7、コルドの過去①
おはようございます、こんにちは、こんばんは!
①、②と続きます。
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それから数日後、王宮の応接室へ集まることになった。いまだにアランは目を覚まさない。
何が語られるのか正直怖い。ここにいる人たちが悪魔を怖がっていないことに関係があるのだろう。
この国は特別な何かがあると実感せざるおえない。
隣には王妃ミレーナがいる。コルドから守ってくれた優しい人。それゆえに安心なのだ。
口火を切ったのは国王であるライルだった。
「まずは何から説明したらいいのか――そうだな、若葉さんはコルドが悪魔だと思っているんだったね」
「はっはい……」
「安心してほしい。コルドは決して若葉さんの思う悪魔ではない。ラズマン殿は悪魔だが、人をむやみに攻撃しない。我が国は悪魔や魔物と共存しているのだよ」
薄々気がついていた。根本的な認識の違いがあることを。そこで知っていく様々な秘密に若葉の心は置いてけぼりになっていく。
「でっでも、コルドの目が赤くなったんですよ……あたしの国では赤い目は悪魔の象徴なんです。魂を食べる怖い生き物なんです。それに共存なんてできるとは思えません」
チラチラとコルドとラズマンの方を見る。事実を認めることができなくて少しばかり声が震えた。
目が合ったコルドはやるせない表情をしている。何かを言いかけては止めを繰り返し、口が鯉のようになっている。
それを見て、何も思わない若葉ではない。しかし生贄にされたくない思いの方が強い。それに騙されていた悲しみが今もある。
「あぁそうか。肝心なことを言っていなかったな。コルドは人間だよ。俺たちは同じ腹から生まれたんだ。正真正銘俺の弟だよ。目が赤くなるのは、闇魔法のせいだな」
「闇――魔法?!」
それこそファンタジーの世界でしか聞いたことがない。
「驚くのも無理はない。闇はあまりいいイメージがないからな。それとな、かつて我が国も人間と魔物は敵対していた。だから今の若葉さんのように民たちは魔物や悪魔を怖がっていた。しかし弟コルドによって争いに終止符が打たれたのだからな」
その声に反応したコルドは、わずかに肩を揺らす。
「えっえっえっ――はぁっ!?」
情報量の多さに頭がパンクしそうだ。何も言葉にできない。語彙力が何処かへ消えた。今度は若葉の口が鯉のようだ。
するとミレーナが背中をさすり落ち着かせてくれた。
「少し発言をしてもよろしいか」
ラズマンが突然声を上げた。
「なんだ申してみろ」
若葉は怖いのかうつむいた。
それにいち早く気づいたのはコルド。
「その前にいいか――残念だが若葉が悪魔を怖いと言っている。僕は若葉を怖がらせたくない。だからラズマンには姿を変えてもらいたい」
「あぁ気づかず申し訳ない」
悪魔が謝るなんて聞いたことがない。優しいはずもないのにすぐに黒い子犬へと姿を変えた。
「えっ……可愛い」
うっかり口から本音が出た。場違いにもほどがある。
いくら見た目が愛らしくなったからと言って、中身は魂を食べる悪魔。騙されてはいけないと、首を大きく横にふる。
たったこんだけのことで、気を許しそうになるなんて若葉も大概だ。
込み入った話の最中なのに、そぐわない発言をしたことを誰もが聞かなかったことにした。
「それで? ラズマン。何か気になることでもあったのか」
「えぇ伴侶様に聞きたいのだが、魂とは人間で言うところの心臓のことか」
「はっはい……」
若葉は力なく答える。
「どうやら誤解があるようだが、我々は魂自体は食わん。そこに宿る悪しき感情を食らうのだ。その感情を食らえば食らうほど成長し、我のような人型を取るようになる。それが人の言う悪魔なのであろう」
この話を聞いて、若葉の中で悪魔の概念が変わりつつある。
「嘘でしょ。ならあたしはまだ生きていられるんだ」
若葉の言葉を拾ったミレーナは少し焦りの表情を見せる。若葉の瞳を優しく見つめる。
「もっもちろんよ! さっきも言ったけれど、コルドはれっきとした人間よ。わたくしが保証するわ。それにね、恋愛ごとに無頓着だったコルドが伴侶を見つけたと嬉しそうに報告してきたの。わたくしも義妹ができるんだって嬉しかったのよ」
若葉にはどうしても理解できないことがある。
「あの……少し聞いてもいいですか?」
「えぇどうぞ」
ずっと気になっていたこと。
「この国で伴侶が生贄を意味する言葉ではないとすると、ごく一般的に考えて結婚する相手ってことですか」
ミレーナは何だそんなことかと言わんばかりに胸をなでおろす。
「えぇその通りよ」
「それだとあたしコルドにプロポーズされた覚えないんです。だからてっきり生贄として魂を捧げないといけないんだと思って……」
チラチラとコルドの様子をうかがう。まさかの発言に、ミレーナの笑顔が固まった。コルドの方をキッと睨むがコルドも寝耳に水だったようで複雑な表情をしている。
「どういうことなの!? 同意も得ずに無理やり連れてきたってこと」
「そんなはずはない! 同意してくれた。だから国に連れてきたんだ。若葉……そうだよな」
目が頷いてくれと訴えている。すがるような目線を向けられても、身に覚えがない。当然のごとく首を横にふる。
「若葉さんは違うみたいよ」
「だがっ、ずっと一緒にいたいと伝えたら、確かに頷いてくれたんだ」
「えっ……」
(何言ってるの!? わけ分かんない)
若葉の頭の中は大忙しだ。
「頷いたら求婚を受け入れたも同然だろ! それで番関係が成立するんじゃないのか」
「番……? 今番と言ったわよね」
ミレーナは深いため息をつく。
「ねぇラズマン。一応聞くんだけど、魔物同士の求婚はどんな感じなのかしら」
「そうですね。求愛をして相手が受け入れれば、即番となります。番とは人間で言うところの夫婦ですね」
若葉はようやく理解した。このかみ合わない現状を。
「待って待って待ってーそうしたらあたし……知らない間にプロポーズされてて、知らない間にそれを受けてたってこと!? 信じられない。結婚してとか、しようとか言われたら分かったのにぃ。じゃなくて普通はきちんと言葉にするものでしょ」
「そうなのか!?」
普段冷静な彼が慌てる姿は何とも貴重でおかしくてたまらないと思う若葉だった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回お会いできたら嬉しいです。




