六話 呪文。
あっまぞ〜んな川に分体スライムを置いといて適度に魔力集め、分体増やし、水集め、とやらせて無限に増やす仕組みを作った。
そのあとアンリを飲み込んでテレポートしたぞ。魔力で接触しないようにすることで服を濡らしたりはしてないが嫌そうだった。
本体側でもスライムを増やしていく。なんせこれ普通のスライムなものだから冒険者や魔物に見つかったら潰される。
ちなみに普通はスライムは寄生虫とかいるので人間は飲まないらしい。オレはハーブを体に入れて腐らないように寄生虫も寄り付かないようにしておこう。ほんのりミント味だけどこれはこれでいいだろう。
オレは味も意識したらわかるがアンリに飲ませて感想を聞いた。ほら、辛かったらからかえるからな。甘いらしい。
唐辛子みたいな辛味がありそうな葉っぱや草の実もいくらか刈っておく。フライハイトペッパーとかいう激辛胡椒もあった。
スライム分体の分隊に刈りに回らせてる。たまに食われてるが。ぶんたいのぶんたい。変態の編隊はこわい。
ストレージに荷物は入れてるから分け身が多少食われても困らない。ヒットアンド食われる! アイテムはオレの物! オレは天才だあぁ!!
まあアンリに言われて石とかをスライムに含ませてたら簡単には食われなくなったんだけど。一回思いついてたじゃん。オレはアホかもしれん。
草刈りには汚泥スライムを行かせることにした。例の辛子とかも含ませておく。体液を分離できるのは便利だよなあ。人間なら遠心分離器とかが必要だろう。
それで自分の魔力が高濃度になってきたので穴を掘り始める。ダンジョン? いや、水源につながってまずは水たまりから泉に進化しようかと。
そのうち森の四方にオレの分け身となる水たまりを設置する予定ではあるがやはり本体は堅固に守られてたほうがいいと思う。地下水脈を辿りいずれ地底湖を支配しようかなって。
ちなみに水たまり本体は地続きなら移動できるようだ。水たまりより深さが増した穴を掘り本体から流れて引っ越してみたらできた。
それで、水たまりの体内を別の分け身に任せて水たまりの底に穴を掘らせている。
自分の意識を乗せなければ苦行もなんてことはない。ブラックホールの時と同じだな。
掘った土はストレージを通し他の分け身汚泥スライムから地上へ排出。自動穴掘り分け身の完成だ。
ダンジョン掘るなら山もできるかもな。ただスピードはメチャ遅い。穴を掘るのは崩落とか温度とか圧力とかいろいろ問題が起こるだろうし時間がかなりかかる予定。
それで本体の方はアンリにこの世界の魔法について習う。いろいろアンリの話を聞くのは面白いがまずは魔法だろう。
なんせこの世界には魔王と言うのが何十体もいるそうで、この森にもフライハイト含めて五体ほどいるのでウカウカしてたらこの森から追い出されるかもしれんからな。不滅でも常に飲まれてたらここにはいられない。
なので戦うすべを身につけるのである! さあ、アンリ先生、お願いしゃーっす!
「まずはこの世界で一般的な魔法、呪文だね。これは世界に刻み込まれた呪文を唱えることで難しい魔法が簡単に使えるというものだよ」
ぐぅ。やっぱり勉強嫌いだなぁ。寝れないのに寝た気になってたわ。寝れないのは良いのか悪いのか。
「この呪文というのは昔の魔人さんが集まって作ったと言われてるんだ。その頃は呪言という力でいちいち魔力を操作しては複雑な現象を手探りで起こしていた。今も呪言は使われているがとにかくコストが高いんだよ。イメージや手順を明確にして強く命令することで世界が応えるんだ。ちなみに友だちの魔女さんは自由に使えてたよ。ボクもちょっと使えるけど」
ほうほう、世界に命令できるのか。オレが水を使うのと似てるのか?
