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14、ラズマンとライルに出会った日①

おはようございます、こんにちは、こんばんは!


①、②と続きます。

よろしくお願いいたします。

 アランが起こした事件は、騎士団の訓練用に育てられた魔物が暴走した事件として処理された。

 実際に魔物を悪魔として育成する機関があるのだという。

 悪魔化する過程で魔力に耐え切れず暴走する魔物が一定数存在するのだ。

 とはいえ記憶上には問題なくとも、アランが抜けた穴は大きい。

 実務上は一人欠けているせいもあり、皆忙しそうにしている。


「そうだ! あたし、コルドには色々聞きたいことがあるんだけど……ラズマンさんとどういう関係なのかとか」


 コルドが驚いていたわけを知りたくなったのだ。

 ライルのしたり顔が忘れられず、聞きたくてうずうずしていた。

 今は客人という扱いのため二人とも客間で過ごしているが、コルドは明日マカーレ国へ戻る。

 一国の王として長期間留守にするわけにはいかないから。

 若葉には休養が必要ということで王宮にとどまることになった。

 それゆえ今のうちに聞いておきたいのだ。


「あぁそうだな――あいつは元々魔物だったんだが、兄上と会うきっかけを作ってくれた奴なんだ」

「ラズマンさん魔物だったの!?」

「そうだね――。今思えばその出会いに運命みたいなのを感じるよ」

「運命?」

「そう運命だよ。どこからか話せばいいのか……あれは僕が幼い頃の話なんだけど――」


 懐かしむような遠い目をしながら話してくれた内容は衝撃の連続だった。




★★★★★


 コルドの変わり果てた容姿を目撃した王宮の人々は、悪魔に呪われた子として恐怖におののいた。

 この事実が明るみになれば国の存続に関わる可能性がある。

 人目を避けるためコルドを離れに幽閉することにしたのだ。

 世間には病弱という名目で。

 コルドの母である王妃が、悪魔にさらわれた過去を持つのも原因のひとつである。

 悪魔は忌み嫌われる存在であるため、王宮の人々は極力接触を避けた。

 生活に支障はなかったが、本来受けるべき愛情が不足した。

 恵まれない幼少期を過ごしていたコルドだったが、あるとき転機が訪れることとなった。

 幽閉されている場所には結界が張られていたのだが、そこに一匹の魔物が迷い込んだのだ。

 それが後のラズマンである。


「みんなどこにいるんだよ……」

「どうしたの?」

「キミはボクの言葉がわかるの?」

「うん……わかる」


 魔物は話の分かる人間に会えて嬉しいのか、目をキラキラと輝かせた。


「ボクたち森で遊んでいただけなのに、突然人間が現れて次々に矢を放ち始めたんだ。それで倒れた仲間を連れていってしまったんだよ。だから探しに来たんだ」

「それはたいへんだね――でも、りゆうもなくきずつけるなんて、しないとおもう」

「そんなの知らないよ! いつも先に攻撃するのはキミたち人間の方だよ。止めてって言っても聞いてくれないんだ」


 コルドは魔物から内なる苦しみを感じた。


「それってどういうこと」


 教育の一環として、届けられる教本の中に絵本があった。

 魔物は悪い生き物だとしか書かれていない。

 コルドには不思議でならなかった。


「この前はね人間の子が小さい魔物の子に、石を投げたんだ。それを知った魔物の子のお母さんが怒っちゃって、町にね我が子を傷付けた人間の子を探しに行ったんだよ。ボクたちは匂いでわかるからね。でも返り討ちにあって沢山仲間が死んじゃった……。ボクたちはただ平穏で静かな暮らしをしたいだけなのに、どうしてボクらの生活をおびやかすの?」

「ごっごめんなさい。ぼくたちにんげんは、まもののことばが聞こえないんだとおもう。もし聞こえていたら、そんなことしないはずだもん」


 コルドにはただ謝ることしかできない。

 魔物は人間と見た目こそ違えど変わらない生き物だと感じざるおえなかった


「そうなんだ。悔しいよ。じゃあさ、キミが仲間を助けてよ! そしたら許してあげる。キミは何だか嫌なにおいしないし話も分かってくれるから」

「そうしたいけど、ここから出られないんだ。けっかい? がはってあるの。だからむりだよ」

「でもボク、ここに入れたんだよ。だから出られるよ」


 脱出を試みるもお互いに弾き飛ばされるだけだった。


「いたいよぉ……だからいったじゃん。むりだって」

「うっイタタタタ――あれ? おかしいなぁ。あっ待って。こっち。確かこの辺り……ほら出られるよ」


 魔物が入り込んだ場所は魔力が弱まりつつある結界のほころび。

 おそるおそる通ると結界の外へ出ることができた。

 開けた先にはあたり一面、青々とした芝生がそよそよと広がっている。

 誰かが剣の練習をしている姿もあった。

 気配に気がついた誰かが振り向いた途端に目が合う。


「誰だ! もしかしてコルドなのか」

「うん。そうだよ。どうしてぼくのなまえを知ってるの? お兄さんはだあれ?」

「オレは――ライル。お前の兄だ」


 お互い初対面だった。コルドは兄がいることを知らない。

 ライルは直ぐに弟だと分かった。

 周りは弟を、悪魔の子だと言っていた。

 危険だからと会わせてもらえなかったが、髪の色が違うだけで自分とよく似ている。

 何故遠ざけられたのかライルには理解できない。

 大人は噓つきだと子供ながらに悟った。

 誰かを守るために噓をつくことはあるが、大人の事情など素直な子供には分かるわけがない。


「ほんと? ぼくにお兄ちゃんがいたんだ」


 コルドはニコニコと顔をほころばせた。

 表情はそこらへんの子供と何ら変わらない。


「あぁそうだ。元気にしていた――はっ危ない逃げろ! 魔物が近くにいる。どうやって入り込んだんだ」


 当然の反応だった。向かってこようとするライルを、無我夢中で止めた。今にも斬りかかろうとしているから。


「まって! この子はあぶなくないよ」


 魔物をかばおうとするコルドに、信じられないものを見る目を向ける。


「どういうことだ! 魔物は危険でだれかれ構わず危害を加えるものだろ。だから今すぐ殺すべきだ。確かにそう習った」

「ちがうよ! だってこの子いつもにんげんが先にこうげきするって言ってる。にんげんがぼくたちの生活をおびやかしてるって」

「そんなわけあるはずないだろ。あいつらはどうもうで――」


 ライルはそう口にしながらピタリと動きを止めた。

 目の前の魔物は何も攻撃を仕掛けてこない。

 それよりも不思議なことに気がつく。


「――コルドはこいつの言うことが分かるのか」

「うん。この前も――」


 身振り手振りで説明する声を聞きながら、ライルの眉間にシワが寄る。

 コルドにしか魔物の声が聞こえないのだと認めざるを得なかった。

最後までお読みいただきありがとうございました。


また次回お会いできれば嬉しいです。

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