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水たまりはダンジョンマスターの夢を見るか?  作者: 漆黒のいかや☆きいろRED(オリーブハマチ風味)
一章 勇者との出会い。

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十話 魔力充填。

 アンリの目的は竜王フライハイト討伐である。王から命令されて仕方なく、と言う事だそうだが、アンリはすべてを話さないが、きな臭いことである。


 そもそもいくら勇者でも魔王を一人で倒せるはずがない。


 四体の魔王を倒したとはいうが当然パーティーで、なんなら軍も使って倒している。一人で勝てるはずもない上にフライハイトが暴れ狂っているだとかの異常があるわけでもない、つまり緊急性もない。


 ……言いたかないが死んでこいという命令だ。


 ぶっちゃアンリが死ぬ気がしないんだが。ゴブリンエンペラーのゴツインと組手をしていたがゴツインはオーラ無し、双方素手の条件でだが五百キロは体重があるゴツインが吹き飛んでいた。


 コケたとか倒れたとかではない、吹き飛んでいた。


 五百年に一度のゴブリンエンペラーなのにゴツインはデカい体で申し訳なさそうに縮こまっていたが相手が化物すぎるだけだ。気にすることはない。


 ちなみにゴツインは自前の名前を普通に持ってた。ダガー族という一族なのでフルネームはゴツイン・ダガーである。


 アンリはファミリーネームがないがハテ村出身なのでアンリ・ハテと名乗るらしい。


 というかアンリ、コイツはガチで無敵じゃねえか? コイツこれで魔法戦のほうが得意とか言ってるんだけど?


 自分はバランス型の器用貧乏とか言い出したから土石流パンチ☆してやろうかと思ったわ。お前のような貧乏がいるか。


 オーガ定規で言うとゴツインは百オーガらしいからな。百匹と戦えるという意味ではない。百倍の魔力。なんなら一万のオーガ軍でも倒せない。


 それでとりあえず外のモンスターを片っ端から養殖する洞窟とかも作りつつゴブリンたちのねぐらも完成させた。


 外から寝藁も持ち込むし風通しも良くしてるしなんなら日光も差し込むようにしてる。


 各スライム体で光を取り込んで収納を通して送り込むというまあまあ器用なことをしている。そのせいで見た目黒いスライムが増えたがスライムは日光は天敵なので光を抑えるぶんには問題がなかった。


 分体たちは数年もあればジャングルを支配できそうなレベルである。


 そしてアルラウネたちにも魔力水を与えることでテイムしていった。


 アルラウネたちは魔力水が素晴らしいごちそうだと喜んでいる。地下の植物工場のようなものも作っているが光を生み出す呪文を分体に覚えさせて照明にするのも必要かもしれない。光量が足りない。まあダンジョンだしな。


 なんでダンジョンメイクをずっとやってるかって、そりゃアンリに死なれたくないからだな。


 さすがに鬼畜な自覚があるオレでも知り合いというか友だちに死なれたら辛いだろ。


 前世の、昔の友だちが山に登って自殺したとか滑落したとか噂が流れてきた時はしばらく泣いて暮らしてたしな。


 自殺するようなやつではなかったんで滑落だと思うが人生なにがあるかなんてわからないしな。


 なんというかクールで淡々と何でもやるやつだった。小学生の時に大喧嘩したことがあるが普通にその後はつるむようになったんだよな。


 あいつもこの世界に来てたりするんかなあ。


 まあそういうわけでアンリが死なないようにオレのパワーアップも図っている。


 魔力が大事なんだよなあ。オーラも使いこなせたほうがいい。


 分け身複数体で練習しては合体し分身しては修行するという超チートなやり方で修行しているので普通の何倍も成長が速い自覚はあるがそれでもアンリの魔力に遠く及ばないんである。


 どうなってんだこいつ。ひょっとしたらまだ全部見せてないし。ダンジョンメイクでバカみたいに魔力消費してるのでそのぶんはオレの成長も遅くなってるが。


「うーん、こうなったら奥の手だな」


「なになに、また面白いこと考えたの?」


「常にオレが面白いみたいに言うな。ゴツインの顔じゃねーぞ」


「ひどくない?」


 ひどくない。ゴツインの顔はしゃくれてるし角と牙がやたら多いしそのせいで寝づらそうだったり飯を食いづらそうだし進化なのそれ?ってなる。いつも面白い。それは置いといて。


