土木研究会 (挿絵有り)
一旦轍追跡を中断したセサミオープナー及び松の湯メンバーは、クラーククレーター中腹まで後退していた。照準レーザーの照射を最初に受けた地点からやや後方、といった位置取りだ。他のプレイヤーグループの姿も散見されるようになっており、掲示板に流した情報に食いついた者があることがうかがえる。
『傾斜はあるけど、大丈夫ですか?ドーユーさん』
『このくらいならアジャスターで対応できると思うよ。らいてうは降りられるのかい?メイフェア君』
『もう少し平らなほうがいいですが…低空ホバリングからの投下で対処できるかと』
『じゃ、メイちゃんは一旦ヘリンボーン経由でプリンセスメイフェアまで戻って準備、私たちはこの辺を整地しとく、でいいね?』
『はい。2時間はかからずに戻ってこれると思います』
メイフェアとプルナの乗る【ルナ・アルケニー・グレイブ】は、ブースターを併用してその場から離脱していった。
『いってらー』
ルナ・アルケニー・グレイブを見送ったアイリスは、整地の準備に取り掛かった。ルナ・アルケニー・ブラウエカッツの後部コンテナが持ち上がり、その奥の一枚板の大型ハッチが上に開き、更にその奥の3分割されたハッチからアイリスとドーユーのザラマンダ、そしてクオが降り立つ。
『別にクオちゃんは乗ったままでも良かったんじゃないか?』
『まあ、有効圏内には入ってるから確かに乗せたままでも良かったけどね』
ドーユーと軽口をたたき合いながら、アイリスはバックヤードから目的の物、ルナ・アルケニーの乗員用大型ハッチパーツを3枚取り出した。
『アイリスさん、それは?』
『このハッチと同じものだよ。スカさん。これをドーザーブレードにしてアルケニーで整地すれば早いでしょ?』
最小生産ロットの都合ではあるが、ルナ・アルケニーにはあと15両組み上げられる予備パーツがあり、その一部を流用して即席のブルドーザー代わりに使おうという訳だ。
『じゃあ、俺は範囲マーカーを置いてくるから後は頼む』
そう言い置いて、ぽーん、とジャンプしてドーユーが離れていった。低重力なうえパワーアシストがあるのでスラスターなど使わなくてもかなりの距離が跳べて、こういう時は便利だ。跳べてしまうので不便、というケースもいずれ出てくるだろうが。
『カノーネ、ラケーテンはこれを使ってドーユーさんの指示範囲を整地、カンプは作業肢を固定武装にしちゃったから周辺警戒をお願いね』
『カノーネ、10-4』
『ラケーテンわかりました』
『カンプ了解、だが松の湯はどうする?』
『なんのため、はわからんがセサミオープナーはこの辺りを整地するんだな?なら俺たちは隊を分けて周辺警戒と情報収集、用事のある者は交代でログアウト、という風にしようと思う。いいか?アイリスさん』
『了解です。事故を避けるために整地範囲には立ち入らないようお願いします』
スカーフェイスと簡単な打ち合わせの後、アイリスとクオも【ブラウエカッツ】に再度乗り込む。戦闘を前提にしなければドライバーだけでも何も問題ないし、万一戦闘になるようならドーユーを収容するまではブラウエカッツは後方からの指揮に専念すればいい。
2時間ほど整地作業をしたところでプリンセスメイフェアの姿が見えてきた。
『アイリスさん、戻ってきました』
『お帰り、メイちゃん。【らいてう】で来ると思ってたんだけど』
『どうせコンテナ換装のために帰艦しなければなりませんでしたし、この方が早いですから』
『でも、それが降りれるほど広くは均してないぞ?』
『大丈夫ですよ、ドーユーさん。艦は一時上空待機で【らいてう】を出します。コンテナを下ろしたら自動操縦で【らいてう】を戻して、艦も軌道周回に復帰させます』
『了解。待ってるよ』
メイフェアの言葉通り、【プリンセスメイフェア】から【らいてう】が発艦して降下してくる。
『コンテナが違うんだな』
巌が指摘する通り、最初にヘリンボーンに降りた時は本体と同じオリ-ブグリーンだったコンテナが白く塗装されたものに変わっている。
「姫様、B.G.M.を用意しましたがお使いになりますか?」
「ふうん?聞こうかな?」
たったかたー、とマーチングバンド、あるいは鼓笛隊的な編成の軽快な音楽が流れだす。
『ブラウエカッツより全機。クオがB.G.M.を用意してくれたので希望者は共有チャンネルで』
『なんかこう、カクカクした動きをしたくなるのはわしだけかのう』
『いや、気持ちはわかるよ。村田さん』
『シーンには確かにあってるな』
村田やムラ、ドーユー等が曲に対する感想を交わす中、整地した区画の上空で低空ホバリングした【らいてう】から白いコンテナが切り離され、すうっと落下する。着地と同時に見た目の印象よりは大きな地響きがした。
『地響き、するんだ』
『空気はなくても地面の振動は拾うからね。大地』
大地の感想に飛鳥が解説を入れていた。
『さて、俺はもう一仕事だな』
空荷になって【らいてう】が【プリンセスメイフェア】に帰っていくのを皆が見送る中、ドーユーは着地したコンテナに向かっていた。
アイリス&クオ




