五話 あっまぞ〜ん。
その後、オーガが音を立てていたのがやはり仲間の誘導のためだったようで静かに数体のオーガが現れる。
アンリは剣と魔法、そしてオーラらしきもので斬りつけたりしてあっという間に殲滅した。
オレがなんかするスキもなかったわ。お茶飲も。無いけど。
「あ、そのオーガってもらっていい?」
なんか実験に使えるかもしれん。一匹だけストレージに入れてみる。
「いいよ。なんに使うの?」
「戦闘訓練で実物があったほうがいいし血液とか干渉できるなら戦い方変わるし魔力注入とかいろいろ試してみたいからな」
「実験するんだ?」
「命を冒涜する〜とか思ってる?」
オレはそんなことは思わんな。技術の進歩のほうが多くの命を救えるし身内の命と他の生き物の命じゃ重さは違うしな。なにより自分のほうが大切だ。
「変なこと言うね。命を冒涜しちゃ駄目なら戦えないじゃん」
「そりゃそうだ」
覚悟決まってる方の人でしたか。当たり前か勇者だし、命は大切で〜なんてタイプではないよな。人間は守るかもしれんけど。
「さて、それで水を運んでくるんだったね。水場どこ?」
そういえばこいつ水が無くて彷徨ってたんだっけ。この辺りの地理を聞いてみたがどうもこのフライハイトの森というのが平原だったとしても横断するのに一ヶ月はかかる規模らしい。そりゃ迷うわ。大陸級じゃね〜の。
ちなみにここは森の西側に近い真ん中より南の辺り、と言うことらしい。アンリは西から来たんだと。
西にはキゲン王国、さらに西にはセメントス帝国、東にはモンゴー帝国と山の中の小国、エンペラ王国、南東に砂漠の国ウンガがあるらしい。
いっぺんに言われても覚えられん。
まあ西のアンリの故郷のキゲンが一番大きいらしく森を囲む国はセメントスを除いた四つだけらしい。砂漠ってオレが一回枯れたとこだな。いつかオアシスでも作ってやるか?
とりあえずアンリはここにオレの魔力があるのでそれを頼りに周りを探すことにしたらしい。なんでもそこそこ強い魔力なら数キロなら余裕でマークできるようだ。さすがだな。
そして川を見つけたらオレがすぐストレージに水を入れるために、スライムを一匹大きめのを作って持たせてやることにした。
スライムの大きさが小さめでも込める魔力によっては自分とほぼ同じ意識を持てることが発覚した。
まさに分け身なんだよな、このスキル。分身って言うと中身なさそうだけど分け身なので意識レベルや知識レベルが様々ではあるが、能力も渡せる。ストレージも強い分け身なら使える。
もちろんストレージは分け身と本体で共有だ。めちゃチートだな。これでダンジョン作った時の物資の輸送が相当楽になるな。
アンリはさっさとスライムを脇に挟む。そこかよ!
「え、嫌? 股がいい?」
「よくねえよ! カバンに入れるとかあるだろ!」
股は流石にやめろ気持ち悪い! 一応アンリは肩掛けのカバン持ってるし。ただなんか食べ物とかたくさん入ってるらしい。
「あのなあ、それならオレがストレージに入れといてやる。スライムに頼んだら好きなの出せるから」
「すごい! それは便利だね! 確か友だちの魔女ちゃんが無限収納バッグ作れないかって研究してたんだよね!」
その魔女転生者だろ。まあこのスキルはマジモンの神のスキルだからそうそう再現できなそうだけど。
ただこの世界の魔法体系を聞くとまったく無理ではなさそうなんだけどな。それはそのうち研究するか。
オレは自分の分け身を魔力バッグとして売り出すのも有りかもとか考えてアンリが水源を見つけるのを待つことにした。まあ川はこの森に何本か走ってるらしい。
大陸規模の森だからな。ただ北の方は狭くなっててそっちを通ってキゲンとモンゴーが戦争してるらしい。うーん。
北に行って落ち武者狩りしてダンジョンのドロップアイテムの武器防具を確保しておくのはいいね。窃盗は良くない? そんなのオレが気にするわけないだろ! 山賊王にオレはなる!
