第14話「彼女との約束/ナイトメア家」
俺はゲート。ルシファーと豹変した市民から、命からがら逃げおおせた反逆者だ。
あの襲撃のとき、アイの氷壁が市民達の魔の手から守ってくれた。その間に、俺はアイ、ソニア、そしてついこの間加入したメビウスを先導して、目的地であるナイトメア家に向かっていた。
〈昼頃―〉
ショッピングモールから離れた場所で、ご飯を買おうとしたところ、近くにいた市民と従業員に襲いかかられた。メビウスがチョップで気絶させながら険しい顔をする。
「…この感じだと王都の市民のほとんどが、”恋慕”ルシファーの言葉に心を奪われているだろうね。」
確かに…。
「そういえばゲート、あなたは何でナイトメア家を知ってるのよ?」アイが訝しげに聞く。
そういや、話してなかったな…。
「ナイトメア家っていうのは、王都の辺境にある有力地主の一族で、ルシファーの実家だ。」
その言葉に、全員が驚いた顔をする。
「お兄ちゃんって、ルシファーとどういう関係だったのですか?」
ソニアが質問する。
俺は、皆を案内しながら説明する。
「…俺とルシファーは、家が近いこともあって幼馴染だった。それで、勉強の為に実家を離れるってなったときに、俺、ルシファーと何かの約束したんだ…。でも、その約束を果たせず、内容も忘れちまった…。」
俺は歯ぎしりした。もしかしたら…
「…その”約束”を果たすために、僕たちを彼女の実家に向かわせた、ということかな。」
俺の思考を読んだかのように、メビウスが推論する。
「まあ…そこに着いたら真相がわかるわよ、きっと。だからゲート、日が暮れる前に急ぎましょ★」
アイが急かす。
それもそうだな…。
「僕の剣の能力なら、高速で移動できるよ。」
メビウスが今更のように言う…。
「おい…!それを早く言えよぉぉぉ…!」
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〈午後6時過ぎ、ナイトメア家正門前にて―〉
メビウスのおかげで、日が暮れる前に着くことができた俺達。
俺は備え付けの鐘を鳴らす。
(緊張する…ぜ。)
心臓がバクバクと音を鳴らす。
静寂が訪れる。
数分後、
正門の向こうから姿を現したのは…
「お待たせしま―ソ、ソウジくん…?!待ってたよ、久しぶりだね…!」
メイドのツバサさんだった。黒い髪のボブヘアー、そして茶色い瞳。昔からよく遊んでくれた人だ。
ただ、”待ってた”…か。俺達が来ることは、ナイトメア家もすでに知っていたのか…?
その時。一瞬、ツバサさんの目つきが変わったような気がした…。
「コホン…そちらにいるのはお友達ですね。どうぞ、お上がり下さいませ。」
急にメイド口調になったツバサさんは俺達を居間へ案内した。
「お邪魔します。お久しぶりです、皆さん。」
居間に入ると、懐かしい人達の姿が。しかし、皆の様子は何処か不安そうだ。
「…! ソウジくん、久しぶりだね。大きくなったなぁ…。」
メガネを掛けた優しそうなイケオジが挨拶する。
「ご友人の皆さん、私はナイトメア家78代当主、ジェームズ・リン・ナイトメアです。」
ジェームズさんは大きくため息をついた。
「実は…今日の朝に届いた手紙で、君達の来訪を知ったんだよ。」
そして、俺達に上質な紙に書かれた手紙を見せた。
「……な、何だよこれ…!?」
その内容に、俺達は絶句する。
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―親愛なるナイトメア家の皆様、そして本日来訪されるであろうソウジ御一行様へ―
本日21時より、この屋敷にて”浄化の儀”を行います。逃げることはできません。翌日6時までに私を見つけ、儀式を止めてください。もし誰も停めることができなかった場合は、時間切れと同時にこの屋敷の生ける者を皆殺しにします。
追記
ソウジ…あの時の約束を果たすまで、逃がしませんからね…?
ご健闘をお祈りします。
"恋慕”の大司教ルシファー・レイス・ナイトメアより
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どうやら俺達は…とんでもない悪夢に囚われちまったようだ…。
そして…そんな俺達の様子を窓から眺めている人影がいることに、誰も気づくことはなかった…。
「ソウジ…責任、取ってもらいますからね…♡」
「ウフフフフッ…♡」




