番外編:コルドの誤算
おはようございます、こんにちは、こんばんは!
よろしくお願いいたします。
これは若葉とアランが出会う少し前のこと。
コルドは混乱の最中にいた。
若葉を我が城へ送り届けたあと、こちらの世界で突然いなくなる若葉の記憶を、魔法で改ざんする必要があった。
聞こえは悪いが友達や家族そして職場に関する者たちの記憶を新しく書き換えるだけだ。
魔法は成功した。
問題なのは若葉が全面鏡へ姿を消す瞬間「嫌い」と言っていたこと。
鋭利なもので傷つけられたように心がうずく。
結婚するのだから一緒に暮らすのは当然だ。
同意も得ている。何が問題なのかわからない。
思い出すのは拒絶する視線だけなのが苦しい。
それでもコルドは気力をふりしぼって国へ帰った。
城へ着くと真っ青な顔をした側近が慌てた様子で近づいてくる。
「コルド様! 伴侶様がまだこちらに到着しておりません」
「はっ? どう言うことだ!」
悪い知らせに大声が出る。
「はっはい! 召喚の儀に参加していた者の証言によりますと、一瞬魔力が途切れたようです! 魔力回路をたどったのですが正確な位置までの特定には至っておりません。ただ、クルーシー王国北東の森周辺におられる可能性があるということです」
「何っ!? 魔力が途切れただと」
「えぇそのように申しております」
コルドはコメカミを押さえる。
若葉の「嫌い」という言葉のせいで、魔力がぶれたのだ。
ふがいなさに奥歯をギリギリと嚙みしめる。
「そうか――悪いが捜索隊を出してくれ。彼女は僕の魔力が込められたブレスレットをしている。魔力をたどれば見つかるはずだ。どうやら魔力を使いすぎたようで二〜三日は、動けそうにない」
「かしこまりました。早急に手配いたします」
コルドは手のひらを開閉した。
自ら探しに行けないことに、幾度となくため息がこぼれる。
一刻も早く若葉をこの手で抱きしめたい。
知らない土地に放り出されて、不安になっているだろうから。
若葉が去り際に残した言葉の真意も聞くつもりでいる。
嫌われるようなことはしていないはずなのだ。
とてつもなくやるせない。手のひらを抱きこみ、太ももを叩く。
「グッ!」
声にならない言葉がもれる。
しばらくすると捜索隊が戻ってきた。
状況は最悪だった。
「コルド様申し訳ありません。ちぎれたブレスレットだけがあり、伴侶様の姿はどこにもありませんでした」
「なんだと!!! 確かなのか」
「こちらブレスレットにございます。もしかしたら、誰かに誘拐されたのかもしれません」
「兄上――クルーシー王国のライル陛下に連絡を取ってくれ」
「御意に」
さらに強い力でぐっと手のひらを抱き込む。
犯人を捕まえたらただじゃ済まさない。
コルドはこぶしに誓う。
手のひらには血がにじんでいたが痛みなど感じる余裕などない。
今日はゆっくりと今後について話し合う予定だった。
夫婦になるのだから決めごともするつもりでいた。
環境が違えば戸惑う。
コルドも若葉と出会う前は戸惑いの連続だったのだから。
どうか無事でいてくれと願わずにはいられない。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回、あと1話番外編を投稿したら完結です。
またお会いできれば嬉しいです。