「アンリの魔力をオレが全部吸収したらなんか変わるんじゃねーかなって」


「んんん〜。……うん。うーん。それもありかなあ」


 めちゃ渋ってるな。わかる。下手したらオレがテイムされるかもしれんからな。アンリはオレの意思を奪いたくはないんだろう。


 だがゴツインにたびたびオレの魔力水を飲ませているがまだ通信ができないんだよな。


 おそらくは他者の意識を自分の魔力で消化するような仕組みがあるんだと思う。持ってる魔力が強い存在はこちらが多少強めに意思を込めても純粋な魔力量として受け止めるんだよな。


 魔力の強化には魔力をより強めることも常套手段なんだけど、意志の強さで瞬間的な魔力を高めるすべはあるらしい。例えば呪いとか、だな。


 くたばった魔物が最後に恨みや怒りを相手にねじ込んで生命力を奪い続ける呪いの根を植え込む。


 魔力自体は意思を反映するので相手を思いやるいわゆるおまじないも効果があるが、呪いとまじないは漢字で書けばどちらも呪いだからな。意識を強く相手に残すと影響はどんな形かは不明だが残るということだ。


 まじないでバフをかけることもできるらしい。もっとも呪文もあるので普通の人はそちらを使うそうだ。


 まじないは魔法使いの修行をしていなくても使えるメリットがあるが。


 呪言もそのまじないや呪いを極端に強くして言葉に込めることで自分の意志に、よりイメージに沿った形に現象を引き起こすことができるということだ。


 まあそういうややこしいのはいい。置いといて、魔力だ。


 推定だがこのスライムボディに高純度で収まってる魔力量はアンリの魔力量の一パーセント以下くらいのもんだと思う。


 他の分体やら分け身を活動停止にして全部の魔力を集められたとして勝てない気がする。


 洒落にならんのである。人間のボディにそんなに魔力を込めたらどうなるか。


 オーラで満たせば全身が水のように柔軟に、鋼よりも硬くなる。冗談ではなく手刀でオーガの首をハネられる。


 土石流パンチを叩き込んでもたぶん生きてる。というか窒息さえするか怪しいんだよな。


 呼吸を止めてもオーラを回していると大丈夫らしい。オーラも極めたら人が災害のようになるんだ。


 それがアンリはオレの百倍強いんだ。しかも目測なのでもっとあるかもしれん。


 ならオレがそれを一日分もらっちまったら相当に強くなるんじゃね?という、まあ単純な話なわけだが。


「やってみようか。まあ吹き飛んだりはしないと思うし。……しないよね?」


「やめろ不安を煽るな」


 まあ分け身をいくつか分けといてその分け身のひとつに魔力を注いだら、本体だけやられなきゃ大丈夫じゃないか? それでやってみよう。


「よっし、覚悟はいいね? こおおおお」


「うおっ、こええ!!」


『すさまじい。人間とは思えん』


 アンリが呼吸法のようなもので魔力を引き出していく。目の前に山が出現したような錯覚。


 周囲の動物やたぶん戦闘狂のオーガの気配までものすごい速度で遠ざかっていく。一緒に見てるゴツインが震えてるほどだ。


 これは災害だわ。オレのなんちゃって土石流の比じゃない。


 それでいて澄んだ魔力。おそらくは意識をできるだけ込めずに純粋な魔力として高めているんだろう。見たらわかる。テクニックも半端ない。


「行くよ!」


「おう! こいやあっ!!」


 気合一閃、アンリの魔力がオレの分け身の水たまりに叩き込まれる。


 おおおおお、魔力が経路を通って流れてくる! 半端じゃねえ!


 なんか健康にいいドリンクが全身にエネルギーを送り込むのを何倍にも高めた感じ! テイムはされなさそうだがクセにはなりそうだ!


「おおおおおおっ」


「うはーーーー!!」


 激流のような魔力をできるだけ体内に留める。しかしこれは多い! 多いぞ!


 なんと数分もかかってアンリはオレに魔力を注ぎ込んだ。どんだけの量あるんだよ。


 アンリはケロッとしてる。魔力を消耗してるふうでもないな。


 この世界の生物は魔力とともに進化してきたわけで生命力を保つのにも魔力が使われている。そのため魔力を失うと体も動かなくなるし体調も崩すんだよな。


 アンリはケロッとしてる。たぶんブレーキをかけなれてるんだろう。どんなに消耗しても戦線離脱できるように。


 やっぱり勇者なんだなあ。ただ魔力を注がれただけだがこいつが人外なのがよくわかったぜ。


 さて、その魔力でオレはどうなった?





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