアちゃんの目に光が戻っていく――。
「ありがとう……っ、ございます……!皆さん……大好きです……っ!!」
ショッピングモールの天井から差し込む月明かりが、私達を照らしていく――
――その時だった。
『無垢なる人の子よ……皇帝陛下の愛を枯らした者達を、捕らえなさい』
――次の瞬間
無数の市民が、私達に襲いかかってきた!
「なっ……!!ルシファー!!」
ゲートが絶叫する……!
ルシファーってまさか、”恋慕”の大司教……!?
「フフッ、久しぶりねソウジ♡」
ルシファーが無邪気に笑う。
「市民からの逃亡生活は嫌でしょう?辞めてほしければ、”ナイトメア家”に来なさい」
「お仲間さんも、ご一緒に……♡」




