表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/232

そのころ地表では

 「こりゃあ、まるでドラゴンだな」

 「ですよねぇ。巨大恐竜もいるだろう、とは予測されてましたが」

 「スクリーンショットは撮ったな?」

 窪地をさらに掘り下げた即席の塹壕から、全長20mにも及ぶ巨大草食竜をうかがうのは機械の地竜と機械の火竜。大地のΠレックスとミケのザラマンダだ。

 「生け捕りは考えず、ひとまずは手持ちの機材で狩れるかどうかを検証するぞ、大地君」

 「はい。手はずは打ち合わせ通りで?」

 「ああ。行くぞ!」

 塹壕から飛び出してスラスターウイングを展開、地表をなめるように滑空するザラマンダ。スラスターの高周波音が癇に障るのか、水平に伸ばしていた頭を高く持ち上げて威嚇の咆哮を上げる草食竜。ミケは、10mまで接近したところで草食竜の周囲を回る軌道に切り替え、村田52式自動銃を3点バーストで断続的に発砲する。高速の突撃銃弾は、草食竜の脚の硬い皮膚を貫通、出血はあるようだが、その歩みを止めるほどのダメージにはならない。とはいえ痛みはあるようで、いらだたしげな咆哮と共に咢を繰り出してザラマンダを捉えようとする。ミケはリミッター作動ぎりぎりの機動でそれを回避し、銃撃を繰り返して草食竜を誘導していく。

 大地のΠレックスは草食竜が塹壕から50mまで近づいたところでネットグレネードを発砲。脚と首に絡まる網を振り切ろうとその長い首を暴れさせる草食竜だが、鋼鉄の5倍に及ぶ引っ張り強度のスパイダーシルク製の網は引きちぎるどころか逆に草食竜の硬い皮膚に切り傷を刻んでいく。更にΠレックスはテーザーで無力化を図るが、出力不足なのか電撃に反応は見られるものの全身麻痺には至る様子がない。効果が顕著なのはやはりネットで、絡みついた網に拘束されて草食竜はついに前足を屈する。好機と見た大地は塹壕からΠレックスを勇躍踊りださせて、草食竜に向かって突撃を敢行した。草食竜は本能的に危険を感じたのか逃走しようとするが、絡みついた網がそれを許さない。頭部大型マニピュレータに喉を噛み潰された草食竜の、声にならぬ断末魔が響いた。


 「ありがたいが、こんなにもらってもいいのか?ミケさん」

 問いかけるのは180㎝を超す長身、筋肉質な体格で短く刈り込んだ金髪、細いので判りにくいが鳶色の瞳で頬に長い傷のあるヒューマンだ。

 「スカさんの目撃情報があったから狩れたんだしな。それに、こんなに大量にあっても大地君のΠレックスでは運びきれないんだ」

 草食竜のドロップは各部位の肉と表皮だったのだが、巨体に見合う量であったのでΠレックスの冷蔵コンテナにも全体の1/3しか収まらない。バックヤードに移動すればもっと運べなくはないが、大地とミケのバックヤードはザラマンダやΠレックス用の容量を空けておく必要があったり、ここまでの活動の結果で合ったりで意外に物が多く、このドロップをすべて持ち帰るのは色々と負担になる。多分運営想定では6名パーティーとかレイドで挑み、ドロップは分配することを想定していたのだろう。結局大地とミケは草食竜の目撃情報を流したスカーフェイスを呼び出して余剰分を丸投げすることにしたのだ。

 「そういえばスカさんザラマンダを大量発注したんだって?」

 「ああ、ミケさんやうちの巌さんが運用してるのを見て、【松の湯】の標準装備にしようと思ってな。今なら件の公式イベントにも間に合うしな。今日はこのあと軌道エレベータでステーションに上がって、桃次郎さんと落ち合ってからセサミシードに向かう予定だ。多分道中の護衛はムツキさんの【ゼカマシ】になるだろう」

 「あの二人、方向性はかみ合ってないのに仲いいよな」

 

 大地はといえば、ドロップ肉の検討をしていた。

 「恐竜の尾は腱でがちがちに固められてるとは聞いてたけど…これはシチューにでもするほかないかなあ」

 「大地さん、大根と一緒に煮込んだらどうでしょう?」

 大地に声話かけたのはくすんだ金髪をポニーテイルにした金目のテックドワーフの少女だ。小柄で一見してローティーンにしか見えないが、これで16歳になるらしい。

 「ああ、それは良い考えです。チェサさん。そっちの分析結果はどうでした?」

 チェサはスカーフェイスの戦闘ギルド【松の湯】のメンバーで、大地と同様に調理スキル持ちだ。地表に降りてからは【松の湯】と共闘することも多く、ともに切磋琢磨するライバル、と大地は認識している。

 「毒とかはなさそうですね。味とかは…やっぱり何か作ってみないと何とも言えないかな?」

 「ですよねぇ。試しにスライスして焼いてみますか。味付けは塩コショウだけで」

 「まずはシンプルなもので特徴を見極めるのですね?わかりました。私は薄くスライスしてあぶってみますから、大地さんはステーキを試してみてください」

 「じゃあ、予備の調理台を用意します。ちょっと待っててくださいね、チェサさん」

 大地はバックヤードから以前使っていた調理台を引き出し、Πレックスから電源を引っ張ってくる。

 「大地さんは今度のイベントはどうするんですか?」

 「セサミオープナー(うち)は小規模だし、全員参加になるんじゃないかな。なんかまた新アイテムを用意するってアイリスさんやメイフェアさんは張り切ってるみたいだよ。チェサさんは?」

 「私はよくわからないなぁ。チャンドラー(つき)でしょ?調理スキルが役立つかどうかわからないし、【松の湯】は大所帯だから参加は自由意思で、って決まったし」


 大地が「途中ステーションのIDEさんと接触した後セサミシードに一旦帰還するように」と飛鳥からのフレンドコールを受け取ったのは、皆でステーキを堪能した後の事だった。


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