「君のそれは始原魔法と言われるやつだね。魔力を操作して力の流れをコントロールすることで物を持ち上げたり投げたりできる。自然にも起こるし身体強化も半分は同じ理屈だね」
「はんぶんね。あ、オーラか」
「そうオーラ!」
おらおらー。魔力はオレが分け身に与えているように独自の魔力、個人の魔力という変質をしている。それをさらに変質させ生命に力を与えるような性質に変換したものがオーラだ。
要するに魔力の一種ではあるしそのため魔力とも反応する。ただ倍になるような強い相乗効果があるようなものでもなく組み合わせに意味がないことはないが総量が大切なんだと。
人によってはオーラは使えるが魔力は使えないということもあるらしい。まあ右利きがあんまり使ってない左手は流暢に使えないような感じらしいが。
魔力がない存在は物理的にありえない感じだな。
「とりあえず呪文はどうやったら使えるようになる?」
「一般的には自然について詳しくなる、呪文の行う現象を見る、理解する、そして世界に記録されている呪文が自然と頭に浮かぶ、この過程を経て使えるようになる」
「一般的じゃなかったら?」
「鋭いね。呪文を覚えるスフィアというものを錬金術で作れるんだよ」
おお、錬金術。ただ作れる錬金術師は少ないし高価なので普通は適正がないと使えないのもあるし自分でいろいろ学んで習得するのが一般的らしい。
そりゃ何百万も払うなら一年努力したほうが安くつくよな。貴族は別として。
それに呪文は十個も覚えれば立派な魔術師となれるしそれくらいなら修行を十年したら辿り着けるそうだ。
そもそも戦闘は武器の種類より経験のほうが大切だとアンリは言う。勇者の言ってることだし相当実戦的な話なんだろうな。
「それで実際に見てみる?」
「見たい!」
「ははは、もちろん見せよう。『火弾』」
ボン、と炎がアンリの指先から放たれた。茂みに着弾して燃え上がる。
……。燃え上がってんなあ。
消火しょうかしょうかしょうかあああああああああッ!!
ストレージへ川の水を直接送らせて収納して即取り出しを続けることで水流にし、燃え上がる茂みを水浸しにする。これ使えるな。それはおいといて、
「アホかあああああああっ!!」
「ごめええええん! チョイス間違えたあああああっ!!」
こんなマヌケが勇者のはずないよな。うん、コイツは勇者なんかではない。ただのぼんやりさんだ。や〜いぼんやりさん。
「面目ない」
「めったに聞いたことねえわ面目ないとか」
まあ呪文がすごいのはわかった。ただ今の呪文くらいなら火がオレの天敵とはいえオレに放つのは無駄なレベルでしかないな。
ただオレが覚えておくのはいいかもしれん。例えば油を大量に備蓄して火の海にするとかできるしな。オレは地下に逃げれるし。
地下にオレがとどまれる程度の数十センチの球状の空間をもう確保してある。分け身が一晩でやってくれました。これで残機がある限り無敵だ。
最低百機こさえとこう。マ○オも百機いたら負けないしな。まあ魔力水の水量を確保するだけだけど。
穴は引き続き掘り進め地下水探索、アンドあるなら洞窟を探す。本体を隔離空間に置いておこう。まあ分け身をあちこちに置いておけば本体がどこになっても関係ない気はするな。
呪文の練習は分け身を強めに作ってやらせることにした。オレは今後森の四方に転移の泉を設置する予定なのでそこに辿り着くだけの戦闘力を身につけることにする。
石とか土はいくらあっても困らんが収納しておくと場所を取るから地下に倉庫を作ろうかとも思う。
ダンジョンを作るなら崖とかわかりやすい入り口があったほうがいいか? とも思うが普通に自分で地下道の入り口をこさえよう。
崩落しないように壁を強化する練習もしておかなければ。
分け身を土に染み込ませても意識を失わせないようにするには意識の範囲を決めとにかく濃くする必要はあるようだ。だができる。
魔力集めがとにかく大変だが何年もかけたらできるだろう。別に明日ダンジョンを開かなくてはならない、なんて期限もないんだ。ゆっくりやろう。
それからも何日も修行と採掘。アンリがいるうちは戦闘能力の強化だな。
ちょっとひらめいて呪文を覚えた分け身をさらに魔力水を与えて量を増やし二つに割る。片方をアンリに飲んでもらう。
「え、ええ〜、呪文覚えた。水球!」
よし、疑似スフィアを作れたぞ。思いつきだがやってみるもんだ。
魔力は意識を伝える力だ。エネルギーに指向性を持たせるのもあるが主には意識を相手に伝える。それなら経験値を相手に伝えることもできるはず。
目論見が当たったな。やはりオレは天才かもしれん。ただ他の記憶とかまで渡さんように気をつけないといかん。
水質を分けるみたいに記憶もわけれるのがまた魔力ってやつの性質なんだろうな。便利だ。
触ってみた感じとか熱量とか、感触レベルでも操作ができるからマイクロレベルの操作も可能ってことだ。ただまあ瞬間的にできるというものでもないな。
ダンジョンではスフィアとポーションボールを作って置いておけばいいのではないか。木を組んで宝箱っぽくして入れておけばいい。
宝箱を作ると宝箱を取られる可能性がある。その時は収納してむりやり取り返そうかな。
いろいろ本当にたくさんやることがあるが、とりあえず作業はたくさん増えた分け身にやらせて本体はスライムとして森の敵を倒して回ることにする。
勇者アンリもいるしまあ大丈夫だろう。問題はないはずだ。
こういうのをフラグというのだよなあ。
チートと言うよりグリッチというべきか。




