てれす (挿絵有り)
展開の終わった1999に乗り込んだのはアイリス以下セサミオープナーメンバーとログイン中の松の湯メンバーのさらに半分の8人、協力ソロプレイヤーのIDEの計19人+1体だった。因みに、松の湯メンバーのうち8人は周辺警備に残り、現在ログアウトしている9人が再ログインしたら交代の予定であるらしい。アイリス等セサミオープナーがまず行ったのはルナ・アルケニーのチャージャーへの接続だ。エネルギーパックの交換でも動力源は維持できるが、搭載したままでのリチャージの方が楽なのはスマホなどと同じだからだ。なお、システム上どういう扱いなのかは不明瞭だが、ザラマンダは除装している時間に応じて再チャージされているようだ。
『アイリスより全機、アルケニー用のガレージにエネルギーパックのチャージャーを用意しているから、再チャージを急ぐ人は使ってください』
『スカーフェイスよりアイリスさん、助かる』
セサミオープナーは探査機材や通信などをルナ・アルケニーで行っていたのであまり気になってはいなかったが、松の湯所属のザラマンダはそれなりに消耗しており、交代シフトを長めに組み直さねばならないかも、と考えていたので渡りに船だったのだ。
『あの、いよいよ不足な時はエネルギーパックの販売もできますよ?』
『そんなに余裕があるのか?プルナさん』
スカーフェイスにさらに売り込みをかけるのはプルナだ。
『生産者ですから。えっと、何でしたっけ?アイリスさん』
『?、ああ、在庫なら売るほどある、って言うんだよ。ここは』
1999内でザラマンダを除装したところで些細な騒ぎがあった。松の湯所属の金髪をポニーテールにしたテックドワーフの少女が大地を厨房に拉致していったのだ。大地を引きずって行きながら、何やら言い合う、もとい、一方的に言い立てる少女を、アイリスとプルナは半ばあっけにとられ、メイフェアはにこにこと、そして飛鳥はにやにやと見送っていた。
「テックドワーフってあんなちっちゃい女の子でも力持ちなんだねえ。大地君引きずって行っちゃったよ」
「そこですか?アイリスさん。それと、小柄なのは種族特性で多分中の人は大地君と年変わらないくらいだと思いますよ?」
「そうなの?プルナさん」
「何かお約束をなさっていたのを大地様が失念されていたのかと」
「そんな感じですね、クオさん。連絡がないから心配した、とおっしゃっていたようですし」
「大地に春が来た?なんて生意気な!」
「その、そこは祝福してあげた方が…」
「ん?それもそうですね、プルナさん。じゃあ、なんて面白そうな!」
「それ祝福してないよ、飛鳥ちゃん」
見送るセサミオープナー女性陣の会話は、大地には届かなかった。
「いや参ったよ。セサミシードから自航してくるって連絡を忘れてたもんでさんざんに怒られてさ」
「で、あの子誰?大地」
しばらく厨房にこもった二人は丼物を作っていたらしく、できあがった料理を配膳していたのだが大地は案の定飛鳥に捕まっていた。まあ、丼物の17名分の配膳で、気付いたクオが手伝いに入ったので邪魔になるほどの事でもない。
「地表に降りた時に松の湯で知り合ったんだよ、姉貴」
「配膳終わりましたよ、これは大地さんの分」
飛鳥に答えている間に配膳は終わったようで、テックドワーフの少女は盆に丼を二つ乗せてやってきた。
「や、ちょうど君の事が話題になってたとこなのよ。大地の姉の飛鳥っていいます。地表では弟が迷惑かけたみたいで」
「いいえ、そんな迷惑だなんて。あ、すみません。私チェサといいます。松の湯で調理人やってます」
「うんうん、よろしくね」
「今日の丼はチェサさんが食材提供してくれたんだ」
いたずら好きの姉が爆弾を落としてこないことにほっとしつつ大地が会話をつないだ。
「へぇ、て事はお肉は地表産?ならこれも恐竜系なのかな?」
配膳された丼は生姜醤油べーすのたれに漬込んで煮た肉を厚めにスライスしてたれと共にご飯に乗せ、白ネギをトッピングした豚丼風の物だ。
「あ、初めまして。アイリスさん、ですね?お話はかねがね。お肉は、ご想像の通りで恐竜系です」
「テレス、っていうらしいです。普段は地中に潜ってすごすんですが、夜には餌を求めて地上に出てきます。なんかこう、逆三角の人相の悪い顔なんですが、地中を進むのに筋力が発達してて泥臭さを抜けば旨いんですよ」
チェサの返答を大地が補足した。
「ふうん、テレス丼、か」
「はい。大地さんが地表に降りていて時に松の湯と共同で狩ったもので、その時に一緒に考案したレシピです」
チェサが屈託なく笑った。




