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リサーチ&ディペロップ

 のり面45度ほどの急斜面に脚をかけながらも、メインフレームの傾斜は20度程度に収まっている。

 「なかなかスリリングだね。このまま滑落したら何メートルくらい落ちるかな?」

 試作の多脚駆動シャーシにコクピット代わりのザラマンダを接続して乗り込んだアイリスが感想をこぼす。

 「足の石突がちゃんと噛んでますから滑落はないと思いますよ?それに、いざとなればザラマンダを切り離して離脱するだけでしょう?」

 こちらもザラマンダを着込んだメイフェアが、モニターに試作機のテレメトリデータを呼び出して確認しながら答えた。

 「今更だけど、もっと平らな所で試験できたらよかったと思うんだ」

 ぼやきながらもアイリスは、がちゃこんがちゃこんと急斜面を横断していく。

 「1/6G環境を得られるのはここしかない、と提案したのはアイリスさんですよ?」

 「まぁそうなんだけどね」

 セサミシード居住区南端、山岳部の標高3600m付近。回転中心に近い分疑似重力も低いのだが、とにかくおよそ平らな所がない。因みにメイフェアもザラマンダを着用しているのは、安全のためであると同時に気圧も低いこの場所で高山病を回避するためでもあり、また、計測器や通信機などの機材の代わり、という側面もある。

 「関節負荷、脚部フレーム弾性変形、どちらも許容範囲内です。オートレベリングは作動域いっぱい。もっと作動域を増やす方に再設計しますか?」

 「このままでいいんじゃないかな?あんまり効きすぎると自分の姿勢の感覚が掴みにくくなると思う」

 「それもそうですね。モーター負荷は余裕がありますし、もうすこしスピード上げてみますか?」

 ジャイアントスパイダーの生息域よりも更に1,000m高い高山でのテストは続く。



 「じゃからな、ムラよ。あまり欲張って武装の可動域を増やすと乗員が対応できんのじゃ。あまり大所帯でないから最低一人でも運用できるように武装は半固定が適当ではないかの?」

 「うーん…村田さんの言いぶんもわかるんだが…バズー君、バダー君、戦闘職としてはどう思う?」

 「固定で機体の向いている方向が攻撃範囲、と言うのはわかりやすいな。それに多脚型なら前後だけでなく左右にもあるていどは動けるんだろう?」

 「だけど、回転銃塔があった方が攻勢には使いやすくもあるな。別に多人数乗りを基本にしてもかまわないと思うが、どうだろう?」

 バズーは一人乗りなら武装は固定でいい、と思ったのだが、バダーはそもそも単座でなくてもいいと考えた。

 「だがバダーさん、うちは大地君を呼び戻しても10人、リアルの戦車のように3ないし4人乗りだと3台しか運用できない。戦力的にもっと数をそろえたほうがいいように思うな」

 ドーユーが問題点を指摘した。

 「えっと、ドーユーさん、リアルの戦車の3人乗りはどうしてそうなってるんですか?」

 「ああ、プルナさん、戦車の運転を実行するドライバー、大砲の操作をするガンナー、周囲の状況を把握してドライバーとガンナーを指揮する車長って役割だな」

 「ん?ちょっといいですか?」

 「どうした?飛鳥君」

 解説に割って入った飛鳥にムラが反応した。

 「あれが、ああで、こうだから・・・今回のマシンの機動の特性って、高度変化のないヘリコプターみたい、って印象を持ったんですが、合ってます?」

 「ふむ…そう、とも言えるかな?」

 「飛鳥嬢ちゃんは面白い例えをするのう。じゃが、前後左右全方向に動ける、という点では確かに似ておる」

 「だが、それが何か?」

 「いや待て、バズー。飛鳥さんは何か思いついたんだな?」

 「はい。例えば、戦闘ヘリみたいにパイロットとガンナーの複座を基本に据えたらどうだろうか、と」

 「うーん…戦車の場合はドライバーの視界がかなり制限されるから車長を置くんだが…」

 「いや、ドーユー君、ザラマンダと接続しての運用が前提で、外部カメラで視界を得るのだから、全員が全周視界を持てる。で、ガンナーが照準を定める間はどうしても視野が狭くなるものだから、車長とガンナー兼任よりも車長とドライバー兼任の方が合理的だ」

 「そう…じゃな。戦闘機のように機体の進行方向が限定されるわけでないから、戦闘ヘリの方が近い性格になるのか。意外な視点じゃった。どうも固定観念を持っておったようじゃな」

 レイアウト検討会議の議論は方向性が定まってきたようだ。

 

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