そもそもダンジョンマスター目指すなら人類を楽しませるにしても完全に味方とかは面白くない。やっぱり命の危険もなく資源だけ持っていこうとかやられたら嫌だしな。そこは取引ってもんじゃね?
待ってる間もスライム分け身をいくつか作ってそれぞれに魔力を貯めさせる。自分の体にスライムを戻すとそのスライムの視点の記憶もオレが見たことになってる。
そんなに意識が強くないのでほんのり思い出す感じだけど、強い分け身と混ざったら混乱するかもわからんな。小まめに戻すのが吉か。
ちなみにアンリが持ってったスライム分け身は相当に魔力を高くしてるので意識の切り替えができる。本体の水たまりは無くせないけどスライムとして旅ができるということだ。これはラッキーだろ。
で、クソ暇なのでアンリの方に意識を移して、からかって遊ぶことにする。
「カバンパッカーンパッカーン」
「うわわ、マリーちゃん急になに?!」
「暇だ〜。遊べ〜」
「いいけどパッカーンやめてくれる? ちょっと走り辛いし!」
カバンをパッカーンパッカーンすると駄目らしい。触手を伸ばして頭をなでてやろう。髪の毛クルクルでまた葉っぱ絡んどる。
鑑定したらフラ森クロモジ・葉と出た。フライハイト大森林を短縮して表記してるらしい。
フラ森原産植物や動物はかなり多いとのこと。アンリによると傷薬の材料のひとつになるらしいので収納しておく。ちなみにストレージは魔力を高めまくったのですでに一トンは収納できるぞ。
一トンは多そうだけどストレージとしては二百枠くらいなんだよな。今のとこ五キロ一枠になってる。このバランス変えられないのかな。一応五キロをまとめて十キロにするとかできるけど。
それに二百種類も収納しておく物もないんだよな。アンリの荷物はひとまとめでストレージ四つ使って入れてるし。
二十キロ近い荷物持って森で戦ってるとかすごくね? 今はスライム一匹だから数キロだぞ。
「魔物多いね〜」
「そうだな〜。オレもそのうちちょっと戦ってみるか」
アンリが魔物を倒しつつ走ってる間、一応アンリのカバンの中から周辺の植物や石とか鑑定しまくって良さそうなのは集めているが一トンはそんなに多くないんだよな。水たまりの近くに倉庫になる穴蔵でも掘っておこうかな。
本体側からストレージにスライムの小さいのを入れて分体から取り出す。
オレが収納できるのでスライムができない理由がないよなあ。そして取り出す。実質ワープポイントだな。
試しにリス吉をスライムに包ませて収納したらできた。……たしかにスライムがなにか食った時に中身だけ別とはできないだろうけど。
めちゃチートじゃねーか! オレだけテレポーターじゃん!
ダンジョンで一階に戻るテレポーターとして分体スライムを設置。いいな!
「そういうわけで川を見つけたらアンリもテレポートするからな!」
「ええ〜、なんか食べられてるみたいで怖くない?」
「わがまま言うんじゃありません! 便利だからいいだろ!」
ちなみに分体が水を飲んでそのぶん収納、オレが取り出し、魔力を注いで収納、を繰り返せばあっという間に水量が増やせる。魔力が集まればな!
簡単に集まらないから大変なんだよ。まあやるけど。スライム増やしていけばいいか。バケツ代わりにはなるな。
「あ、大きめの川があるよ」
「とうとう着いたな。おーう、母なる大河」
なんで対岸が見えないほどデカいんだよこの川ぁ!
そういえばこの森自体馬鹿デカいんだったわ。あっまぞ〜ん。
チート発覚。




