第6話「慟哭と反逆:後編―ラスト/リスタート―」
王都編-オープニング-最終回です。
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―少し長い沈黙。
やがて、ソニアがゆっくりと口を開く。
「はい…。」
ボロボロになったホテルの隅で、ソニアは俺とアイの間に腰かけながら語り始める。
「もともと、このホテルは母が経営していました。ですが…4年前に母が事故で亡くなり、父が引き継ぐことになったんです。」
「ただ…残念ながら、父には経営の才能はありませんでした。父はかなりクセの強い人でしたが、家族への愛情は本物でした。日に日に廃れていくホテルを見ながら、私と母に謝ることもありました。」
「父が私を好きなように、私も父が大好きでした。だから、私もできることをしなきゃって思って…。」
あの客引き…無理してたのか…。
「…辛かったわね。」
アイがそう呟く。
しかし、ソニアの表情が急に曇る。
「ですが、そんな努力も虚しく貯蓄が底をついたとき、信仰のご案内が届いたんです…。」
「信仰…?」
俺は背筋に冷たさを感じた。
「怪しいとは思ったのですが、国が関与していることと、当時の私たちが精神的に追い詰められていたことが重なり、王都の中心にある大聖堂を訪れたんです。
…その後のことはよく覚えていないのですが、”祝福の種”がどうだとか…。3日ほど何も考えられず、夢を見ている気分に陥りました…。」
「その後、私たちの口座には数百万の入金がなされていました。」
「昨日…あの化け物が出てきたのは初めてだったんです…!」
ソニアが震えながら言う。
その言葉で、俺はハッとする。
「俺たちが反逆することを知ってたのか…?」
アイの方を向くと…
「…っ。」
この反応…、まさか。
「…お前のせいじゃないのはわかってる。」
そういうしかないだろ。
一瞬、空気が止まる。
「…”生命の大司教”の仕業ね。」
…デカい肩書だな。
「アイ、何なんだそいつは…?」
「この国の統治に深く関わる、6人の賢者の一人よ。」
アイが重々しく語る。
「恐らく…ソニアみたいな人たちを、実験動物として使い捨てにしてる…。」
その言葉に、俺は恐怖と憎悪が煮えくり返る。
「人のすることかよ…!」
だが、これで次にすべきことがはっきりした。
「アイ…次のミッションだ。大司教の悪事の証拠を集め、追い詰める…!」
それを聞いたアイが頷く。
「よし、それじゃ―」
その時だ。
「あ、あのっ…!」
ソニアが口を挟んだ。一体、どうしたというんだ?
「わ、私も…あなた方の旅について行ってもいいですか…?」
オドオドしながらも、ソニアははっきりとお願いした。
「でも、危険すぎるぜ…?」
俺は崩壊したホテルをチラリと見る。
「今はホテルの復興の方が…」
「私は真実を知りたいんです!」
ソニアは俺の目をしっかりと見る。
「ホテルの方はその後で大丈夫ですから。」
―長い沈黙のあと、アイが口を開ける。
「うん。一緒にいきましょ。」
アイの顔は、ことの重大さを理解していた。
「ソニアちゃんのような人たちを、王都の連中が引き取ったりとかしないでしょうし、私たちといる方が安全だわ。」
確かに…国家権力がこの騒動の黒幕の可能性が高いなら、これが最善なのか…。
だが、これはソニアに言わねえとな。
俺は少し怖い声で、ソニアに聞く。
「俺たちのしている旅は、この世界の悪意―皇帝に対する反逆行為だ。ソニア、君は覚悟できてるんだろうな…?」
ソニアは俺の目を見てはっきりと答える。
「もちろんです!よろしくお願いします!」
…決まりだな。
「ああ…!こちらこそ、よろしくな!」
俺が答える。
「よろしくね、ソニアちゃん!」
そう言って、アイはソニアを抱きしめる。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん…ありがとう!」(上目遣い)
ソニアの高等テクが炸裂する―!
「グハッ…!」
…ったく、これには弱いぜ…。
こうして、俺はアイとソニアと共に、反逆の道を再び歩みだした。
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同時刻―
ステンドグラスから日が差す薄暗い場所で、
猫背の老父が眉を寄せる。
「…”L-56”と”L-57”に埋め込んだ悪意の反応が消えたのう…。」
それを聞いていた金髪の大男が笑い声をあげる。
「ワハハハハハッ!!反応した”反逆者”にやられたということか…”生命の大司教”殿!!」
少し離れたところで、修道服の美しい少女が静かに口を挟む。
「…笑い事ではありませんよ、”暴虐の大司教”さん。陛下にお伝えしなくては…。」
その後、彼女は暗がりから出ていこうとした。
「…必ず……してみせるわ…」
暗がりの中で彼女は呟いた…。
「ゲート…♡」
俺たちはこれから…恐ろしい強敵たちと、数奇な運命を辿ることになる―。




