九話 ダンジョンのかたち。
ゴブリンファミリーを暮らさせるとして冒険者が通れるところに巣を置くわけにもいかないだろう。そうするとモンスターの巣とダンジョン部分は分けたい。
地下に作る以上通気性は必要だし、炎魔法とか使われても酸素供給できるようにしたいところ。まあ地下で火をバンバン使うのは阿呆だと思うがさすがにアンリが使った火の呪文くらいは使えないと初心者が困りそうだ。
よって二階はひろーい洞窟に高さも十分に取って天井側に通気孔をいくつか通し、下に遊園地とかにありそうな迷路を作るとしよう。飛べるやつは飛んでいけばいい。ゴブリンが上級者に狩られなくてすむし。一階はネコカフェ。
ゴブリン階層の前にスライム階層を置くのもいいし、階層ごとの移動をワープの泉にしておけば魔力水の泉とかでフェイントをかけるとかして緊張感を演出できそうだ。ワープかと思ったら普通の泉!みたいな。
分体をチェックポイントに使い罠を仕掛けたりもできるな。分体も乾燥するから指示を与えた分体の本体は置いといて魔力水で増やした分身を設置しておけばメンテも簡単だろう。罠の配置は分け身にやらせたらいいな。
天井裏か床の下に分け身専用通路を置いてもいいし。ワープポイントを分体で置くのはもちろんありだが蒸発するからな。道もあったほうがいい。
なんなら隠し通路もほしいだろう。隠し部屋とか。
そうなると低い屋根のあるエリアも作るか。
……まあまずは穴を掘らないと駄目なんだが。スライムの種類はいろいろ考えてるからそれも楽しみに取っておこう。穴掘り分け身集団を作るぞ。
まあ分体で魔力集めや大河の水を組み上げているから分け身を増やすのもそんなに難しくはない。ただオレがいちいち飲んでプログラミングしないと駄目だが。プログラミングと呼ぶのかはわからん。
あと食料問題はあるか。排泄物の処理と衣食住の衣は本人たちになんとかしてもらおう。植物の魔物とかいればいいんだが。
「そういえばアンリってなに食ってんの?」
「その辺りの魔物だね。野菜が生る魔物とかイノシシとか」
野菜が生る魔物ぉ?! この世界きのことか若干メルヘンな感じだと思ったけどそういう要素もあるのか。
そういえば魔人が世界に呪文を刻み込んだとか言ってたしそういった品種改良とかも行ったのかもしれないな。魔物が荒れ狂う世界で畑とか広範囲に持つのは大変そうだし、それなら魔物と戦えば飯が食えるようにしたほうがいいか。
それならダンジョンの仕組みも作りやすいというものか。
一応各階層から帰れる仕組みにはするつもりだがこの物理がそのまま適応された世界だと地下に深く掘りすすめると圧力と熱が高くなってしまうから、せっかく広大なジャングルなんで幅の方を広く取って深さはせいぜい十から二十階層、深くとも二百メートルほどにしよう。
そもそも一階層から一階層にワープしたとしてもオレ以外は確認のしようがないしワープの数を増やしたら階層そのものはほとんど無限に増やせるか。階層というよりセクターだな。
一セクターから二セクターにワープ、帰り用ワープポイントや階層を選べるワープポイント分け身も設置して。
面白くなってきたな。ダンジョンマスター物の楽しいとこはやはり迷路の建築にあるよな。
トラップはいくらでも作れるからモンスターだけどそれも石を含んだスライム、砂を含んだスライム、武器に取り付いて振り回すスライム、箱に入ったミミックスライム、鎧に入ったスライムとかとか、いくらでもアイデアはある。
それにこの広大な森に住む魔物を適度に誘拐して地下に放ってやればゴブリンたちの餌にもなるしダンジョンモンスターも増えるというわけだ。
そうするとまずは植物たちをテイムしてみるか。
同時進行でダンジョンの穴を掘り続ける分け身を用意。建築パートは頼んだぜ!
おうよ任せな! というわけで本体と通信しながら穴を掘るぜ。
壁に染み込んで魔力でコーティングし、砕かれても修復するようにしよう。ブロックを用意してもいい。
ゴブリン居住区を掘る際に山のように余った土砂があるのでスライムを染み込ませて適度な形でブロック化させて固めておく。
これで砕かれてももともと土なので簡単に修復できる。大きめな石をそのまま建材に使って粗末な階層を作ってもいいし、きっちりブロックを積み上げてもいい。
なんなら分け身を増やしてブロック製造班にしてもいいな。
いや、単純作業は意思をもたせるときつそうだからスライム分体でやらせようか。ブロック作り、収納、積み上げ。
それなら穴を適切な大きさに掘り崩落を防ぐために魔力に意思を乗せて染み込ませよう。始原魔法で土をコントロールするってことになるんだろうな。
世界に命令して壊れにくくできるなら呪言を試してみるのもありかもしれん。
呪文の方は水系統はいくつも覚えたんだが他は難しい。自然に覚える上に指標もないとなるとなにをやっていいかすらわからんからな。
そのあたりはいずれどこかの学校にでも侵入するといいかもしれん。まあ義務教育なんてないらしいので貴族とかに混ざることになるな。
それはだいぶ先になるかねえ。まずはダンジョンで取れるお金やアイテムを集めないといかん。
ポーションボールを作りたいところだがオーラ水では傷を回復する濃度にならないんで薬草になる植物をすりつぶして体に溶かしこみ有効成分を分離してみる。
なんでできるのか説明がつかんがなぜか水の成分はなんとなくの感覚で分けられる。うーん、森が広大だから有効成分は集め放題だな。
ポーションボールはグミみたいな食感になってる。簡単に潰れたら困るだろうからオーラを込めて固めている。
聖水とか入れてるボールは表面だけ固くてぶつけたら裂けるけどその辺りの持ち方は冒険者が考えるだろう。オレにできるのは色分けすることだけだ。
緑、赤、オレンジ、白、黒、灰色とその中間色くらいならいけるか。青色ダイオードに苦労した昔の人みたいだぜ。青い植物もあるらしいからそれも捜索班の分け身に任せよう。
いやー、オレを増やせるの便利だな。仕事が早い。
全員で考えてるからアイデアはどんどん固まるぜ。
それでメインの分け身というか水たまり本体。
アンリとフライハイトを倒す約束があるから植物をテイムしつつ森の中を探そうか。
リス吉たちにも探させるがせっかくだからアンリといろいろ戦術を練るぜ。
基本はオレの分け身を八体くらい配置して隠れて攻撃を繰り返す感じか。さすがに竜王と呼ばれるようなドラゴンだし魔王の一柱でもあるわけでオレではブレスを浴びたら蒸発するからな。それなら数うちゃ当たる戦法だ。
地面を這いずる敵ならある程度倒せそうなんだけどな。今なら二トン三トンなら収納できるし囲んじまえば勝ち。
でもフライハイトはたぶん二十トンとか超えてくるだろうし囲もうとしても魔力で脱出されると思う。全部閉じ込めないと収納できないというのはなかなかいい制約かもしれん。いい制約というのも変だが、無敵にはならないな。
「とりあえずアンリの飯を取ってこよう」
「楽しみにしてるね」
そういえば塩も確保しなきゃいかんな。成分をわけれる特技がめちゃくちゃありがたい。塩ってその辺に溶けてるもん。
甘みだって果物を砕いて濃縮してやることができるし。化学工場を体の中に抱えてるようなもんだな。
そうすると毒物でもなんでもありか。なんせあまぞ〜んな森の中なんだからたぶんなんでもある。なんなら新しい生命だって生まれまくってるだろ。
水とジャングルって相性よすぎることないかね?
そして胡椒とか唐辛子に似た野菜もたっぷり見つかったので激辛野菜炒めを作ってアンリに食わせたがそういえばアンリは辛いのは好きなので嫌がるどころかおかわりまで所望された。
ちくしょう!




