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6、始まりにすぎない再会

こんばんは、おはようございます、こんにちは!


よろしくお願いいたします。

 一件落着の雰囲気が漂っているときだった。突如としてけたたましい音が部屋の奥で鳴り響く。


「えっ警報機!?」

『侵入者を感知しました。施錠を開始します。捕縛を開始します。捕縛を開始します……』

「きゃあ」


 警報音とともに、一瞬のうちに光の縄で縛られる。スルスルとヘビのように肩から爪先まで光がまとわりついている。

 若葉は床に転がされる寸前でアランに抱きとめられる。初めて会ったときも思ったが、コルド以外の異性と触れ合ったことがないので、ものすごく恥ずかしい。


「あっありがとうございます」

「いえ当然のことをしたまでです」


 コルドとは違う異性の香りに包まれながら、どことなく悪いことをしている気分になる。別れ話をしていない以上、恋人関係は継続中なのだから。


 一方のミレーナはラズマンに抱きとめられる。

 数分後に『捕縛が完了しました』と声が聞こえた。アランとラズマン以外が縄にかかったのだ。


「これは一体どういうことかしら」


 ミレーナは心底不思議そうに呟いた。幸い言葉は交わせるようだ。


「あっそう言えばもう一人仲間がいたんです。もしかしたらその人が何かしたのかもしれません」

「そうなのね……でもおかしいのよ。だってこの魔力は――」


 ミレーナが何か言いかけているときだった。部屋に二つの異なる魔力が現れる。それはクルーシー王国の国王陛下であるライルと王弟コルドのものだった。

 アランの家には武器庫があり国の重要なものが保管してある。もしその武器に触れる者がいたら家に帳がおり、二人が強制転移してくる仕組みになっている。


「えっ……コルド?」


 全く予想していない人物が現れた。思いのほか声が響く。一番会いたくなかったはずなのに、見知らぬ土地で再会したからだろうか、顔を見ると少し安心した。


「若葉!?」


 探し求めていた()()の姿に、コルドの心は喜びと悲しみがないまぜになったよう。

 コルドの声に今度はアランが反応を示す。


「アラン待て! こっちを向くな」


 ライルが突然大きな声で叫ぶ。理由は誰にも分からない。

 制止の声はわずかに及ばず、当然のごとくコルドとアランの目が合った。

 二人の目が共鳴するように光るとコルドは脱力するように片膝をつく。


「くっ――はぁはぁはぁ……」


 どうしたことかアランはそのまま意識を失う。


「えっ待って何が起こったの!?」


 若葉は支えのアランが意識を失ったので、うつ伏せでアランの上へ乗った。身体が拘束されているので動くに動けない。


「やだー誰か助けて」


 体勢が微妙に恥ずかしい。顔に熱が集まっていくのを感じる。

 コルドがすぐ気づいて顔をこわばらせながら抱き寄せる。心なしか震えているのは気のせいではない。それは怒りによるものかそれとも悲しみから来るものなか推し量ることはできない。


「若葉……大丈夫か」

「うっうん」


 しっかりと目を合わすことができない。

 気まずさのあまり軽く返事をすると、すぐに目線をそらした。


「ライル陛下! アラン団長はどうなったの!? 今のは――あの光はどういうことなの」

「まぁ落ち着け。正直俺にもよく分からん。ただ思い当たる節があるのは確かだが……その前に拘束魔法が発動された経緯を聞いてからでいいか」


 チラリと横目で床に倒れている二人組を見る。


「えぇそれもそうね」

「まずは拘束魔法の解除が先だな――デストーロイブライト」


 体中を光が包み軽くなる。何となく窮屈だったものが解放される。


「それで? そこに転がっている者たちは何者だ」


 するとラズマンが今までのことを説明した。


「ふむ。ということは隠れていた仲間が武器庫に入ったのだな」

「武器庫にですか」

「あぁそうだ。この魔法は誰かが武器を持ち出そうとしたときに発動するものだからな。解除も俺とコルドにしかできない。何人組か分からんがこれ以上は何も起こらないだろう」

「ちょっと待ってください。その話、私は初耳なのですが」

「あぁそうだな。これはアランを驚かせるためのトラップだからな。本人に知らせたら面白くないだろ」

「陛下――人が悪すぎますよ」

「はははははっー」


 少し穏やかな雰囲気が流れ若葉は心底安堵する。どうやら国王陛下はいたずら好きのようだ。

 その反面でコルドに騙されていたことを思い出した。

 皆がライルの話に注目している。今が逃げる絶好のチャンスだとゆっくりと玄関口の方へ歩き出す。ようやくツキが回ってきたのだ。


「伴侶様、どちらに行かれるのですか」

「へ!?」


 気づかれると思っていなかった。ラズマンは気配の察知能力に優れているのだ。

 思いっきり目を泳がすと、ミレーナの後ろに隠れる。先ほどのやり取りで一番信頼できると思ったから。


「あたし、コルドの伴侶になった覚えはないし。伴侶ってこの国では生贄のことでしょ」


 コルドは眉をひそめる。


「はっ? どういうことだ。生贄とは何だよ」

「あー待て待てこれ以上は何も言ってくれるな。話がややこしくなる」

「ですが兄上! 僕は」

「コルド殿下落ち着きなさい。とりあえずこれだけは言わせて。若葉さんは悪魔を怖がっているのよ」


 ミレーナの放った言葉には、悪気などない。しかし受け取る側は違った。

 友を拒絶された痛みに、コルドの心には暗い影が落ちる。


「何だと!」

「だから、その話は後にしてくれ。侵入者の処理もしなければならいだろ。アランもいつ目覚めるか分からない状態でこのまま放って置くわけにはいかない。だから一旦皆王宮へ来てくれ」


 ライルがその場を収めたものの、コルドは納得のいかない表情をしている。

 それから王宮へ向かった若葉たちは、離宮に案内された。

 今日は事後処理もあるし疲れているだろうということで、話は後日となった。

 若葉の気持ちを考慮してその日はそれぞれ別の部屋で過ごすことになった。

 コルドは最後までごねていた。今は何も聞かずそっとしておくことが一番いいと説明すると、仕方なく折れた。

最後までお読みいただきありがとうございました。


次回はコルドの過去が語られます。

またお会いできれば嬉しいです。

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