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第6話「慟哭と反逆 : 後編―ラスト/リスタート―」

王都編-オープニング-最終回です。


――――――――――――――――――――――――

〈帝歴2030年 6月2日 5時41分 王都ワルキュリー ホテルにて――〉


 「……はい」

 俺の問いに対し、ソニアは沈黙を挟んだ後に頷いた。ボロボロになったホテルの隅で、彼女は俺とアイの間に腰かけながら語り始める。


「もともと、このホテルは母が経営していました。ですが……4年前に母が事故で亡くなり、経営を全て父が引き継ぐことになったんです」


お母さんが……そうなのか。

俺は話を聞きながら、自分の母親のことを思い出すのだった。


「ただ、残念ながら……父には経営の才能はありませんでした。父はかなりクセの強い人でしたが、同時に家族への愛情を確かに持ってもいました。ですから、日々廃れていくホテルを見ながら亡き母の写真に謝ることも増えていったんです」


ソニアの口から語られたヨハンの真実は、俺の心に複雑なものを残した。

――愛、絆。



「父が私を好きなように、私も父が大好きでした。だから、私もできることをしなきゃって思って……」

そう言いながら、ソニアはスカートを握りしめた。それを見て、彼女の行動の謎が解けた。


「あの客引き……やっぱ無理してたのか」


「辛かったわね」

アイがソニアの頭を優しく撫でた。


しかし、ソニアの表情が急に曇る。

「ですが、そんな努力も虚しく貯蓄が底をついたとき、信仰のご案内が届いたんです……」


「信仰……?」


胡散臭い話だ……。

俺は背筋に冷たさを感じた。



「怪しいとは思ったのですが、国が支援していることと、当時の私達が精神的に追い詰められていたことが重なり、王都の中心にある大聖堂を訪ねました。……その後のことはよく覚えていません。ただ、記憶にのこっているのは”祝福の種”がどうの……くらいです。その上3日ほど何も考えられず、夢を見ている気分に陥りました……」


話の闇が深まるにつれ、ソニアの声のトーンが下がっていく。俺は聞いてはいけない"何か"に触れてしまったようだ。


「その後、私たちの口座には数百万の入金がなされていました。振り込み人は確か……"カテナ教会"」


「何だと……!?」

「やっぱり……!」

カテナ教会……その言葉に、俺達は凄まじい衝撃を受けた。


カテナ教会といえば、アルトリア帝国の国教で世界的に有名な組織だ。あまりよく知らないが。


「昨日、あの化け物が出てきたのは初めてだったんです……!」

ソニアが震えながら言う。


その言葉で、俺はハッとする。

「俺達が反逆することを知ってて、誰かが発動させたのか……!?」

冷や汗をかきながらアイの方を向くと……

思い詰めた顔をした、辛そうな姿だった。

「……っ」


この反応……何か知っているな。

だが、今は責めるつもりはない。


「アイ、今はソニアの話を最後まで聞こう。思い詰めるのは後でいくらでもできるから」

そう促した直後、アイが犯人の名を口にした。

「……”生命いのちの大司教”の仕業よ」


大司教……。カテナ教会のトップってことか……!?


「……デカい肩書だな。アイ、何なんだそいつは……?」

ひとまず確認する。早とちりは良くない。

「この国の統治に深く関わる、6人の賢者の一人よ」

アイが重々しく語る。


「恐らく……ソニアみたいな人達を、実験動物として使い捨てにしてる」


……何だよ、それ。俺は恐怖と憎悪が煮えくり返る。


「人体実験って……人のすることかよ!」


だが、これで次にすべきことがはっきりした。

「アイ……次のミッションだ。大司教の悪事の証拠を集め、追い詰める……!」


それを聞いたアイが頷く。

「よし、それじゃ――」


その時だ。


「あ、あのっ……!」


ソニアが口を挟む。

「わ、私も……あなた方の旅について行ってもいいですか……?」


オドオドしながらも、ソニアははっきりとお願いした。

俺とアイは互いに顔を見合わせる。

「でも、危険すぎるぜ……?」

一緒に行くのはすなわち、反逆に加担させるということだ。


俺は崩壊したホテルをチラリと見る。


「今はホテルの復興の方に専念するべきなんじゃ――」


「私は真実を知りたいんです!」


ソニアは俺の目をしっかりと見ながら、必死に声を上げた。

「ホテルの方はその後で大丈夫ですから……!」

その目は確かに、覚悟に満ちていた。


――長い沈黙のあと、アイが口を開ける。

「いいわ、一緒にいきましょ」

アイはことの重大さを理解して、その上で承知した。


「ソニアちゃんのような人達を、王都の連中が引き取ったりとかしないでしょうし、私たちといる方が安全だわ」


「確かに……国家権力がこの騒動の黒幕の可能性が高いなら、これが最善なのか」

相手が国家権力であるなら、確かにそこは考えなきゃな。


だが、これはソニアに言わなければ。

俺は少し怖い声で、ソニアに聞く。


「いいか、俺たちのしている旅は、この世界の悪意――皇帝に対する反逆行為だ。ソニア、それでも来るか?」

ソニアは俺の目を見て淀みなくはっきりと答えた。

「もちろんです!よろしくお願いします!」


……決まりだな。


「ああ、こちらこそよろしくな!」

「よろしくね、ソニアちゃん!」


そう言って、アイはソニアを抱きしめる。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん……ありがとう!」(上目遣い)

「グハッ…!」 

ソニアの高等テクが炸裂する――! 


……ったく、これには弱いぜ。


 こうして、俺はアイとソニアと共に、反逆の道を再び歩みだした。


――――――――――――――――――――――――


 同時刻――


 ステンドグラスから日が差す薄暗い場所で、

猫背の老父が眉を寄せる。


「……”L-56”と”L-57”に埋め込んだ悪意の反応が、突然消えたのう……」


「ガハハハハハッ!!抹殺できると起動させたら、逆に”反逆者”にやられたというわけか……!”生命の大司教”殿!!」

それを聞いていた金髪の大男が笑い声をあげる。



「笑い事ではありませんよ、”暴虐の大司教”殿。陛下にお伝えしなくては……」

少し離れたところで、修道服の美しい少女が静かに口を挟む。

そして、彼女は暗がりを後にする。


「……必ず――してみせるわ」

暗がりの中で彼女は呟いた……。


「ソウジ……♡」


 俺達はこれから…恐ろしい強敵たちと、数奇な運命を辿ることになる――。


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