第12話「最強タッグ / 斬り裂け冒涜の嵐」
〈帝歴2030年 7月5日 14時02分 ワルキュリア・シティモール2階 オフィスブロックにて――〉
私はアイ。大司教のイグドラと対峙するゲートとメビウスを見守る、反逆の案内人よ。
イグトラはゲートを一瞥し、メビウスの方を向いて眉にしわを寄せた。
「メビウス殿下……まさか反逆者などと結託し、ワシを斬ると仰るのですかい……?」
メビウスはイグドラに剣を向け、静かに答える。
(皇子……?)
「ええ、私の目的は姉を取り戻し、歪んだ世界を変えること。あなたの存在はこの世界の歪み、そのものだ……!」
その言葉に嘘は無い。この人の怒りは本物だ。
すると、イグトラは溜息をつき、渇ききった瞳で冷たく彼を見つめる。
「残念です……殿下。カテナ教会……そして皇帝陛下の下へは帰らないということですな、"一族から消されし皇子"」
不気味なほど淡々としたイグドラの言葉に、私はゾッとする。
「逆賊共め……。生命の大司教が、貴様らの命も浄化してやろうぞ……!」
イグドラが地面に触手を突き刺す。
その瞬間、無数の植物がモール全体を突き破るように生えてきた……!
桜――スギ――イチョウ――ラフレシア――それらが生き物のように暴れまわる!
「ソニアちゃん!危ない!!」
私は氷で彼女を守りながら、2人で植物から離れた場所へとスケートの要領で避難する。
「生命力を暴走させてるのか……!?相変わらず悪趣味だなぁ!」
ゲートが迫りくる魔の手を躱しながら、イグドラを睨む。
「尊ぶべき命を……こんなことに使うとは。堕ちるところまで堕ちたな、イグトラ……!」
メビウスが吐き捨てる。
怪物のような植物によって、このショッピングモールの底が抜けていた。
「こんな大胆に……!」
体制側の人間が、こんな破壊行為を平然と……。ゲート達にその罪を擦り付けるつもりなの……!?
「ワシが歪みじゃと?笑わせるな!陛下の管理する世界……その歪みは、貴様らのような反逆者じゃろうがああッ!!」
高らかに宣言するイグドラ。
その瞬間、大量の丸太が木々から高速で発射される!
避けきれるわけが――!
「ゲート……!」
けれど――
ゲートとメビウスは笑っていた。まるで自分達が負けることなど無いかのように。
まさに紙一重。
ゲートが黒薔薇の剣を振り下ろし、なんとメビウスが剣から光線を出す。
「何それ!?」
私は思わず声を上げてしまった。でも、すぐさまその答えが分かった。
「わかった……!刀剣に刻まれた特別なマギア――"ソードライズ・マギア"ね!」
メビウスだけじゃない、ゲートの黒薔薇にも……
って、今のアイツじゃ引き出せないか。
それでも……赤黒い斬撃と金色のビームのコンビネーションが炸裂する!
迫りくる丸太を木粉にし、光線の熱で粉塵爆発を引き起こす。
「きゃっ!!」
騒音で目を覚ましたソニアちゃんが、悲鳴を上げる。
「大丈夫よッ……!」
彼女を抱きしめつつ、私は全力で氷壁を作る!じゃないと、吹き飛んじゃう……!
その直後――
凄まじい爆音と共に、施設の半分が消し飛んだ……。
煙が晴れてくると、ホコリを払いながら悪態をつくイグトラが現れた。
「まったく、イカれておるわい……!」
反撃をしようと触手を構える……
が、それが実際に行われることはなかった。
『ペンデール・ロザリオ!!』
イグドラの身体に、赤黒い茨が突き刺さる!
「青二才がッ……調子に乗るなぁぁぁ〜〜〜!!!」
しかし、イグドラが茨を引き千切っていく!
「マジかよ……!」
ゲートが焦る。
早くしないとまたあの攻撃が……!
その時――
光の槍がイグドラを磔にした!
「僕を忘れてもらっちゃ困るな、ゲート君」
メビウスが不平を言いながらゲートの隣に立つ。
彼らの目の前にいるイグドラは、壁と一体化し無様な姿を晒していた。
その光景を見て、私は確信する……!
「やった……っ!!ゲート達の勝ちよ!」
ところが……ソニアちゃんは険しい表情のまま、イグドラのところへ向かっていく。
「ちょっと、ソニアちゃん……!?」
私も後を追う。
まさか……
そして、私達がイグドラのところへ着くと、ソニアちゃんが口を開く。
「あなたに……聞きたいことがあります」
すると、イグトラは薄ら笑いを浮かべ、彼女をネットリと見上げた。




