エピローグ
おはようございます、こんにちは、こんばんは!
よろしくお願いいたします。
療養も終えコルドの構えるお城に身を寄せることになった。
扉を開けた瞬間に待っていたのはきらびやかな世界。
大きな広間には天井高くに飾られたシャンデリア。
まるでおとぎ話の中に入り込んでいるよう。
お姫様にでもなった気分だ。
「迎えに行けなくてすまなかった。まずは部屋に案内しよう」
出迎えてくれたコルドの側には使用人が並んでいる。
人間の使用人も多数いるのは若葉への配慮であろう。
案内された部屋は宝石が散りばめられたようにキラキラしている。
「うわあー天蓋付きのベッドなんて初めて」
嬉しさのあまりベッドにダイブしてゴロゴロと転がる。
日当たりのいいその部屋は、一人で過ごすには広い。
圧倒されながらも好奇心は止められない。
「ふふふっ喜んでくれたようでなによりだよ」
「あっえへへっ」
浮かれすぎて少し照れ笑いする。
まるで幼少期に逆もどりしたかのようなはしゃぎよう。
気を取り直すと一つ一つ丁寧に部屋の中にある扉を開ける。
お風呂もトイレも豪華なリゾートホテルなみに広い。
そしてクローゼットを開ける。
「何このドレスの数」
「あぁそれはミレーナ――義姉上がそろえてくれたんだ。これでも少ない方だよ。あとは来てから選んでもらおうと思ってね。オーダーメイドだと採寸する必要があるからな。それに若葉にも好みがあるだろうから。ここにあるのは全て既製品なんだ」
若葉は目をつむりクローゼットをそっと閉める。
かすかに手が震えてくる。
(これ一着でうん十万しそうじゃん。しかもオーダーメイドとなるともっと金額が跳ね上がるよね!?)
「こんなにいらないよ。あたしには派手すぎるし、数着あればじゅうぶんだよ」
「そうなのか? 義姉上はこの倍以上のドレスを持っているぞ。どれも若葉に似合いそうなのにな。でもいらないなんて言わないでくれ。義姉上は若葉が来るのをとても楽しみにしていたんだ。ドレス含め部屋の装飾品も張り切って準備していたよ。おかげで想定よりだいぶ時間がかかってしまったがな。それに僕からもプレゼントしたいと思って店を予約してあるんだ」
さみしげな声を出すコルドに申し訳なさが込み上げる。
「プレゼントは嬉しい。お店にも行く。けどメイド服のような動きやすいものも欲しいんだけど」
コルドの顔がほんのり赤みを帯びる。
何を想像したのだろうか。
「メイド服もいいな」
何を言ったのか聞き取れなかった。
若葉はコテンと首をかしげる。
「どうかしたの?」
「ん゛ん゛ん゛――いや何でもない。分かった手配しよう」
最後の扉の前へ着く。
開くともう一つの部屋につながっていた。
「そこの扉は僕と続き部屋になっているんだ。その……番として迎えるつもりだったから。もちろん鍵だって掛けられるから安心して」
「うっうん」
改めて言われると恥ずかしい。
そういう行為の知識はあるのだから。
「その辺りは悪いと思っている。白状すると僕は魔物同士の求愛行動をよく見ていたんだ。だから人間も同じだと思っていた」
「うん」
「若葉にとっては交際を受け入れただけだったのに、僕は結婚に同意してくれたんだと勘違いしていた。もう少し若葉の話を聞いていれば、怖い思いもさせなくて済んだよな」
「もういいよ。ここへ来る前に色々教えてもらったから」
悪魔も人間と変わらない。
魔物もかわいい野生動物みたいなもの。
見た目は少しおそろしいが、無闇に攻撃しないことも理解した。
それがこの国の常識なのだ。
「そうか。では改めて――ようこそ我が故郷、クルーシー王国へ。とはいえここは僕が納める国、マカーレ国なんだけどな」
若葉はコルドといる道を選んだのだ。
決してコルドが可哀想だからではない。
この先何が起こるのか未知の領域だ。
二人なら乗り越えられる。
若葉は微笑んだ。
一瞬だけアランが姿を見せる。
『私のことも忘れないでください』
声は聞こえなかったけれど、そう言っている気がした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
これにて本編完結です。あと2話ほど番外編投稿します。
また次回お会いできれば嬉しいです。




