かしましきかな
「そんで、チェサちゃん?」
「はい?」
飛鳥がチェサに問いかけたのは、村田以下セサミオープナー男性陣に呼ばれて大地が席を移してからの事だった。
「大地はうまくやってる?」
「はい。皆さんが託されたΠレックスの扱いにも慣れたみたいですし、ミケさんや松の湯ともうまく連携されてますし…」
心配そうな目で尋ねる飛鳥を安心させてやりたい、と思ったチェサが言葉を繋ぐ。
「いやそこじゃなくて」
「え?」
「あの子うまく彼氏できてる?」
「…え?」
「ほら、真面目なのはいいんだけど冗談通じないし、奥手なくせにむっつりだし」
「い、いえ、大地さんとはそんな」
「え?そうなの?」
心配の方向性が予想と随分違うことに気付いたチェサが真っ赤になりながら慌てて否定し、飛鳥は否定するチェサを意外そうに見返した。
「つまり、一方通行なわけだね?チェサ君」
「!!」
我関せずとばかりにテレス丼を味わっていたはずのアイリスの唐突な指摘に、さらに赤面を強めてチェサが絶句する。
「わかりやすいですね」
にこにことお茶をすするメイフェア。
「その、アイリスさんはこういう話題には疎いかと思っていたのですが」
予想外の人物からの指摘にプルナも驚いていた。プルナの目からは、アイリスは自身の魅力にも無頓着で、色恋沙汰には興味が薄いように見えていたのだ。
「先輩…たいして恋バナなんか興味ない癖に鋭いのは相変わらずですね…」
飛鳥が軽くジト目になる。過去にも無自覚に核心をつくアイリスに場をさらわれたことがあった。いっぽう、アイリスはといえば言いたいことを指摘して満足したのか再びテレス丼に集中しており飛鳥の視線に気付く素振りもない。軽くため息をついて飛鳥はチェサに視線を戻した。
「つまり、アホの子の大地は気付いてない、と?」
「…はい、多分…」
ちょっとうつむき加減に答えたチェサに、飛鳥は二度目のため息をついて、改めて観察する。見たところ、ちょっとくすんだ金髪や金の瞳はさすがに地のままではないと思うが、それらの変更の他にはルックスには人工的な気配はない。おそらくはアイリスや大地と同様、リアルのルックスから大きくはいじっていないのだろう。
「チェサちゃんはかわいいし、調理人同士志向もあってるからいけるとおもうな」
「でも、私ちんちくりんだし…」
確かに小柄だ。身長は151㎝、控えめなのは体型も同様だと、目視採寸のスキルから知れる。
「いやいや、体格は種族特性だし」
「実は…リアル体格と同じなんです」
まずいな、と飛鳥は思う。飛鳥の知る限りにおいて、大地はオッパイ星人だ。大地が隠しているつもりになっている成人向けのあれこれでも、ロリータ路線の物は少なかったように思う。
「なに、そんなのは大したことないだろう。捕まえてしまえば趣味嗜好は矯正すればいいんだし」
「好いてしまえばあばたもえくぼ、と言いますしね」
またも話に加わっていなかったはずのアイリスが口を挟み、メイフェアもそれに続いた。
「そうですよ。案外見た目の好みなんて私たちが思うほど男性にとっては絶対とは限らないらしいですよ?」
プルナも乗ってくる。が、セサミオープナーの女性陣はおおむねスタイルは良いほうなので今一つ説得力に欠ける。
「と、とにかくアタックしてみないことには始まらないよ。うん」
チェサにとって体型の話は自爆装置だと判断した飛鳥が話題の方向修正を試みることにしたその時。
「?姉貴?チェサさんいじめちゃ駄目だぜ?」
大地が空いた丼を集めて戻ってきた。
「大地?」
「なんだよ」
「女の価値はオッパイじゃ…」
すぱーん。
アイリスの張り手突っ込みを後頭部に受けた飛鳥の体は、1/6Gの低重力下、とても派手に飛んで行った。
「あ、飛鳥さん!?」
「割といつもの事ですからあまり気にしないほうがいいですよ?」
慌てるチェサを、お茶をすすりながらメイフェアが冷静に宥めていた。




